2. 個々の試験結果の要約
2.6 試験1218.26(腎機能障害患者)
外国人腎機能正常被験者との比較による,腎機能障害の程度が異なる患者(外国人)における
5 mg
のリナグリプチン錠剤の単回投与時および反復投与時の薬物動態,薬力学,安全性および 忍容性を検討するための単施設,非盲検,並行群間比較試験参照先: 試験
1218.26[CTD 5.3.3.3-1]
目的:
腎機能障害の程度が,リナグリプチン経口投与時の安全性,薬物動態および薬力学に与える影 響の検討
方法:
24
例の腎機能障害患者ならびに年齢,体重,および性別を腎機能障害患者と合わせた6
例の腎 機能正常被験者を対象として,非盲検,並行群間比較,単回または反復投与デザインによる単 施設試験を実施した。Cockroft-Gault
式で推定したクレアチニンクリアランスによって分類した 各腎機能障害群に,それぞれ6
例の患者を組み入れた(軽度腎機能障害:クレアチニンクリア ランス >50~≤80 mL/min;中等度腎機能障害:クレアチニンクリアランス >30~≤50 mL/min;高度腎機能障害:クレアチニンクリアランス≤30 mL/min,
end-stage renal disease
(ESRD)患者:透析患者)。健康被験者ならびに軽度および中等度の腎機能障害患者には
5 mg
のリナグリプチ ンを7
日間反復投与し,高度腎機能障害患者およびESRD
患者には5 mg
を単回投与した。反 復投与群では1~12
日目(1日目および7
日目は頻回採血),高度腎機能障害患者では単回投与 後1~6
日目に,リナグリプチン,CD 1790およびDPP-4
活性測定用に採血した。反復投与群 では1
日目から9
日目,単回投与群では投与24
時間後まで尿検体を採取した。軽度および中等 度の腎機能障害患者ではAUC
τ,ssおよびC
max,ssに基づいて健康被験者に対する相対バイオアベ イラビリティを求め,高度腎機能障害患者およびESRD
患者ではAUC
0-∞およびC
maxに基づい て健康被験者に対する相対バイオアベイラビリティを求めた。さらに,全投与群の単回および 反復投与後のデータを用いて,糖尿病患者の薬物動態データに基づいて作成した母集団薬物動 態解析モデルを最適化し,この最適化したモデルを用いて高度腎機能障害患者およびESRD
患 者における定常状態の薬物動態の予測を行う計画であった。しかしながら得られたデータから は中等度の腎機能障害患者での定常状態の曝露を精度良く予測できなかったため,高度腎機能 障害患者およびESRD
患者における母集団薬物動態解析モデルに基づく定常状態の薬物動態の 予測は行わなかった。中等度の腎機能障害患者へのリナグリプチンの反復投与後の曝露の増加は中程度であったため,
プロトコールを改訂して
12
例の高度腎機能障害患者における定常状態曝露を検討することと した。しかしながら,患者のリクルートが困難であったため,実際に臨床試験の対象となった のは,高度腎機能障害を有する患者10
例と腎機能正常な患者(対照群)11例であった。本試 験のプロトコール改訂前部分の結果から,併用薬および合併症が薬物動態に対して影響を及ぼ す可能性が示唆された。このため,2型糖尿病患者のみを対象とした追加投与群(対照群を含 む)を設けた。腎機能正常の2
型糖尿病患者は,年齢,体重および性別を高度腎機能障害患者と合わせた。両群とも
5 mg
のリナグリプチンを1
日1
回10
日間投与した。1~16日目にリナ グリプチン,CD 1790
およびDPP-4
活性の測定用に採血した(1日目および10
日目は頻回採血)。初回投与前に採取したブランク血漿検体を使用して,リナグリプチンおよび
CD 1790
のin vitro における血漿蛋白結合に対する腎機能障害の影響を明らかにした(試験のプロトコール改訂前 のみ実施)。AUC0-24,Cmax,AUCτ,ss,Cmax,ssについてANOVA
により評価した。他のすべての薬 物動態および薬力学パラメータについて記述統計量を算出した。結果:
薬物動態(主要評価項目):軽度腎機能障害患者の定常状態の曝露は健康被験者と同程度であっ た(AUCτ,ssの幾何平均値の比
107.9%;90%信頼区間 90.8~128.3%,C
max,ssの幾何平均値の比97.7%;90%信頼区間 70.2~138.9%)。中等度の腎機能障害患者は健康被験者と比較して AUC
τ,ssは
71%, C
max,ssは46%高かった(AUC
τ,ssの幾何平均値の比170.8%
;90%信頼区間 134.1~217.7%,
C
max,ssの幾何平均値の比146.2%
;90%信頼区間 97.6~218.9%)。中等度の腎機能障害患者におけ
る
AUC
τ,ssおよびC
max,ssは健康被験者や軽度腎機能障害患者に比べて高い傾向を示していたが,個々の
AUC
τ,ssおよびC
max,ssの値の分布は健康被験者や軽度腎機能障害患者の個々の値の分布と大部分が重なっていた。
