• 検索結果がありません。

第 5 章 褒めの文化差およびジェンダー差

5.1 褒めの談話に見られる文化差

5.1.8 談話 8 の分析結果

123

124

B20m: 嗯。入学的时候,我还想我能坚持4年嘛(嗯<笑>A20m),谁知道,好像也没什么 大不了的哈。

A20m:但是,感觉你比以前能说点了。

B20m:是吗?

反正就一个劲儿说呗,自然(嗯A20m)就成这样了。

<过了一会>啊。(轻微的叹息声)

A20m:什么时候呢?

呃,入学考试的时候吧。

B20m:入学考试呀?

A20m:嗯,学长他们也在,还说让你多说点话呢。

B20m:(笑)是嘛。

A20m:然后,很久不是那个(没见面了嘛)(啊B20m),前几天。

B20m:见面了?

A20m:嗯,在(地名)喝酒的时候,还说你,那个(B20m的名字)比以前能说了哈什么的。

(笑)

B20m:啊。(轻微的叹息)

談話8のt検定の結果は以下の表5-8の通りである。

5- 8 談話8t検定の結果 グループ統計量

国籍 度数 平均値 標準偏差 平均値の標準誤差 会話8 1 78 2.01 1.134 .128

2 68 2.60 1.161 .141

125

独立サンプルの検定 等分散性のた

めの Levene

の検定 2 つの母平均の差の検定

F 値 有意

確率 t 値 自由度

有意確率

(両側)

平均値 の差

差の標 準誤差

差の 95% 信頼区間 下限 上限 会

話 8

等分散を仮 定する

1.471 .227 -3.102 144 .002 -.590 .190 -.996 -.214

等分散を仮 定しない

-3.097 140.331 .002 -.590 .191 -.967 -.213

表5-8からわかるように、談話8に対して、中国語および日本語それぞれの回答から得 た平均値に差があるかどうかについてt

検定を行なったところ、有意差が見られた(t=-3.102, df=144, p<.05)。この結果と平均値から考慮して、中国語母語話者は、日本語母語

話者より「褒めである」と回答する人が多いと解釈できる。

談話8に対する中国語母語話者ならびに日本語母語話者それぞれの回答の理由は、

以下の通りである。

中国語母語話者

 文脈で本当に上手になったことを言いたかったから、褒めである(CM14)

 相手の進歩に心より喜んでいる(CM15)

 以前の自分と比較し進歩があったから、肯定的に認めている(CM17)

 以前のBはあまりしゃべれなかったけど、上手になったと言っている感じがする。そ して、ほかの人(先輩)の言ったことも引用しているから(褒めである) (CM23)

 弱点が改善できていることは進歩(いいこと)だから、相手に対する褒めだと思う(CF3)

 小さな相手の変化でも気付いてあげて肯定的に評価している(CF15)

 4年の付き合いだから、心こもっている感じがする(CM5)

 褒めであろう。ここ4年の変化について具体的に言っているから(CM36)

 先輩の言ったことを引用しているから、褒めている感じがする(CF34)

126 日本語母語話者

 立派な褒めではあるが、からかいの意も兼ねていると思われる(JM26)

 場合によるが、見下ろしている感じがする(JM33)

 しゃべれるようになったと前向きな発言。しかし、「それでも人並みではない」と か「昔は暗かった」などとも捉えられそう(JF20)

 「前よりも」で少し褒め度が下がる(JF22)

 「でもは」は最初に持ってくるのが普通だと思う。Bの昔の姿に対しては否定的で あるので、Bが喜ぶかどうかわからない(JF32)

 うるさくなったという意味にも受け取れるため(JM3)

 少し上から目線な気がする(JF6)

 言われても、あまりうれしくない(JF7)

 よくしゃべることはいつも良いことだとは限らないため(JM15)

 「しゃべれるようになった」は褒め言葉ではないと思う。「明るくなった」とかだ ったら褒め言葉(JM23)

 「談話が得意になった」と褒めているようにも、「前は全然談話が得意ではなかっ た」と以前の相手を悪く言っているようにも感じるから。文だけ見ると、どっちか 分からない(JM24)

