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第 2 章 主要国等の対アフリカ戦略

第 4 節 米国

2. オバマ政権(2009.1‐)における対アフリカ戦略と 2014 年8 月のサミット

(1) ガーナ共和国における演説(2009年7月):アフリカの未来はアフリカ人の責任

オバマ大統領は、就任以来、アフリカの強力で、開放的で責任ある政府への支援と持続 可能な開発にコミットしている81

オバマ大統領は、2009年7月にガーナ共和国アクラで大統領としてのアフリカへの取り 組みの姿勢を明らかにした。その演説において、まず、大統領としてアフリカをパートナ ーとして考えており、このパートナーシップは、「相互の責任と尊敬に根差していなければ ならない」とした。そして、「アフリカの未来はアフリカ人が責任を持つという単純な前提 を出発点としなければならない」とした。

その上で、次の4分野への支援を強調した82

①「民主主義」:強固で持続可能な民主政府を支援

②「機会」:より多くの人々に機会をもたらす開発への支援

③「保健」:公衆衛生の強化

79 同上。

80 片原「米国の対アフリカ戦略」、87頁。

81 The White House, “U.S. Strategy Toward Sub-Saharan Africa”, June, 2012.

82 米国大使館「オバマ大統領のガーナ国民議会での演説、2009711日、ガーナ共和国アクラ(ホワ イトハウス報道官室)」米国大使館東京HP。

④「紛争解決」:紛争に対するアフリカの能力を向上させるための支援

オバマ大統領のガーナにおける演説は、この後の国家安全保障戦略、対アフリカ戦略の 基礎となっている。

(2) 2010年の米国の国家安全保障戦略:アフリカに対する「戦略的干渉」を再度優先

2010年5月に公表された「米国の国家安全保障戦略(The National Security Strategy of the

United States)83」において、次の2点に着目する必要がある。

第1点目は、戦略的アプローチにおいて、包括的な関与の遂行(pursuing comprehensive engagement)を強調していることである。関与を成功させるためには、各方面における米 国の力の結集することが必要としている。具体的には、防衛(defense)、外交(diplomacy)、

経済(economics)、開発(development)、国土安全保障(homeland security)、情報(intelligence)、

メディアを含む外国国民との戦略的対話(strategic communications)、米国民及び民間部門

(the American people and the private sector)の力を結集することが必要としている。

アフリカとの関係において、開発が防衛と外交と同様に、米国の安全保障及び外交政策 上の柱と位置付けられた点に注目する必要がある。さらに、米アフリカ軍においても包括 的なアプローチが重視されており、アフリカの問題についても米国の力が結集して行使さ れることになろう。

第2点目は、アフリカとの関係は米国にとっての機会であり挑戦であるとし、オバマ政 権として「戦略的干渉(Strategic Intervention)」を再度優先するとしていることである。そ の戦略的干渉の目的は、①仕事の創造と経済成長の促進、②グッドガバナンスの強化によ る堕落との戦い、③アフリカの安全保障と立法分野の能力向上のための責任ある支援、④ 外交交渉を通じた紛争の予防としている。オバマ政権のアフリカに取り組む姿勢が明示さ れている。

(3) 4年毎の国防計画の見直し(QDR2010)

2010年2月に国防総省が議会に提出した「4年毎の国防計画の見直し(QDR2010)84」 においては、国防の優先目標として、①今日の戦争における勝利(prevail)、②紛争の予防

/抑止(prevent and deter)、③敵を打倒し、幅広い事態で成功するための備え(prepare)、

83 The White House, “The National Security Strategy ”, May 2010.

84 Secretary of Defense, “Quadrennial Defense Review Report 2010” , February 2010.

④全志願制の軍隊の維持と強化(preserve and enhance)の4点を挙げている。

その上で、戦力のリバランス(Rebalancing the Force)として、次の6点を重点任務分野 としている。

①米国を防衛し、本土において民生部門を支援すること

②内乱鎮圧(counterinsurgency)作戦、安定化作戦、対テロ作戦に成功すること

③パートナー諸国の安全保障上の能力を構築すること

④アクセス拒否環境での攻撃を抑止し、打倒すること

⑤拡散を防止し、大量破壊兵器に対抗すること

⑥サイバー空間で効果的に作戦行動を展開すること

アフリカにかかわる項目として、②で掲げられる作戦のため、戦略コミュニケーション 能力の強化等を図るとしている。また、③項においては、軍事支援のための一般目的の能 力の強化・制度化、語学や文化能力の強化、パートナー軍に重要能力を迅速に取得・移転 する仕組みの創造等を図るとしている。

関係の強化(Strengthening Relationships)の項において、アフリカとの関係について、米 国はアフリカ大陸における安定と繁栄の促進を援助することを目的としてパートナー国と の関係を継続するとしている。アフリカに展開する部隊については、「パートナー国の安全 保障能力の構築の支援」、「地域的な安全保障協力の機会の創造」と「アフリカにおける建 設的な軍民関係の開発の促進」を目的として、限定的な軍事的存在を維持するとしている。

