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第 5 章 褒めの文化差およびジェンダー差

5.1 褒めの談話に見られる文化差

5.1.1 談話 1 の分析結果

談話1の中国語の原文は以下の通りである。

談話1の日本語の翻訳は以下の通りである。

(1)Aの自宅に2匹の猫を飼っている。その猫の鳴き声について話している。

B:で、鳴かなくなったの?

A:鳴くけど、ドアを閉めれば聞こえなくなるけどね。

B:あ、防音がいいね。

A:うんうんうんうん。

でもね、その大きな猫が起きている時に、少しでも音が聞こえたら、

B:うん。

A:(その大きな猫が)あの子猫のためにドアを開けてあげるのね。

B: え?!すごい猫だね。

A:うんうんうん。

ドアを押しながら開けてあげる。まあ、ロックしてないからね。

(1)两个关系较好的女生A和B在谈论A家的两只猫。

B:那它就不叫唤了啊?

A:它也叫,就是把门儿一关就听不见了。

B:哎,那个隔音设备还不错啊。

A:嗯嗯嗯嗯。

但是吧,我们家那大猫吧,它要一醒了之后,它能听见一点儿声儿。

B:嗯。

A:它就去给那猫开门去。

B:啊?

你家猫本事挺大的啊。

A:嗯嗯嗯。

它一推就能把门儿推开,没锁就是。

95 談話1のt検定の結果は表5-1の通りである。

5- 1 談話1t検定の結果

グループ統計量

国籍 度数 平均値 標準偏差 平均値の標準誤差 会話1 181 78 2.36 1.486 .168

2 68 1.50 .838 .102

独立サンプルの検定 等分散性のた

めの Levene

の検定 2 つの母平均の差の検定

F 値 有意

確率 t 値 自由度

有意確率

(両側)

平均値 の差

差の標 準誤差

差の 95% 信頼区間 下限 上限 会

話 1

等分散を仮 定する

31.633 .000 4.218 144 .000 .859 .204 .456 1.261

等分散を仮 定しない

4.371 124.379 .000 .859 .197 .470 1.248

表5-1からわかるように、談話1に対して、中国語および日本語それぞれの回答から得 た平均値に差があるかどうかについて t 検定を行なったところ、有意差が見られた

(t=4.371, df=124.379, p<.05)。この結果と平均値を見ると、日本語母語話者は、中国語 母語話者より「褒めである」と回答する人が多いと解釈できる。

談話1に対する中国語母語話者ならびに日本語母語話者それぞれの回答の理由82 は、

以下の通りである。

中国語母語話者

 Bの性格にもよる。文字だけから判断するのが難しい(CF15)

81 グループ1は中国、グループ2は日本である。以下同様である。

82 各談話に対する中国語母語話者ならびに日本語母語話者のすべての理由は、付録4を参照されたい。

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 猫のすごさを褒められ、ポジティブに反応しているAの答えからわかる(CF24)

 猫のすごさとすごい猫を選んだ相手のことを褒めているから(CF31)

 猫のかしこさを褒めている感じがするから(CM17)

 仲がいい二人だから、そして防音がいいとかを褒めており、楽しい雰囲気だとわかる

(CM33)

 こんな猫が珍しいけど、あいづちのようなニュアンスにも感じた (CF26)

 皮肉っぽく聞こえる(CM2)

 事実を述べただけであり、褒めではない(CF28)

日本語母語話者

 猫が賢いことを褒めているから(JM6)

 ドアを開けられる猫を聞いたことがなかったので、単純な褒めであると思います

(JM17)

 大きい猫が子猫のためにドアを開ける優しさや、認知能力の高さを褒めているよ うに読める(JM18)

 猫の珍しい行動に対してのすごいは自然な流れだと思ったから(JM33)

 談話の流れからしてドアを開けられる「すごい」ネコという意味に聞こえる

(JF22)

 すごいが猫の優しさを表している様に思われる(JM15)

 ポジティブな文脈で使う「すごい」は褒め言葉だと思うから(JF18)

以下の図5-1は、談話1に対する中国語母語話者ならびに日本語母語話者の回答結果 の割合を示している。

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5- 1 談話1についての回答比率

図5-1から、中国語母語話者ならびに日本語母語話者、ともに「褒めである」という 回答率が高いことがわかる。その理由としては、子猫にドアを開けてあげる大きな猫に ついて、「すごい」、「猫の認知能力」や「猫の賢いことを褒めているから」83 という意 見が圧倒的に多かった。このように、中国語母語話者ならびに日本語母語話者はともに、

ドアを開けられる猫について「すごい」という肯定的な評価が、褒めとしてて受け取ら れている。しかし、「褒めではない」と判断した割合には、中国語母語話者ならびに日 本語母語話者の間に相違が見られた。日本語母語話者は5%のみであるのに対して、中 国語母語話者は 3 割弱(28%)のが「褒めではない」と判断した。その理由としては、

「自分の感想を述べただけ」84 、「冗談」(CF12、CF18)や「皮肉っぽく聞こえる」85 と いう意見が挙げられた。「すごい」という褒め言葉だけで具体的な説明や理由が欠けて いるため、中国語母語話者には「自分の感想を述べただけ」のように聞こえてしまう可 能性があると考えられる。

83 CM4、CM17、CM22、CM29、CF13、CF14、CM9、JM6、JM16、JM18、JM27、JM30、JM33、JF5、JF10 など。

84 CM11、CM13、CF3、CF28など。

85 CF23、CF20、CM18、CM2、CM3、CM36、CF37など。

38%

31%

3%

13% 15%

65%

26%

4% 3% 2%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

中国 日本

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