2. 個々の試験結果の要約
2.12 試験1218.31(DDI-リトナビル)
外国人健康男性被験者におけるリナグリプチン
5 mg
単独での単回経口投与時との比較による,リトナビル反復経口投与時(200 mg,1日
2
回,3日間)にリナグリプチン5 mg
を併用単回経 口投与した時の相対バイオアベイラビリティを検討するための,非盲検,ランダム化,2期ク ロスオーバー試験参照: 試験
1218.31[CTD 5.3.3.4-7]
目的: リナグリプチンの薬物動態に対する
P-糖蛋白および CYP3A4
の阻害剤であるリトナ ビルの影響を検討すること。方法:
12
例の外国人健康男性被験者を対象として,非盲検,ランダム化,2期クロスオーバーデザイ ンにより,試験を実施した。試験投与期には200 mg
リトナビル1
日2
回を3
日間(リナグリ プチン投与1
日前~2日目)にわたって投与し,1日目にリナグリプチン5 mg
を単回併用投与 した。対照投与期には,リナグリプチン5 mg
の単回投与のみを行った。各投与期の間には少 なくとも35
日間のウォッシュアウト期間を設けた。リナグリプチンおよびCD 1790
濃度測定 用にリナグリプチン投与後96
時間目まで採血し,リナグリプチン投与後24
時間にわたって尿 を採取した。このほかにもリナグリプチン投与1
日目~4日目にリトナビル濃度測定用の採血 を行い,リトナビルの曝露が十分であることを確認した。リナグリプチンのAUC
0-24およびC
max を主要評価項目として評価した。対数変換したこれらのパラメータに対して,投与順序,被験 者(順序内),時期および薬剤を含むモデルを用いた分散分析(ANOVA)を行った。幾何平均 値の比および90%信頼区間を ANOVA
における残差に基づいて算出した。その他のパラメータ について記述統計量を計算した。結果:
リナグリプチン投与
1
日目(リトナビル投与2
日目,併用投与)のリトナビル投与2
時間後の リトナビルの血漿中濃度は3580 ng/mL
であり,P-糖蛋白およびCYP 3A4
を阻害するのに十分 な濃度であると考えられた。リナグリプチン
5 mg
単独投与後のリナグリプチンのC
maxの幾何平均値は9.10 nM
であり,そ の範囲は5.10~22.1 nM
であった。投与から約1.5
時間後に最高濃度に到達した。AUC0-24の幾 何平均値は122 nM·h
であった。これらの結果は,これまでに得られているリナグリプチン5 mg
単回経口投与後の結果と一致した。リナグリプチンの一部が,薬理活性をもたない代謝物であ るCD 1790
へCYP3A4
により代謝され,リナグリプチンの曝露に対するCD 1790
の曝露は10%
未満であった。
リトナビルと併用した場合,リナグリプチンは単独投与時よりやや早く
C
maxに達し,t
maxは1.00
時間であった。またC
maxは併用により約3
倍に上昇して幾何平均値が26.9 nM
となり,その範囲は
12.6~62.1 nM
であった。リナグリプチン単独投与時と比較してリトナビル併用時のAUC
0-24は約2
倍高かった(単独投与時:122 nM·h,併用投与時:246 nM·h)。このようにP-糖
蛋白およびCYP3A4
を阻害することで,CmaxおよびAUC
がいずれも上昇した。リトナビル併 用時および非併用時の濃度-時間推移を比較した結果,リナグリプチンの分布相および排泄相に 対するリトナビルの影響はほとんどないと考えられた。終末相における半減期(t1/2)に変化は なかった(リナグリプチン単独投与時63.2
時間,リトナビル併用時66.5
時間)。約200
時間と いうt
1/2が得られている他の試験に比べてt
1/2の値が短かったが,このことは終末相における半 減期がサンプル採取期間に依存し,本試験ではこのサンプル採取期間が96
時間後までと短かっ たためであると考えられた。投与24
時間後の血漿中濃度は,リナグリプチン単独投与と比較し てリトナビル併用投与で51%高かった。
代謝物
CD 1790
の生成は,リトナビル併用によりほぼ完全に抑制され,この結果から,CYP3A4
が阻害されたこと,また主な代謝物である
CD 1790
の生成にCYP3A4
が関与していることを示したin vitroでの試験結果[CTD 5.3.2.2-1,U -2525-02]が確認された。
リトナビル併用時および非併用時のリナグリプチンの定常状態での血漿中濃度のシミュレーシ ョンにより,定常状態に達するまでの時間は併用の影響を受けないこと,および蓄積に伴う曝 露の上昇はないと予測された。リトナビル併用投与時および非併用投与時のリナグリプチン
5 mg
の累積係数の予測値は,それぞれ1.2
倍および1.13
