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第 3 章 日本のアフリカ戦略

第 2 節 我が国の対アフリカ戦略

1. アフリカ戦略指針

我が国の対アフリカ戦略の基本的理念は、「我が国の進めるアフリカ政策が、アフリカ 全体、地域(準地域)および個々の国家によって、長期的な信頼と高い評価を得ること」

に尽きる。

この基本的理念の下、我が国の国力、国情に相応しい方策として、これまでの検討で明 らかになったように、先ずは近年の我が国の対アフリカ協力の特徴となってきた「持続可 能な成長」および「不安定性の低減」を引き続き追求する一方、今後はこの二つの方策に 留まらず、これらの方策を推進する過程で、可能な限り安全保障(防衛)協力の方策と関 連させ、良く調和がとれ、相乗的な効果が期待できる「協奏的な安全保障協力」を追求し ていくべきである。

即ち、国家としての方向性が明確化するよう、官、民、学、防の国家全体としてのアク ターが、「オールジャパン」により連携し、経済協力などの従来型協力と一体化した形で安 全保障協力にも力点を置く形態を作為して行くべきである。このことは正に、NSSに掲げ られた我が国の国家理念である「国際協調主義に基づく積極的平和主義」を対アフリカ政 策において具現するとの意味を持つ。その上でこの考え方に基づき、これらの対アフリカ 政策を遂行するに際しては、米国、豪州、欧州など信頼できる「関係諸国との協調、連携」

の推進が必須となる。

(1) 基本指針 ― 長期的な信頼と評価の確保

我が国のアフリカ戦略の基本にすえるべき指針は、アフリカの全体、地域(準地域)、

および個々の国家によって、我が国の対アフリカ国家姿勢についての長期的な信頼と、そ の行動実績に対する高い評価を得ることにある。このことは、NSSに掲げられた「国際協 調主義に基づく積極的平和主義」が、対アフリカ政策においても正当性を得ることを意味 する。

このため我が国は、日本の国益を確保する一方、国際場裡での日本の信頼感、存在感お よび期待感を増大し、アフリカにおいて日本と聞けば「良いイメージが湧く国」として受

け止められるよう、具体的に行動しなければならない。そのためには、まず、アフリカの 全体及び地域(準地域)の多様性を踏まえ、肌理細かく個別のニーズに適合しつつ、全体 の調和にも配慮した施策を遂行すべきである。その行動を通じて、「佳き日本」や「日本ら しさ」を発揮し、対アフリカ進出については、世界の先進国の中では比較的後発であって も、他国と一味違う日本の信頼感、存在感および期待感を浸透させて行くことが可能とな る。

このこと自体はさほど困難なことではなく、戦後日本が世界各地に進出するに際して示 した「国柄」、「国民性」をあるがままに発揮すれば済む事であると考える。即ち、既に定 評を博している日本企業、NGO、PKO 部隊などが、1950 年代以降現在に至る、非常に長 期間にわたる各種の活動の中で、現地に示してきた「直接の対価を求めず成長した後の成 果を期待」、「育てて見守る日本」、「上下なく深い人間的な信頼関係」、「現地に溶け込み腰 の座った存在感」といった姿勢である。

このために、経済、産業、貿易、投資、教育、医療、社会基盤などのこれまでの支援協 力分野に加え、甚大自然災害・人災に対応する人道・救難支援、国際平和協力に対する、

より能動的な自衛隊による支援といった分野での諸活動の活性化が期待される。この際肝 心なことは、国家の一貫した方針の下、官、民、学、防の「オールジャパン」による諸活 動が、相互によく連携し、調和が取れ、それぞれの持つ長所、短所を補完する形で行われ ねばならないということである。即ち、「持続可能な成長」、「不安定性の低減」への支援も 含め、挙国体制による「協奏的な安全保障協力」が推進されなければならない。またこの 際、対アフリカ関与、支援という意味では、十分な経験とノウハウを保有する一方、国家 として共通の価値観を有する米国、豪州、欧州主要国等との協調と連携を図るとともに、

アフリカ各地に進出し、十分に蓄積された情報を有するこれら諸国との交流を通じた総合 的な情報の収集、分析能力の向上が図られねばならない。

(2) 持続可能な成長

アフリカは資源大国であり、特に世界的な需要の高まるエネルギーやレアアースなどの 原産国として、急激に成長するアフリカ経済の柱となっているが、資源の配分は公平でな く、その結果として多くの格差が生まれ、アフリカ全体の持続可能な成長を妨げる一方、

不安定性の増大につながっている。日本としては、この点に留意し、TICADなどをより活 性化、充実して、アフリカの全体、地域(準地域)および個々の国家の保有する資源の有

効活用を促進するための方策に力点を置いたアフリカ支援策を企画、実行するとともに、

得られた成果を社会全体に公平に分配するシステムの導入についても配意した支援策を進 め、最終的には乳幼児、妊産婦死亡率の低下や教育、医療水準の向上に取り組んで行かね ばならない。