以下の図5-8は談話8に対する中国語母語話者ならびに日本語母語話者の回答結果の 割合を示している。

127

5- 8 談話8についての回答比率

図5-8より、8 割弱(76%)の中国語母語話者協力者は「褒めである」と回答してい るのに対して、日本語母語話者協力者の回答は6割強(64%)に留まっている。中国語 母語話者の理由としては、「以前の自分と比較して本当に進歩があった」や「小さな変 化117 でも気づいてくれた」118 、または「先輩の言ったことも引用しているから」119 な どが「褒めである」要素として回答データより確認できた。一方、日本語母語話者には、

「以前の自分も見てくれている」120 という点で褒めを肯定する理由もあったが、相手 に対する自分の感想を具体的な褒め言葉で表現しないと褒めにならない121 という理由 も挙げられた。

この結果から、中国語母語話者ならびに日本語母語話者の間で、「しゃべれる」こと や「比較」、「変化」に対するイメージが異なっていることがわかる。「しゃべれる」こ とに対して、中国語母語話者は「しゃべれるようになったことは良いことなのか」122 な ど疑問の念を抱いている人がいるものの、その大勢はプラスなイメージを持っている。

以下のような回答が挙げられる。「しゃべれるようになった」こととは、「明るくなった

117 以前しゃべれなかったBが、しゃべれるようになったという変化のことを指す。

118 CM1、CM13、CM14、CM15、CM17、CM23、CM24、CF3、CF5、CF37など。

119 CM23、CF24、CF34など。

120 JF11、JF24、JF25など。

121 JM13、JM23、JM25、JF4、JF8、JF19など。

122 CM32、CF36。

41%

35%

10% 10%

4%

20%

44%

18%

12%

6%

0%

5%

10%

15%

20%

25%

30%

35%

40%

45%

50%

中国 日本

128

と言っているから」(CM3)、「進歩があった」123 、「本当に上手になった」124 のイメー ジを持っているため、褒める理由が納得できる125 。一方、日本語母語話者は、「しゃべ るようになったことに良い悪い感情は特に感じられない」126 、「前よりしゃべるはそも そも褒め言葉のかがわからない」127 という理由から、マイナスのイメージを持ってい る。コメントからみれば、「しゃべれるようになった」は、「褒め言葉ではないと思う」

(JM23)、「しゃべることが偉いとは限らない」(JF16)、「『しゃべれるようになった』と いうのが良いこととは限らないから」128 、「『よく話すこと』がとても良いことのよう に言っていることに少し違和感を覚える」(JF10)という理由が挙げられた。さらに、

「うるさくなったという意味にも受け取れる」(JM3)ため、「言われても、あまりうれ しくない」(JF7)というコメントも確認できた。このように、中国語母語話者ならびに 日本語母語話者は、「しゃべれるようになった」ということに対するイメージが異なっ ていることが窺える。

「比較」、「変化」に対するイメージについて、両言語の相違は大きい。中国語母語話 者の褒めの解釈の特徴として、以前の自分と比べて、その弱点が改善されプラスの方向 に変化を生じた事が「進歩があった」129 、「相手が(自身の)変化に気づいてくれた」

という回答から、褒められたと肯定的な解釈をしている。ところが、日本語母語話者の その褒めに対する解釈は、一連のネガティブ要素として全く真逆の解釈を生んでいるこ とが興味深い。以前の自分との変化に対して、「事実を述べているだけ」130 、「プラス でもマイナスでもない」(JF23)、あるいは、「良いこととは限らない」131 と感じている。

また、過去の自分に対しても否定的な要素があり、「もともとしゃべらなかった(B20m)

を少しから意図も入っていそう(JF3)」、しゃべれるようになっていても、「昔は暗かっ た」132 とも捉えられ、「B の昔の姿に対しては否定的である」133 という回答が多数確 認できた。さらに、「上から目線な気がする」134 、「言われても、あまりうれしくなく

123 CM13、CM15、CF3、CM37、CF7など。

124 CM14、CM23、CM35など。

125 CM28、CF38。

126 JF8、JF19、JF23など。

127 JM20、JF17。

128 JF5、JM15、JM13。

129 CM13、CM15、CM17、CM24、CF3、CM8など。

130 JM1、JM25、JM30、JF4など。

131 JM15、JF10、JF16。

132 JF20、JF22。

133 JM24、JF32、JF21など。

134 JF6、JM23。

129

い」(JF7)のような否定的な回答もあり、やはり「変化」に対して全体的にネガティブ に捉えており、褒めに関しては否定的といえるだろう。