倍であった。実際にみられたリトナビ ルの併用によるリナグリプチンの曝露に対する影響は,母集団薬物動態解析の最終モデルから,見かけのクリアランスの若干の低下(−16%)および吸収ラグタイムのわずかな短縮を伴う絶対 バイオアベイラビリティの約
4
倍の上昇として最も良く説明できると考えられた。尿中排泄率は,リナグリプチン単独投与後の
0.5%未満から,リトナビル併用時には 12.2%へと
上昇した。リナグリプチンの腎排泄は,非結合型リナグリプチンの血漿中濃度依存的であると 考えられている。このため尿中排泄率の上昇は,主にリナグリプチンの血漿中濃度の上昇によ り説明できると考えられる。主な薬物動態パラメータの記述統計量(幾何平均値および幾何変動係数)ならびに
ANOVA
の 結果を表2.12: 1
および2
に示す。リトナビルによりリナグリプチンの代謝が阻害されたため,併用投与時の
CD 1790
の薬物動態 パラメータは算出できなかった。表2.12: 1 リナグリプチンの単独投与またはリトナビルとの併用投与時のリナグリプ チン経口投与後の主な薬物動態パラメータ
併用投与
(N=12)
単独投与
(N=12)
測定対象物質 リナグリプチン リナグリプチン CD1790 gMean gCV [%] gMean gCV [%] gMean gCV [%]
AUC0-24 [nM·h] 246 28.6 122 26.1 12.0 50.3
AUC0-∞ [nM·h] 796 23.8 473 23.4 15.5 44.2
Cmax[nM] 26.9 50.2 9.10 41.0 1.92 72.0
C24 [h] 6.44 23.3 4.26 20.7 NC
tmaxa [h] 1.00 0.50 - 2.00 1.50 1.50 - 3.00 1.75 0.98 - 3.00
t1/2[h] 66.5 26.3 63.2 12.5 13.3 26.9
MRTpo[h] 84.6 27.3 87.0 14.3 15.2 33.0
CL/F [mL/min] 221 23.8 373 23.4 NC
Vz/F [L] 1270 27.5 2040 26.2 NC
fe0-24 [%] 12.2 45.3 0.474 160 NC
CLR,0-24 [mL/min] 87.4 18.6 6.85 118 NC
NC=Not calculated
a) tmaxは中央値および範囲(最小値-最大値)を示す。
引用元:CTD 5.3.3.4-7,試験1218.31,Table 11.5.2.2: 1より作成
表2.12: 2 リナグリプチンの単独投与時またはリトナビルとの併用投与時のリナグリ
プチンの薬物動態パラメータのANOVA結果
パラメータ N Test Reference 個体内
gCV
(%)
幾何平均値の 比(%)
(Test/Reference)
両側90%信頼区間 下限値
(%)
上限値
(%)
AUC0-24 12 リトナビル併用 リナグリプチン単独 10.9 201.4 185.8 218.3 Cmax 12 リトナビル併用 リナグリプチン単独 21.9 295.7 252.0 347.0 引用元:CTD 5.3.3.4-7,試験1218.31,Table 11.5.2.3: 1より作成
結論:
P-糖蛋白および CYP3A4
の強力な阻害剤であるリトナビルとの併用投与後に,リナグリプチンの
C
maxおよびAUC
が上昇した。リナグリプチン5 mg
単回投与後のリナグリプチンのC
maxは,単独投与時の
9.10 nM
からリトナビル併用投与時には26.9 nM
へと上昇した(幾何平均値比の295.7%, 90%信頼区間 252.0~347.0%)。 t
maxの中央値は単独投与時の1.5
時間から併用投与時に は1.0
時間へとやや短縮した。リナグリプチンのAUC
0-24は,リトナビルと併用投与すると122 nM·h
から246 nM·h
へと増加した(幾何平均値の比201.4%,90%信頼区間 185.8~218.3%)。
AUC
0-24およびC
maxの個体内変動は小さく,個体内幾何変動係数はそれぞれ10.9%および 21.9%
であった。リナグリプチンの分布相および排泄相に対するリトナビルの併用の影響はほとんど なく,終末相における半減期は変化しなかった。母集団薬物動態解析モデルに基づくシミュレ ーションによって,曝露の上昇が主としてバイオアベイラビリティの上昇で説明できることが 示唆され,曝露の上昇に伴う蓄積の上昇はないと予測された。現在得られている前臨床および 臨床試験の結果から,リナグリプチンの安全域は広いと考えられる。したがって
P-糖蛋白およ
び
CYP3A4
の強力な阻害剤であるリトナビルの併用による約2
倍の曝露の増加は,患者の安全性に対して臨床的意味を持つものではないと判断される。