第 4 章 自衛隊が果たすべき役割
第 1 節 基本的な考え方
1. 日本のアフリカ戦略指針
(1) 基本指針
a) 我が国のアフリカ戦略の基本指針
我が国の対アフリカ戦略の基本方針は、我が国の行う対アフリカ施策がアフリカの全体、
地域(準地域)、および個々の国家から長期的な信頼とその行動実績に対する高い評価を得 ることにある。
b) このための我が国の活動
我が国の行う対アフリカ施策の活動は、我が国の国益を確保する傍ら、国際社会におけ る日本の信頼感、存在感および期待感を増大し、アフリカにおいて日本が「良いイメージ が湧く国」として受け止められるような具体的な施策が求められる。すなわち、アフリカ の全体及び地域(準地域)のニーズに適合するとともに、アフリカ全体に調和した施策が 必要である。
c) 日本の流儀の堅持
これまで我が国は、日本企業、NGO、PKO部隊などの1950年代以降から今日に至る長 期間にわたる蓄積された各種の活動成果の中で現地に示してきた、中国等とは異なった日
本の流儀とも言える「直接の対価を求めず成長した後の成果を期待」、「育てて見守る日本」、
「上下なく深い人間的な信頼関係」、「現地に溶け込み腰の座った存在感」といった基本姿 勢に評価を得ており、今後ともこの姿勢を保持することが必要である。
d) オールジャパン体制
今後、人口増大や異常気象の生起は、アフリカに甚大な被害や破壊をもたらすことが 懸念され、自衛隊等の人道・救難支援、国際平和協力におけるより能動的な支援や諸活 動の活性化が期待される。また、これらの支援活動を官・民・学・防の「オールジャパ ン」で実施することが「持続可能な成長」や「不安定性の低減」をもたらし、「協奏的 な安全保障協力」につながるものと考える。したがって十分な経験とノウハウを有する 米国、豪州、欧州主要国等の軍関係者との協調連携が重要となる。このため、所要の自 衛官等をアフリカの関係地域に派遣し、平素からこれら諸国との交流を通じた総合的な 情報収集が支援活動の基本となる。
(2) 持続可能な成長
a) TICADとの連携の強化
アフリカは資源大国であり、急激に成長するアフリカ経済の柱となっているが、資源の 配分は公平でないことから格差をもたらし、アフリカ全体の持続可能な成長を妨げるとと もに不安定性を増大させつつある。日本はこうしたアフリカ地域の特性を踏まえ、TICAD などと連携を強化し、TICADの活性化・充実化を図ることでアフリカの全体、地域(準地 域)および個々の国家の保有する資源の有効活用を促進するアフリカ支援策を推進するこ とが重要である。特に、資源とともにその利益まで国外に流失し、生産基盤や雇用が育ち にくい現況に鑑み、アフリカの社会全体に公平に利益がもたらされるようなシステム、外 国からの搾取を抑止するようなジャパン・システムを構築し、支援策を講じる必要がある。
b) インフラ・流通基盤の整備
アフリカの将来における持続可能な成長の鍵となるのが、基本的なインフラの整備(陸 空海路、経済回廊の整備)であり、日本の得意な支援分野として、アフリカ全体、地域(準 地域)など将来を見通してのプロジェクトに企画・関与することが期待されている。
c) 人材育成支援
アフリカ諸国の経済成長に伴う雇用の創出に目を向け、現地での生産・産業従事のため の職能教育や、一定の能力を持つ若者層の人材育成招聘プログラムが期待される。特にア フリカの広大な土地と人口急増に鑑み、アフリカ全体、地域(準地域)の農業生産性の向 上、医療・衛生、太陽光等エネルギーなどのニーズに着目することが重要である。
(3) 不安定性の低減
a) 長期的支援拠点の整備
アフリカの安全保障環境は、民主化が進んではいるが社会生活環境はいまだ不安定であ り、サブサハラのみならず北アフリカにも国際社会の支援が必要とされる。こうした状況 に対処するため日本は、南スーダンに自衛隊部隊を派遣する一方、ジブチを根拠地として、
護衛艦および哨戒機部隊を展開し、海賊対処に当たっているが、国連を中心とする国際社 会からは、内戦終結、紛争終結後の安定化のための国際協力などの面でより実効性のある 活動が期待されており、「国際協調主義に基づく積極的な積極的平和主義」を標榜する我が 国としては、「武力行使の一体化」といった観念論から脱却し、腰を据えて真に実効性ある 活動をすることが期待されており、長期的な支援拠点としてジブチを強化すべきである。
b) 不安定地域の周辺国の支援
より根本的な紛争要因の封じ込めのためには、不安定地域の周辺国に対する支援を強化 し、外側から不安定性を低減する農業生産向上などの間接的な貢献策も期待されている。
