第 5 章 褒めの文化差およびジェンダー差
5.2 褒めの談話に見られるジェンダー差
5.2.1 中国語母語話者の談話に見られるジェンダー差
5.2.1.2 男性中国語母語話者
本節では、5つの談話例[5-8]、[5-9]、[5-10]、[5-11]、[5-12]を挙げて、褒めの談 話に見られる男性中国語母語話者の特徴を明らかにする。[5-8]は、AとBが結婚につ いて話している。
[5-8]
01 A:其实我真的觉得,其实我真的觉得就是,恋爱的人和结婚的人,不-肯定不是
(一种类型)。
本当にそう思うよ。付き合う人と結婚する人とは、違うって。
02 恋爱的话是找自己爱的人,结婚的话是找爱自己的人。
(恋愛は)自分が好きな人と付き合う(けど)、(結婚は)自分のことを好いてくれ る人と結婚する。
03 B:这-这我觉得你这,的确是个,有点富有哲理性的。
(そうね)確かに。ちょっと哲学的な話だね138 。
04 当然说两个人相互爱,就-是,当然是挺好的。
もちろんお互いに好きでいて、それが、もちろんいいけど。
05 但是就是说你没有,一般情况下,没有两个人相爱。
もしいなかったら、愛し合うなんてめったにないじゃない。
138 深い話という意味である。
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06 A:你,你很难找到就是那两个就是。
難しいね。お互い。
ここでは、Aは「付き合うことと結婚すること」について、「同じことじゃない」(L02)
と説明をはじめる。その主張に対して、B はまず「そうね」、「確かに」、「哲学的な話だ ね(深い話だね)」と共感を示した。その後、さらに「お互いのことが好きで」(L05)い ることが望ましいという自分の本当の意見を補足し、自分の立場を重視している様子が 窺われる。相手の発言に対して共感を示し、お互いを認め合うことで良好な関係をさら に深めるやり取りである。
[5-9]は、AとBがあるテレビ番組の進め方や方言について話している。
[5-9]
01 B:这一点特别重要,//我觉得,就是你看节目来讲,首先是语言你的接受它。//。
特に大事なのは、//思うと、すべての番組は、まずその言葉を受け入れな
いと//。
02 A: //嗯。
//そうね。
03 //对对对。
//そうそうそう。
04 啊对对对。这倒是。
そうそうそう。確かに。
05 B:你你你你不是说你站那试试。
そこ(テレビの前)に立ってみてごらん。
06 除非你喜欢他那不算说这。
このアナウンサーのことが好きだという場合は別だけど。
01 这个偶像我就是喜欢他不说话站在那我也喜欢这刨去以外,还说你接受//一节目
来讲我觉得。
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このアイドル139 のことが好きで、その人が何もしゃべらなくてもそこに立って
くれるだけで好きだという場合じゃなければ。番組を受け入れる//という点から みれば(まずその言葉を受け入れないと)。
08 A: //嗯对。
//そうそう。
09 有道理有道理。
(あなたの言うことは)理にかなっている。理にかなっている。
10 //对对对。
//そうそうそう。
11 B:啊,除非就是说你比如你真是一南方来的。
(例えば)南の地方から来たとすると。
12 A:嗯。
うん。
13 B:他你看那首都经济报告//你还真理解不了,理解不了。
首都経済報告140 //を見ても、たぶんわからない、わからないと思う。
14 A: //嗯,对对对。
//うん。そうそうそう。
15 而且他倒反而觉得有点别扭。
ちょっと慣れないかもしれない。
L01で、Bは「すべての番組は、その言葉を受け入れないと」と自分の主張を伝えている。
その後のAとBとのやり取りでも、Bはその点を中心に話を進めている。一方、Aは、
L02 から L08 かけて、「そうそうそう」(L03)、「確かに」(L04)、「理にかなっている」
(L08)、「首都経済報告をみても」わからない(L13)、という返答でBの主張を支持し ていることがわかる。
このやり取りでは重複が何箇所も観察された点が注目される。L07 では、B は「この 番組を受け入れる(という点から)」のところで、Aは最後まで待たずに「そうそう」(L08)、
「理にかなっている」(L09)を言い始め、その発話を重複させた。この重複の背景にあ
139 アナウンサーのことである。
140 番組の名前である。
141
るのは、すなわち「相手との心理的距離を縮め、仲間意識を高めたい」という気持ちの 表れ(林, 2008:236)と見られる。つまり、自分の主張を示すのではなく、積極的に「そ う」(L08)、「あなたの言う通りだ」(L09)というコメントを打つことで、話し手 B の 主張を支持しているというメッセージを伝え、聞き手を安心させて談話を発展させると いうAの配慮が窺われる。このような配慮は、L10、L14など数カ所にも見られる。