なお、QDR2010では、インド洋が世界規模の経済において今まで以上に重要な役割を果

たすであろうことから、その安定が米国の国益にとって極めて重要(substantial interest)

としている。中国のアフリカ進出との関連において着目すべき点であろう。

(4) 米国の対サブサハラ・アフリカ戦略:民主制度の強化など4本の柱

2012 年 6 月、「米国の対サブサハラ・アフリカ戦略(U.S. Strategy Toward Sub-Saharan

Africa)85」が公表された。オバマ政権の対サブサハラ・アフリカ戦略として、2009 年 7

月のガーナ共和国における演説を基礎として、2010年に策定された米国の国家安全保障戦 略を踏まえて策定されたものである。

冒頭言において、オバマ大統領は「民主制度の強化」と「経済成長と貿易投資への刺激」

の2点を強調している。まず、「民主制度の強化」にあたり、民主化のプロセスに脅威を与

85 The White House, “U.S. Strategy Toward Sub-Saharan Africa ”, June 2012.

えるような指導者に対して米国は何もしないままではいない(will not stand idly by)とし ている。次に、「経済成長と貿易投資への刺激」においては、アフリカのパートナー国との 協力において最も重要なことは、アメリカ人が繁栄するための機会を創造することである としている。

この戦略の序論において、サブサハラ・アフリカにおける米国のコアな国益(core interest)

として次の5点が掲げられている。

①米国、米国民、同盟国とパートナー国の安全の確保

②世界のステージにおいて米国の強力なパートナーとなる民主主義国家の創設

③米国の貿易投資の機会の拡張

④紛争と大残虐行為の防止

⑤持続可能な経済の成長と貧困の軽減

その上で、米国のサブサハラ・アフリカに対する戦略目標として、次の4本の柱が掲げ られている。

①民主制度の強化(Strengthen Democratic Institutions)

大統領は、ガーナで「アフリカは強い統治者を必要としてはいない。強力な機関・制度 を必要としている」と発言している。国家安全保障戦略において述べたように、民主主義 の支援は米国のコアな国益である。

アフリカ諸国ともアメリカの価値観を共有する。それを遮るものには断固立ち向かう。

この中には、中国への戦略的な対応も含む。

②経済成長と貿易投資への刺激(Spur Economic Growth, Trade, and Investment)

アフリカ地域の貿易競争力を改善し、アフリカが資源以外での輸出も可能になることは 米国の国益の1つである。

特に石油資源を確保するとともに、アフリカにおける米国の市場を拡大する。

③平和と安全の促進(Advance Peace and Security)

アフリカの政府のみが安全の確保への挑戦を継続することができるが、米国は良い意味 での違った力を出すことができる(but the United States can make a positive difference)。

米国民とパートナー国の安全を守るために、アルカイダや他のテログループと戦う。ま た、アフリカ諸国が自らの手で平和と安全を構築できるよう支援する。米国は必要に応じ 直接的な軍事行使も実施する。

④機会と発展の推進(Promote Opportunity and Development)

オバマ政権においては、後述する「グローバル開発に関する大統領政策指令(the Presidential Directive on Global Development)」も含め、全政府的な開発戦略を進めている。

オバマ政権において開発戦略の中核となる主要3イニシアティブは、「国際保健イニシアテ ィブ」、「国際飢餓・食糧安全保障イニシアティブ」、「グローバル気候変動イニシアティブ」

である。

アフリカの人道支援・開発支援に積極的に取り組み、これにより、国連などにおける米 国の主導性を強化する。

ブッシュ政権における対アフリカ戦略においては「テロとの闘い」が前面に打ち出され ていたが、オバマ政権においては「民主制」と「経済」が前面に打ち出されていると見る ことができる。

なお、サブサハラ・アフリカと北アフリカの両方をカバーする「一つの対アフリカ戦略」

は現在のところ存在しない。その理由として、両者の間には、歴史、風土、政治、経済な どの面で大きな相違があるからであろう。戦略を策定する相手の特性に応じて、対象とす る地域が設定されているとも考えられる。

(5) 米国とアフリカの首脳会議(2014年8月)

米国政府が2014年1月21日、「米国とアフリカの首脳会議(U.S.-Africa Leaders Summit)」 を2014年8月5、6日にワシントンで開催すると発表した86。ホワイトハウスによると、

アフリカ大陸の47カ国の首脳を招待するという。アフリカの首脳を一堂に集める会議を米 政府が主催するのは初めてのことである。

サミットでは、①アフリカの安全確保、②民主的な開発、③アフリカの人々(特に若い 人たち)に対する米国のコミットメントにハイライトがあてられるとされている。これま で実施されてきたAGOAでは経済協力が中心であったが、このサミットでは全体がカバー されるであろう。

(6) 考察:米国にとってのアフリカの戦略的価値とオバマ政権の対アフリカ戦略

a) 米国にとってのアフリカの戦略的価値:これまでの研究成果

オバマ政権成立直前までの「米国にとってのアフリカの戦略的価値」については、米国

86 The White House Office of the Press Secretary, “Statement by the Press Secretary Announcing the U.S.-Africa Summit”, January 21, 2014.