繰り返しになるが、アフリカ全体としての成長には目覚しいものがある。まさに今後の 日本相手の経済産業面でのカウンターパートとして、その潜在能力を十分に持っていると いっても過言ではあるまい。1950年代半ばから日本が経済産業支援に取り組んできた東南 アジア諸国の今日を見れば、アフリカへの投資の必要性と、投資の目標はおのずから明ら かとなろう。即ち、東南アジアでの成功体験をモデルとして、「良きパートナーとなるよう 育て、良好な相互補完関係を維持しながら、共に発展を続けていく」という支援パターン を、アフリカに対しても戦略的に設計し、実行して行くべきである。

一方、将来における持続可能な成長の鍵となるのは、基本的なインフラの整備(陸空海 路、経済回廊の整備)であることは言を待たない。これらは日本の得意な分野でもあり、

国家的な施策として個々の国家のみならず、アフリカ全体、地域(準地域)などを俯瞰し た施策の推進が適当である。また経済成長に比例して急増する若年層に対応した雇用の創 出にも目を向ける必要がある。このためには現地での産業従事のための教育も必要である が、さらに日本の若年層の低下による、我が国の産業、経済の空洞化を補完するために、

東南アジアや南アジアと同様、一定の能力を持つ若者層の招聘プログラムを確立する必要 がある。最後にアフリカの特徴である広大な土地を有効に活用し、可耕地は多いが入超と なっているアフリカの短所を改善するため、アフリカ全体、地域(準地域)および個々の 国の事情を踏まえつつ、農業生産性の向上を図る施策を企画、実行することも有用と思わ れる。

(3) 不安定性の低減

アフリカの安全保障環境は、以前に比べれば民主化も進み、若干改善されつつあるが、

まだ不安定であることは事実である。このことはサブサハラのみならず近年の北アフリカ にも言えることであり、今後ともこの面での国際社会からの支援が必要とされることは疑 いない。現在でも北アフリカでは、「アラブの春」の熱気が過ぎた今でも、エジプト、リビ アでの民主化の定着は進まず、イスラム過激派の進出もあって、アルジェリアやチュニジ アにもその影響葉は広がりを見せ、シリア内戦に手こずる国連を中心とする国際社会は有

効な手を打てないままでいる。一方サブサハラでは、南北ソマリアの内戦が続き、一時は 危機的な状況となるなど、今後も予断を許さず、国連では、マリや中央アフリカ共和国へ のPKO部隊の派遣を検討している。東アフリカでは、破綻国家ソマリアをベースとする海 賊が、一時よりは勢力を落としたとはいえ、その活動範囲を南東方向へ広げ、西インド洋 全域での活動が続き、紅海、東アフリカ、西インド洋での航行の安全を阻害し、国際社会 への大いなる脅威となっている。

こういった状況に対処するため、日本は、南スーダンに自衛隊部隊を派遣する一方、ジ ブチを根拠地として、護衛艦および哨戒機部隊を展開し、海賊対処に当たっているが、国 連を中心とする国際社会からは、内戦終結、紛争終結後の安定化のための国際協力といっ た面での、より実効性のある活動を望む声が多く、「国際協調主義に基づく積極的平和主義」

を標榜する我が国としては、「武力行使の一体化」といった観念的平和主義を脱し、より実 効性のある活動へと止揚すべきであるとの声が、内外で上がっている。

一方、こういった自衛隊の活用を含めた直接的な貢献策のみならず、より根本的には、

紛争要因の封じ込めための不安定地域の周辺国の支援を強化すると言った間接的な貢献策 も期待されている。このためには自衛隊の活動だけでなく、「オールジャパン」、即ち、官、

民、学、防の全ての力を結集した「協奏的な安全保障協力」活動が重要となってくる。

他方、国際テロの封じ込めのための活動に対し、従来日本は、米国を始め国際社会から の要請があっても憲法解釈上不可能あるいは極めて困難であるとして否定的、消極的に対 応してきたが、アル・カーイダを頂点として、盛んに細胞分裂を繰り返して増殖するイス ラム過激派への封じ込めに関し、国際社会からは、日本もより積極的に貢献すべきである との期待も根強いものがある。既にサブサハラ諸国の一部にもイスラム過激派が浸透して いると見られているが、基本的には、北アフリカ諸国において顕著であり、この問題はシ リアを含む中東情勢と不可分の問題となっており極めて複雑な様相を呈している。

このことから、本課題については、今回のアフリカ戦略とは別に、中東・北アフリカ戦 略として別途改めて、総合的に検討することが適当であると考える。

(4) 協奏的な安全保障協力

本章の主題となるのが、「協奏的な安全保障協力」である。

既に繰り返し述べてきたように、従来スポット的に行われてきた海賊対処やPKO協力と いった対アフリカ安全保障協力に留まらず、日本の官、民、学、防が「オールジャパン」