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第 5 章 褒めの文化差およびジェンダー差

5.2 褒めの談話に見られるジェンダー差

5.2.2 日本語母語話者の談話に見られるジェンダー差

5.2.2.1 女性日本語母語話者

本節では、6つの談話例[5-13]、[5-14]、[5-15]、[5-16]、[5-17]、[5-18]を挙げて、

褒めの談話に見られる女性中国語母語話者の特徴を明らかにする。[5-13]では、AとB が運転について話している。

[5-13]

232 A20f:「D20f」って、ほとんに毎日運転してんのー?

233 D20f:してるよー。

234 A20f:すごいねえ、尊敬するわ。

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235 D20f:今日も、だって、お店行くのに運転していくもん。

(話題転換)

この談話では、まずA20fは「「D20f」って、ほとんに毎日運転してんのー?」(L1)と いう質問の形式で話題を持ち出している。そして、D20f が毎日運転「してるよー」と自 分の情報を提供すると、A20f は、毎日運転している D20fのことを「すごいねえ」、「尊 敬するわ」(L234)と2つの褒め言葉を併用することで、D20fと親しい間柄であること を示している。また、均一でやや短いやり取りが絶え間なく続いており、発話の量とい う見方からはA20fとD20fの対等な談話形態を成している。「毎日運転すること」に対 して、自分にとってそれが困難であることから、相手の「しているよ」という返答に対 して敬意を表し、「すごいね」「尊敬するわ」と褒めを表現している。

[5-14]は、親しい女性同士がラジオやDJについて話している。

[5-14]

01 2JFA:もうちょっと何かな、私さ、あんまりしゃべりできんけんさ、しゃべりとか できたらさ、ラジオもさ、DJとか、何か。

02 2JFB:いいね、ラジオいい//、ラジオいい、ラジオいい。

03 2JFA: //ね、楽しそうだよね。(笑)

04 2JFBちゃんとか、いけそうじゃない?しゃべり。

05 2JFB:え?無理無理無理無理。

06 でも、ラジオいいよね。

07 2JFA:ラジオいいよね。

(話題転換)

冒頭では、L01でラジオという話題を提供し、もし自分が「しゃべりができたら」(L01)

ラジオやDJやりたいと言っている2JFAに対して、2JFBは「ラジオいい」(L02)と繰り 返して共感を示している。続けて、自分はあまりしゃべらないからDJにはなれないの に対し、「2JFB ちゃんとか、いけそうじゃない?しゃべり」と述べ、自分と比較しなが ら褒めていることがわかる。その2JFAの褒めに対して、2JFBはL05で「無理無理無理 無理」と返答し、「でも、ラジオいいよね」(L06)と話題をラジオに戻そうとしている。

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ここで注目したいのが、発話の重複である。L03で「ね、楽しそうだよね」と、L02の 発話を重複させることで談話に対する熱心さを伝え、聞き手との連帯感を強める

(Tannen 1984, Hayashi 1988)。また、「ラジオがいい」という発話から、相手の主張の内 容を窺い知るために相手の発話を重複させることは、相手と親密な関係であることの1 つの表れである。

[5-15]と[5-16]は、職場(大学)で先生がゼミの学生と雑談している。

[5-15]

04 B20f:あたし、3年生の時、ダブルスクールしてたので。

05 A50f:ああー、そうなの。

06 あの(=フィラー)、日本語教育?

07 B20f:専門学校行(い)ってて{うん[A50f]}、そこで-、ん、週何時間も授業を受け て、土日も学校行(い)ってたんで、専門の=。

08 A50f: =あ、すごいね。

[5-16]

216 A50f:でも、ほんとに70件も面接行ったの?【驚きの強い口調で】

217 B20f:行きました。

218 A50f:すごーーい【感心した声で】

219 B20f:エントリーシート、けっこ(=結構)通ったんですよ。

220 A50f:うん、だから、あたしもあれを聞いた時にー、80だして、70面接 行ったってのは、ね、書類が通ったってこっ(=こと)だから、

すごいねって思ったの。

221 B20f:通りました。

[5-15]と[5-16]ではB20f の行動力を褒めている。[5-15]では、土日も専門学校に 行って授業を受けていたB20fのその行動力を「すごいね」(L08)と褒めている。[5-16]

では、70件の書類審査を通過して面接に全部行ったB20fに対して、A50fは「すごーー い」(L218)、「すごいね」(L220)と繰り返し褒めている。これらの褒めの表現から、A50f の感心した様子が窺われる。

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[5-17]は、介護施設に義姉を見舞ったことについて雑談している。

[5-17]

124 A70f:まあねえ、コーヒー屋さん行って、なかった時はちょっとがっかりした。

125 あたしコーヒー屋さんにあるとばっかり思ってたのよね。

126 B90f:うーん。

127 A70f:でも、高いあそこから確か帽子を、た、取ったな、[姓 1144 ]さんが取ったな

っていう気も何となくしてたから。

128 あ、もっと早く[姓1]さんに聞けばよかったんだね。

129 ま(あ)、いいや。

130 B90f:あんた、よう、ようそれだけ、あた、頭がつこうた145 な。

131 A70f:<笑い>

132 B90f:ええ、わたしはもう走馬灯のように、あの、頭があるけど[んA70f]ね。

133 そうなん一つ考えんから<少し間>。

134 A70f:でも、ほらコーヒー屋さんで高い所に帽子を掛けたっていうのは覚えてるでょ

う?<笑い>

135 B90f:そう、それ絶対にもう、言うのを言われへんやん。

136 A70f:<ハハハハ(笑い)>

137 B90f:なあ、あんたさんは頭が違うねん。

138 A70f:いやいや、いやいや、あたしもよく忘れ物する。

眼鏡を見つけてくれたA70f に対して、B90f は、「よくそれだけ」頭が使った(L130)

と褒めてういる。さらに、その後は「あんたさんは頭が違う」(L137)と言い、繰り返 し褒めることで、本当に助かったという感謝の気持ちも窺える。

[5-18]は、娘の通う舞の稽古場で発表会の衣装について、先生と相談している場面 である。

144 「姓1」はB90fの知人女性。

145 関西地方の方言でよく聞かれる表現で、頭を使ったという意味である。

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[5-18]

42 A50f:絵羽146(えば)、絵羽(えば)ですね。

43 B50f:絵羽(えば)で?=

44 A50f:=はい、はい=。

45 B50f:=まだ仕立てる前でー(はい「A50f」)、売ってたんですか?↑=。

46 A50f:=はい。

47 B50f:それはもしかしたら、ほんと、掘り出したもの。

48 C50f:「A50f姓」さん、上手(じょうず)なんだもん、そうゆうのー。

49 A50f:→そうなんですか?←

50 B50f:ん?↑。

51 C50f:「A50f姓」さん上手(じょうず)。

52 B50f:うん。

53 掘り出しもん。

娘の発表会の衣装として立派なものを見つけたA50fに対して、C50fは「上手なんだも ん」(L48)と褒めている。その後、L49では「そうなんですか」(L49)と確認しようと したA50fの様子を窺い、「A50f」さん上手(L51)と再度褒めている。

このように、女性日本語母語話者の褒め談話では、本心で褒めていることをアピール するために、短くてシンプルな褒め言葉を繰り返して言うという特徴が見られた。