[5-10]は、男性同士が子供の成績について雑談している。
[5-10]
01 3CMB:他,始终保持几门儿,不要补太多。
幾つか科目を(塾で)受講している。(科目が)多すぎでもだめだから。
02 3CMA:啊。
ほお。
03 3CMB:反正始终保持有几门儿补。
まあ、幾つかの科目(塾通いをしている)。
04 3CMA:啊,他成绩是一直挺好哈。
(息子さん)成績はずっといいだろ。
05 3CMB:还行。
まあまあ。
06 3CMA:那到时候考,考一高中应该是问题不大了。
じゃ、第一高校(に合格するの)も平気だね。
07 3CMB:还可以,始终能站住脚就行。
まあ、このままいけばね。
冒頭で3CMBは息子の塾の話題を導入し、それを聞いた3CMAは、塾に通っているか ら「成績はずっといいだろ」(L04)と褒めている。さらに、その回答「まあまあ」(L05)
から3CMBの謙遜している様子を見て、3CMAは「第一高校(に合格するの)も平気」
だろうと再度褒めている。謙遜と思われるこの表現が、次の褒めを誘発する要因の1つ だと考えられる。
[5-11]と[5-12]は、男性同士が昔の事や健康について雑談している。
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[5-11]
01 4CMA:实际上我原先身体很好。
昔は元気だったよ。
02 我原先是单双杠,掰腕子没有对手(啊),我两个手可以举,就是过去做的
那个老凳子,捏一个腿儿我就可以举起来,左右手全好使。
鉄棒、平行棒、腕相撲なんて、全然ライバルいなかったよ、左手も右手も。
昔の(重たい)椅子でも、1つの(椅子の)足だけを掴めば挙げられる。左 手でも右手でも。
03 4CMB:啊。
へえ。
04 4CMA:我还长跑运动员呢。
それにマラソン選手だったよ。
05 4CMB:那你这好的习惯你应该给它坚持下来啊,这都是好,好习惯。
そんないい習慣を続ければね。すべていい習慣だからね。
[5-11]は、4CMAが(元気だった)昔について具体的な例を挙げることで、4CMBの 注目を褒めの対象の自分の行動に向けさせ、褒めを誘発した(L05)。ここで注目したい のが、4CMAの昔話が4CMBの褒めを誘発するという点である。談話の冒頭から、昔は 元気だった、鉄棒、平行棒、腕相撲なんてライバルもいなかったなどの昔話を自慢して いる 4CMA は、元気だった昔の自分を認めてほしいと思い、4CMB の注目を求めてい るといえる。そのメッセージを受け取った4CMBは褒めを開始し、「すべていい習慣だ からね」という回答から、相手の言うことに支持を示し、認め合うことで、談話の展開 に協力した。
[5-12]
01 3CMB:你体重现在多少了?
体重は今どのぐらい?
02 3CMA:一百,一百四十多。
七十、七十キロ141 ぐらい。
141 中国の重量単位で1斤は0.5キロである。140斤は70キロである。
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03 3CMB:原来,我记得,感觉比原来那个,要下去点儿,是不?
前、前より、少し減った142 だろ?
04 3CMA:没有,感觉还是那么多,都是那么。
いや、(ずっと)こんな感じ、これぐらい。
05 好像能下去几斤?
なんか少しは痩せたかも。
06 原来快到一百五了,现在呢。
前は七十五キロに届きそうだった。今は…
07 3CMB:我是,一直保持这个水平。
私は、ずっとこれぐらい143 。
08 去年是一百四,今年的话,一百三十几,也差不了多少。
昨年は七十キロだった。今年は六十五キロぐらいで、あんまり変わらない。
09 3CMA:哎呀,那是可以啊。
へえ、それはいいね。
[5-12]では、冒頭で3CMAの体重を尋ねた3CMBが、3CMAの体重が減ったことに ついて「前より少し痩せた」と褒めている。その褒めに対して、L04 では、3CMA は「い や、ずっとこんな感じ」と一度否定したが、「七十五キロに届きそうだった」(L06)から
「少し痩せたかも」(L05)と述べ、前の発話を修正しようと、言い直して答えている。
その後、3CMBが「ずっとこれぐらい」(L07)と自分の体重を自らアピールしはじめ、
話題を継続させようと努力しているのがわかる。このことが、「それはいいね」(L09)
という3CMAの褒めを誘発したと考えられる。
このように、男性中国語母語話者の褒めの談話では、主に相手の変化や主張を客観的 に褒め、繰り返して褒めないという傾向にある。