第 2 章 主要国等の対アフリカ戦略
第 8 節 スウェーデン
ジェリアの富裕層は豪州で製造される、「織物や布地」の重要な顧客になっている163。 また、アフリカ諸国への教育関係の輸出は、2005 年から 80%以上増加しており、アフ リカ地域に対する豪州からの輸出の中で、鉱石類についで2位の位置を占めている164。
b) 投資:鉱業が中心
豪州のアフリカへの投資は、鉱業部門を中心に盛んに行われている。アフリカでは、200 以上の鉱業会社が700以上の開発プロジェクトを実施中である165。
b) スウェーデンの対アフリカ政策:2008年に新しい政策を決定
2008年5月にスウェーデン政府は、アフリカの関係強化を目指すための新しい政策とし て「スウェーデンとアフリカ:共通の挑戦と機会に取り組むための政策167」を公表した。
この政策が策定された背景は、2008年までの 10年間にアフリカが政治的・経済的に成 長し、スウェーデンを含む世界各国がアフリカとの関係を変化させていったことである。
また、この政策において、アフリカに対するスウェーデンの協力のねらいとして、次の 3項が明示されている。
①アフリカの諸国と市民が、平和・民主・人権を追求し、また、経済・社会・環境面 での持続可能な開発を追及するための支援を実施する。
②政治・経済面の協力において、アフリカが主体的に活動することを支援する。
③スウェーデンとアフリカの接点を拡大し、スウェーデンとアフリカの両方の利益を 促進する。
(2) スウェーデンの対アフリカ戦略の考察:「経済関係の強化」と「国際社会への貢献」
前項の外交基本方針、対アフリカ政策とスウェーデンとアフリカの関係の現状などから、
スウェーデンの対アフリカ戦略は次の2点と考えることができる。
①アフリカとの経済的関係の強化:スウェーデンにとって、資源と市場の面でアフリ カにおける経済的関係の強化が重要である。
②国際社会への積極的な貢献
2. スウェーデンの国連 PKO と非国連 PSO への取り組みとアフリカへの国連 PKO 派遣
(1) スウェーデンの国連PKOと非国連PSO への近年の取り組み168
a) 1990年まで:伝統的な軍事的中立主義
スウェーデンは、国連PKOに古くから参加してきた。中立的な立場に基づいた平和的紛 争解決手段を通じて国連を支援し、国際の平和と安全に寄与するという伝統的な中立主義 を持った国として国連PKO に貢献してきた。UNTSO(国連パレスチナ休戦監視機構)へ
167 Government Offices of Sweden, “Sweden and Africa – a policy to address common challenges and opportunities”, May 2008.
168 平成22年度防衛省委託研究、82-84頁、103-106頁。
は創立から現在に至るまで、のべ1,100名の軍事監視要員を派遣している。
b) 1990年代:政治的思惑の相克
伝統的な軍事的中立主義を保持するスウェーデンは、冷戦後の平和強制型国連PKOや非 国連主導の国際支援活動(PSO: Peace Support Operation)への貢献に最初から積極的なわけ でなく、態度の変化は北欧諸国の中でも比較的緩やかであった。
1990年代におけるスウェーデンの国連PKOへの態度は、伝統的にスウェーデン社会を 支えてきた軍事的中立主義という価値観と、新たな安全保障枠組みで存在感を発揮したい という政治的思惑の相克にあった。
c) 現在:国際支援活動(PSO)、国連PKOに積極的に要員を派遣
今日では、アフガニスタン、コソボ、ソマリア沖での国際支援活動(PSO)に約850名 のスウェーデン軍を派遣している。
また、MONUC(コンゴ)や UNIMIL(リベリア)といった国連憲章第7章下での武力 行使を授権された現代型国連PKOへも部隊を派遣してきた。
それらを含め、軍事監視要員及び警察要員の個人派遣も重視しながらグローバルな派遣 を継続している。
なお、国連PKO派遣は軍事要員及び警察要員の個人派遣が中心でアフリカに多い。
(2) スウェーデンの国連PKO派遣状況
a) スウェーデンの世界各地への国連PKO派遣状況
国連の統計によると、スウェーデンは 2013 年末現在 60 名を派遣しており、国連 PKO 要員を派遣している114カ国中で75位となっている(表12参照)。部隊派遣の人数が少な い。
2013年末現在