リナグリプチン単回投与後の高度腎機能障害患者または
ESRD
患者における曝露は,健康被験 者と比較して約41~57%高かった(高度腎機能障害では AUC
0-24の幾何平均値の比140.6%
;90%
信頼区間
103.9~190.5%,C
maxの幾何平均値の比147.2%;90%信頼区間 83.2~260.7%,ESRD
患者ではAUC
0-24の幾何平均値の比153.7%
;90%信頼区間 117.9~200.4%, C
maxの幾何平均値の比
150.2%;90%信頼区間 93.5~241.4%)。これらの結果は,軽度および中等度の腎機能障害患
者における単回投与後の曝露の信頼区間の幅と同程度であり,腎機能障害の程度との相関はみ られなかった。
高度腎機能障害を有する
2
型糖尿病患者の定常状態の曝露は腎機能正常対照2
型糖尿病患者と 比べて約40%高かった(AUC
τ,ssの幾何平均値の比141.8%
;90%信頼区間 110.4~182.1%, C
max,ss の幾何平均値の比135.6%;90%信頼区間 96.6~190.1%)。
腎機能障害の程度と定常状態の曝露との間の相関は明確ではなかった(図
2.6: 1)。
引用元:CTD 5.3.3.3-1,試験1218.26,Figure 11.5.2.2: 4より作成
図2.6: 1 健康被験者,軽度または中等度の腎機能障害患者,腎機能正常対照2型糖尿
病患者および高度腎機能障害を有する2型糖尿病患者に対して5 mg反復投 与後のリナグリプチンの定常状態の AUC とクレアチニンクリアランスとの 相関
副次評価項目:プロトコールの改訂前部分の全腎機能障害患者群で,リナグリプチン
5 mg
単 回投与後の曝露は健康被験者群に対して126~157%(AUC
およびC
maxの幾何平均値の比)で あった。腎機能障害の程度が高度になるにつれて曝露量が高くなるという傾向はみられなかっ た。軽度および中等度の腎機能障害患者での反復投与後の終末相における半減期,累積係数か ら算出した半減期(accumulation t1/2)および累積係数は健康被験者と同程度であったことから,腎クリアランスの低下によって曝露が上昇した可能性は低いと考えられた。
中等度腎機能障害患者および高度腎機能障害を有する
2
型糖尿病患者から得られたAUC
0-24とAUC
τ,ss(対数変換値)の間の回帰直線を求め,その回帰直線を用いて高度腎機能障害患者およ びESRD
患者のAUC
0-24の値からAUC
τ,ssを予測した。その結果,ESRD患者のAUC
τ,ssの予測 値(幾何平均値:291 nM·h)は軽度,中等度および高度の腎機能障害患者と同程度であること が示唆された。最も曝露が上昇すると予測されたESRD
患者の定常状態の曝露の上昇は2
倍未 満であった(腎機能正常対照2
型糖尿病患者の1.6
倍未満,健康被験者の1.9
倍未満)(CTD5.3.3.3-1,試験 1218.26,Table 11.5.2.3: 3)。
高度腎機能障害を有する
2
型糖尿病患者におけるリナグリプチン5 mg
単回投与後のC
maxおよ びAUC
0-24は腎機能正常対照2
型糖尿病患者よりやや高い傾向を示した(約1.2
倍)。累積係数 から算出した半減期(accumulation t1/2)および累積係数は両群で同程度であったことから,腎Linagliptin AUCτ,ss [nM·h]
機能の低下に伴ってリナグリプチンのクリアランスはほとんど影響を受けないことが示唆され た。
単回投与後および反復投与後のリナグリプチンの腎クリアランスおよび尿中排泄率は腎機能障 害の程度によらず全群で低かった(投与量の
7%未満)。リナグリプチンの腎クリアランスは予
想どおりクレアチニンクリアランスと相関した(図2.6: 2)。
引用元:CTD 5.3.3.3-1,試験1218.26,Figure 11.5.2.2: 3より作成
図2.6: 2 健康被験者,軽度または中等度の腎機能障害患者,腎機能正常対照2型糖尿
病患者および高度腎機能障害を有する2型糖尿病患者に対して5 mg反復投 与後のリナグリプチンの定常状態のCLR,ssとクレアチニンクリアランスとの 相関
リナグリプチンの主な代謝物である
CD 1790
の生成に関して,親化合物に対する代謝物のAUC
比は,単回投与時,反復投与時のいずれの場合でも,腎機能障害患者と健康被験者とで同程度 であり,代謝物の生成率の明らかな減少は認められなかった。CD 1790の尿中排泄率はごくわ ずかであり,単回投与時,反復投与時のいずれの場合でも,リナグリプチンの投与量の1%未
満であった。リナグリプチンの蛋白結合率を健康被験者と
ESRD
患者で測定したところ腎機能の程度による 影響は認められなかった。検討した全群の定常状態におけるリナグリプチンの主な薬物動態パラメータおよび統計解析結 果を表
2.6: 1
および2
にまとめる。Linagliptin CLR,ss [mL/min]