これは当に「オールジャパン」、即ち、官、民、学、防の全ての力を結集した「協奏的な安 全保障協力」活動であり、自衛隊としてもモデルケースについて検討する意義があるもの と考える。
c) 対テロ封じ込め
日本は、国際テロの封じ込めのための活動に対し、国際社会からもっと積極的に貢献す べき、との期待があるが、サブサハラ諸国の一部にもイスラム過激派が浸透していると見 られ、シリアを含む中東情勢と不可分の問題として極めて複雑な様相を呈している。
このため、対テロ封じ込めについては、今回の対アフリカ戦略とは別の観点から、中東・
北アフリカ戦略の枠組みで別途、総合的に検討することが適当であると考える。
(4) 協奏的な安全保障協力
a) 国家安全保障会議(JNSC)を軸に
今日、対アフリカ支援は、これまでの反省から従来のスポット的な海賊対処やPKO 協力による対アフリカ安全保障協力から、日本の官、民、学、防が「オールジャパン」で 一体化した新たな安全保障協力の形を構築し、実行しなければならない時代を迎えている。
すなわち、「国家安全保障会議」(JNSC)の監督の下、外務、防衛、経産、文科などの関 係省庁が、民、学などが一体となり、「オールジャパン」の体制で考えることが必要である。
b) 自衛隊の協力活動
協奏的な安全保障協力における自衛隊の活動に当たっては、基本的にJNSCが国家司令 塔の役割を果たしつつ、官によるアフリカ総合政策の推進政策との一体性を働きかける必 要がある。JNSCにはそのための総合調整機能が期待され、今後の「モデル」となるに相 応しい「協奏的な安全保障協力」態勢の構築が望まれる。
c) 法整備等との節調
国内外における自衛隊の諸活動には、法的な面から諸般の制約があり、そのことが派遣 の時期を失し、或いは関係国との協調が取れないような事態をもたらしている。このため、
国際標準を念頭に法整備等の進捗状況と節調し、その進捗段階を短期、中期及び長期的に 区分整理して「協奏的な安全保障協力」の具体的な協力活動を進めることになる。
(5) 関係諸国との協調・連携
a) 米アフリカ統合軍との協調・連携
インド太平洋地域を貫通する枢要な海上交通路の一部を構成する東アフリカ・紅海・ペ ルシャ湾岸航路や、それに接続する地中海・西アフリカ航路は、国際的な重要な物資の運 搬路としてのみならず、海底資源や漁業資源という意味からも、海上交通路としての重要 性を増している。また、当地域は、米国のアフリカ軍が統合軍として地域を統括し、湾岸 地域を根拠地とする米海軍の第5艦隊が中心となり、NATOやEU、日本や中韓等の北東ア ジア諸国海軍、インド海軍などの南アジア海軍、豪海軍、GCC諸国海軍などと連携し、海 賊や国際テロリストなどに対する海上における阻止活動に当たっている。
b) 第5艦隊との協調・連携
そうしたなかで日本はジブチを根拠地として、海賊対処のための活動を継続して行い成 果を挙げているが、国際テロリストの阻止活動に対する日本の実質的な参加を求める声も あり、第5艦隊との協議により、必要性があれば、現在の海賊対処のために活動している 護衛艦や哨戒機の任務に国際テロ対策海上活動を付け加えるなどの協力活動も考えられる。
c) 英・仏・伊・ベルギー国軍との連携
米国のアフリカ軍は、英・仏・伊・ベルギーなど旧アフリカ宗主国の軍と、安全保障面、
特に情報交換・共有といった側面での連携も図っており、アルジェリア人質事件で明らか になったように、日本は、対アフリカ支援の為には先ず情報収集能力の強化が急務である。
d) 総合的な拠点の整備
アフリカでの「協奏的な安全保障協力」を推進するには、ジブチのような総合的な拠点 を設けることが必要である。日本がより積極的にアフリカへの多角的な支援を行うために は、諸外国との連携、特に欧米諸国、中東・南アジア諸国、東アフリカ諸国等との連携を 図る必要があり、東アフリカに自衛隊の本格的な活動拠点を設定することは、将来の「協 奏的な安全保障協力」の重要な推進基盤になるものと考える。
e) 日本の流儀
隣国の中国はジブチに強い関心を見せており、同国に対するインフラ整備(エチオピア
~ジブチ間の鉄道建設、新港建設)と引き換えにジブチ側からは、中国海軍用の母港等、
各種軍関係施設を提供受けする模様である。こうしたやり方が、アフリカの持続可能な成 長や不安定性の低減に繋がるのか、また、大国としてアフリカ諸国から尊敬を勝ち取るこ とができるのか疑問ではあるが、日本には日本のやり方があることから、ジブチについて も相当なスピード感でそのための協力関係を構築しないと、時機を失する恐れがある。
2. 「協奏的な安全保障協力」と自衛隊の役割
(1) 短期・中期・長期の考え方
「協奏的な安全保障協力」の実行を左右する要素としては、アフリカ情勢やこれを取り