表12:スウェーデンの国連PKO派遣数(上段は人数、下段のカッコ内は順位)
警察 専門官 部隊 合計 変化の傾向 33
(48)
21 (28)
6 (75)
60 (75)
2004年~2006年は300名規模 2007年以降100名以下
出典:国連HP “average monthly uniformed personnel contributions by country”に基づき筆者作成
b) スウェーデンのアフリカへの国連PKO派遣状況
スウェーデンは2013年12月現在、7個の国連PKOミッションに参加している。その中 で4個がアフリカである(表13参照)。
表13:スウェーデンのアフリカにおける国連PKO派遣数(人数) 2013年末現在
警察 専門官 部隊 合計 派遣先(カッコ内は人数)
33 8 6 47 MINUSMA(4), MONSCO(8), UNMIL(16) UNMISS(19)
出典:国連HP “UN Mission’s Summary detailed by country”に基づき筆者作成
3. スウェーデンの対アフリカ援助とスウェーデン・アフリカ間の貿易投資
(1) スウェーデンの対アフリカ援助
a) スウェーデンの対外援助の特徴169:貧困者の生活の質の向上が主眼
基本政策として、スウェーデンの開発政策は、公正で持続可能な地球的規模の開発に貢 献するとの一貫した政策の下に進められており、開発援助については、貧困者の生活の質 を向上させる努力を支援することに主眼を置いている。
また、設定された目的に応じた結果を明らかにするため、開発援助のガバナンスを強化 しており、これまで広範にわたっていた二国間援助の対象国を33カ国とし、各国で関与す るセクターも数セクターに限定して援助を実施している。さらに、質の高い効果的援助を 実現するためには、開発援助の透明性と説明責任が重要であるとしている。
開発援助は、①民主主義と人権、②男女平等と開発における女性の役割、③環境と気候、
の3分野を優先分野としている。
援助の担当大臣は、外務省内に置かれている国際開発協力担当大臣であり、開発協力を 含む各国ごとの外交政策は地域担当部局が調整し、開発協力政策の企画・立案および予算 計上は開発政策局等が行う。援助の実施は、多国間援助については、外務省多国間開発協 力局等が担当する。二国間援助については、外務省所管の独立行政庁であるスウェーデン 国際開発協力庁(Sida)が担当する。
169 外務省『2012年版 政府開発援助(ODA)参考資料集』、160-161頁。
b) スウェーデンの対アフリカ援助額170:アフリカを最重視
スウェーデン政府は対GNI比1%を開発協力に割り当てることを目標としており、2011 年度予算では約54億ドルを計上し、対 GNI比1%(世界第 2位)の水準が維持されてい る。
なお、2011年の政府開発援助(ODA)実績は、約56億ドル(対GNI比1.02%)、対前
年比23.7%増であった。
スウェーデンは、国連のミレニアム開発目標(目標 4:乳幼児死亡率の削減、目標 5:
妊産婦の健康改善、目標 7:環境の持続可能性確保)の達成を促進するため、アフリカへ の援助を重視している(アフリカに次ぐ重点地域はアジア・中東・北アフリカ)。
2010年の二国間ODA合計は約29億ドルで、その中の29.9%がサブサハラ・アフリカに 配分されている(2008年は約31億ドルの中の32.5%、2009年は約30億ドルの中の30.3%)。
2010年度の政府開発援助上位10カ国中において、1位がタンザニア、3位がモザンビーク、
4位がコンゴ共和国、5位がスーダン、7位がケニア、8位がウガンダである。
(2) スウェーデン・アフリカ間の貿易171:アフリカが占める割合は大きくはない スウェーデンの 2012 年の貿易に占めるアフリカの割合は、輸出が 3.1%、輸入が 1.1%
と大きくはない。しかし、主要輸出品目として通信機器や木材などの輸出先として、また、
原油や鉱物、カカオ豆などの資源の輸入先として重要性を増している。
北アフリカ諸国では住宅建設の需要が大きく、スウェーデンの木材輸出が増加している。
サブサハラ・アメリカ向けでは、携帯電話などの通信機器の輸出が急速に伸びている。
通信機器や木材のみならず、環境分野(簡易トイレ、浄水システム)でもアフリカに進 出している。
170 同上、162頁。
171 日本貿易振興機構「欧州企業のアフリカ市場開拓事例」、44-47頁。