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第 2 章 主要国等の対アフリカ戦略

第 3 節 中国

2. 中国の対アフリカ戦略

(1) 2010年代における中国のアフリカに対する姿勢の変化

中国とアフリカの外交関係は、2000 年から開始された FOCAC(Forum of China-Africa

Cooperation)閣僚会議を軸に緊密になっている17。FOCACは、開催地を中国とアフリカに

替えながら、3年毎に開催されている。

第3回FOCACは、2006年に北京で開催され、経済面の協力を中心に協議された。具体

的には、中国の対アフリカ援助額の増加、中国企業の投資促進、アフリカ連合センターの 建設などなどの支援を行うこと、などの支援策が謳われた18

第4回FOCACは、2009年にエジプトで開催された。そのテーマは「持続的発展のため

の新しい中国アフリカ戦略的パートナーシップ」で、第3回には触れられることが少なか った分野での協力の強化が謳われた。具体的には、気候変化・科学技術・農業・衛生医療 など、社会的分野の協力の強化が協議された19

4回の開催を経て、中国政府がアフリカ側に提示している援助資金額や援助スキームは、

政治的シンボリズムや内政不干渉主義からは既に離れ、独自の確固たる援助路線を着々と 構築しつつあるとも見られている20

第5回FOCACは、2012年7月、北京で開催された。ここで胡錦濤中国国家主席は、今後3 年間(2013~2015年)で200億ドルの低利融資の供与し、道路や港などのインフラ整備や農

16 高崎早和香「アフリカ:中国のアフリカ外交に変化」『ジェトロセンサー』201211月号、69頁、元 駐ボツアナ日本国特命全権大使は次のように考察している。①主要国共通のアフリカ接近の狙いは「資 源権益の確保」、②中国特有の狙いは「国際機関での大票田(国際的なプレゼンス強化)+台湾問題へ の考慮」、松山良一「最近のアフリカ情勢と我が国の対アフリカ政策」『20108月講演会資料』、15 頁。<http://www2.jiia.or.jp/pdf/kouennkai/2010/100810jp-mastuyama.pdf>

17 神和住相子「中国の対アフリカ政策と貿易投資」『Africa Research Series(13)/企業が変えるアフリカ-

南アフリカ企業と中国企業のアフリカ展開-』アジア経済研究所、2006年、235頁。

18 青木他「日中両国の対アフリカ政策の比較」、247頁。

19 同上、247-248頁。

20 吉田栄一「第4FOCAC中国のアフリカ協力フォーラムと中国のアフリカ外交」日本貿易振興機構ア ジア経済研究所『アフリカレポート』No.50、2010年、48頁。

業、製造業、中小企業を重点的に支援するといった次の5つの方針を発表した21

①投資・融資を拡大し、アフリカの持続可能な成長をサポートする。

②対アフリカ援助を引き続き拡大し、その成果をアフリカ諸国の生活水準の向上につ なげる。

③アフリカの地域統合をサポートする。

④民間・学術交流を促し、ともに成長するための基礎を構築する。

⑤アフリカの成長のため、平和で安定した環境を創出する。

中国はFOCAC の枠組みを利用して、アフリカでの資源獲得、中国製品の輸出先として の市場開拓に弾みを付けており、第5回会合の結果について次の2点が指摘されている22

①「実利」優先から「貢献」へ

中国はこれまでの実利優先の立場を見直し、現地諸国の社会発展への貢献を前面に押し 出し、見方によっては懐柔姿勢を強めている。

②AU との関係強化へ

中国はアフリカ54カ国・地域が加盟するアフリカ連合(AU)との関係強化にも乗り出 すとしている。AU 支援において、中国はアフリカ域内の平和維持に向けた協力を強調し ている。これまで中国は内政不干渉主義を貫いてきたが、アフリカの政情不安は中国にと っても無視できない問題となった。

(2) 習近平政権における方向性:アフリカの発展や安定にも広く貢献する姿勢

胡錦濤の次の国家主席である習近平は、2013年3月に中国の全国人民代表大会で国家主 席に選出されて10日後にはアフリカの地を踏んで、タンザニアにおいて「前胡錦濤政権と 変わらずアフリカを支援する」と誓っている23

2014年1月、王毅中国外相がアフリカを歴訪し、資源確保や中国製品の市場開拓といっ た従来の「実利優先」に加え、アフリカの発展や安定にも広く貢献する姿勢を打ち出して いる。具体的には、次の2点が指摘されている24

①従来の「内政不干渉」の原則を超えアフリカ社会の安定化に関与を強めている。

②経済面でも国別支援から国境を越えた投資へと転換を図り、地域全体の振興と中国の

21 日本貿易振興機構海外調査部中東アフリカ課「主要国の対アフリカ戦略(世界・アフリカ)」20133 月、26-27頁。

22 高崎「アフリカ:中国のアフリカ外交に変化」、68-69頁。

23 『ニューズウィーク日本語版』2013326日。

24 五十嵐文「中国のアフリカ外交:貢献を全面に影響力拡大」読売新聞、2014121日朝刊第13面。

影響力の両立を狙っている。

このような王外相の姿勢からも、中国の対アフリカ戦略の方向性の変化が伺われる。

前項で確認したように、2000 年代後期から、中国の対アフリカ戦略に変化が見られる。

2009年の第4回FOCACでは「それまでの経済分野中心の関係に加えて、社会的分野の協

力の強化が協議」され、2013年の第5回FOCACにおいては「平和で安定した環境の創出」

が方針の一つとされている。アフリカ社会の安定化への関与強化は、2014年1月の王中国 外相の発言などからも伺える。

平和と安定した環境の創出の例として、後述するように、2000年代半ば以降、中国はア フリカの地域機構との協力も提唱しており、スーダンのダルフール地方ではアフリカ連合 と国連共同のPKO、ダルフールAU国連合同ミッション(UNAMID)の成立に尽力したこ ともあげられる25

このような変化を勘案すると、2010年代半ば以降の中国の対アフリカ戦略は次の3点と 考えることができる。

①アフリカにおける経済的利益の確保

資源と潜在的市場であるアフリカを巡る国際的競争が活発化している。中国にとって、

アフリカにおける経済的利益の確保が最も重要である。経済的利益の追求のためには、平 和と安定の確保も重要である。

②国際機関における地位の獲得

中国の外交において、外交政策遂行の円滑化、中国にとって望ましい国際ルールの実現 が重要である。各種選挙を通じた国際機関における責任ある地位を獲得するため、アフリ カ54カ国との関係緊密化により中国への支持基盤を強化・拡大する。

③国際社会における大国としての発言力の獲得

国際社会における大国としての発言力を獲得するため、アフリカにおける開発、貧困削 減、平和と安定等の課題の克服に対応する。

25 志茂雅子「PKOなう:第7回中国のPKOの展開~概観~」国際平和協力本部事務局、2012516 日。