2. 個々の試験結果の要約
2.7 試験1218.27(肝機能障害患者)
程度の異なる肝機能障害(Child Pugh分類
A~C)を伴った男女外国人と健康被験者との比較に
より,リナグリプチン5 mg 1
日1
回単回または反復投与時の薬物動態および薬力学を検討する 非盲検,並行群間比較試験参照先: 試験
1218.27[CTD 5.3.3.3-2]
目的:
軽度,中等度,または高度肝機能障害患者および健康被験者にリナグリプチン
5 mg
を単回ま たは反復経口投与したときの薬物動態および薬力学の検討方法:
25
例の肝機能障害患者および年齢,体重,および性別を肝機能障害患者と合わせた肝機能が正 常な8
例の被験者を対象とした,単回または反復投与,非盲検,並行群間比較デザインによる,単施設試験を実施した。各肝機能障害患者群には,Child Pugh分類に従って
8
例(中等度の肝 機能障害患者群は9
例)の患者(男性および女性が各3
例以上)を組入れた(軽度障害:ChildPugh
スコア6;中等度障害:Child Pugh
スコア7~9;高度障害:Child Pugh
スコア10~15)。
健康被験者ならびに軽度および中等度肝機能障害患者にはリナグリプチン
5 mg
を1
日1
回7
日間投与し,高度肝機能障害患者群には5 mg
を単回投与した。反復投与群では1~12
日目(1 日目および7
日目は頻回採血),高度肝機能障害患者では単回投与後1~6
日目に,リナグリプ チン,CD 1790およびDPP-4
活性測定用に採血した。同様に反復投与群では1~9
日目,高度 肝機能障害患者では1~3
日目に尿を採取した。基本的に軽度および中等度肝機能障害患者ではAUC
τ,ssおよびC
max,ssに基づいて対照群に対する相対バイオアベイラビリティを求め,高度肝機能障害患者では
AUC
0-24およびC
maxに基づいて相対バイオアベイラビリティを求めた。さらにDPP-4
に対するリナグリプチンの濃度依存的な結合を考慮して以前に作成した母集団薬物動態解析モデルを,全群の単回投与および反復投与データに対して最適化した後,そのモデルを用 いて高度肝機能障害患者における定常状態の薬物動態の予測を行った。初回投与前に採取した ブランク血漿を用いて,in vitroでのリナグリプチンおよび
CD 1790
の血漿蛋白結合に対する肝 機能障害の影響を検討した。AUC0-24,Cmax,AUCτ,ssおよびC
max,ssをANOVA
により評価した。薬物動態および薬力学パラメータについて記述統計量を算出した。
結果:薬物動態:リナグリプチン
5 mg
の単回投与後のリナグリプチンの曝露は全肝機能障害 患者群とも同程度であり,肝機能の低下に伴って曝露が増加する傾向はみられなかった。程度 の異なる肝機能障害患者におけるリナグリプチンの曝露は,健康被験者よりも低い(AUC0-24は最大
22%,C
maxは最大31%)傾向がみられた。反復投与後の薬物動態特性は,健康被験者と
軽度または中等度肝機能障害患者との間で同様であった。特にリナグリプチンの排泄過程に対 する影響を反映すると考えられるパラメータである,累積係数から算出した半減期
(accumulation t1/2)および累積係数は,各群とも同程度であった。
軽度肝機能障害患者におけるリナグリプチンの定常状態における曝露(AUCτ,ss)は健康被験者 より約
25%低く(幾何平均値の比 75.5%,90%信頼区間:61.6~92.5%),C
max,ssは約36%低かっ
た(幾何平均値の比64.4%, 90%信頼区間:43.2~96.0%)。中等度肝機能障害患者におけるリナ
グリプチンのAUC
τ,ssは健康被験者より約15%低く(幾何平均値の比 85.5%, 90%信頼区間: 70.2
~104.2%),Cmax,ssは約
8%低かった(幾何平均値の比 92.3%,90%信頼区間:62.8~135.6%)。
高度肝機能障害患者におけるリナグリプチンの
AUC
0-24は健康被験者と同程度であり(幾何平 均値の比100.4%,90%信頼区間:75.0~134.3%),C
maxの値は約23%低かった(幾何平均値の
比77.0%,90%信頼区間:44.9~132.3%)。
その他の定常状態における薬物動態パラメータは全群を通して大きな違いはみられなかった。
高度肝機能障害患者の定常状態プロファイルの母集団薬物動態解析モデルに基づく予測からは,
健康被験者ならびに軽度および中等度肝機能障害患者と比較して,反復投与による曝露の増加 はみられなかった。高度肝機能障害患者での定常状態における曝露の予測値は,軽度および中 等度肝機能障害患者での曝露の実測値と同程度であった。
主な薬物動態パラメータを表
2.7: 1
に示す。表2.7: 1 肝機能障害患者または健康被験者にリナグリプチン5 mgの単回または反復
経口投与後のリナグリプチンの主な薬物動態パラメータ
リナグリプチン 健康被験者
(N=8)
軽度肝機能 障害患者
(N=8)
中等度肝機能 障害患者
(N=9)
高度肝機能 障害患者b)
(N=8) パラメータ
[単位] gMean gCV% gMean gCV% gMean gCV% gMean gCV%
AUCτ,ss[nM·h] 254 18.9 191 27.2 217 26.0 190
(233)
39.4 (33)
Cmax,ss[nM] 20.8 38.6 13.4 55.8 19.2 52.5 13.3
(19)
77.8 (67)
tmax,ss a) [h] 1.50 0.500-
2.00 1.00 0.500-
3.00 0.625 0.250-
2.00 0.875 0.500- 6.00
t1/2,ss[h] 77.7 32.6 95.0 18.0 96.1 54.7 124 61.2
Accumulation t1/2 [h] 10.9 66.2 8.11 c) 86.8 13.1 61.7 NC
Vz/F,ss[L] 4680 35.7 7580 38.4 6760 65.3 1730 33.4
CL/F,ss[mL/min] 696 18.9 922 27.2 813 26.0 161 38.5
fe0-24,ss[%] 7.12 50.3 4.84 c) 57.8 6.13 51.2 0.923 c) 275
RA,Cmax 1.20 53.9 1.22 c) 64.3 1.53 65.8 NC
RA,AUC 1.34 22.2 1.25 c) 23.9 1.46 28.4 NC
NC=Not calculated
a)tmax,ssは中央値および範囲(最小値-最大値)を示す。
b)高度肝機能障害患者群については単回投与のパラメータを示す。括弧内にモデルに基づく定常状態のパラ メータの予測値を示す。
c)N=7
引用元:CTD 5.3.3.3-2,試験1218.27,Table 11.5.2.2.1: 2,11.5.2.4: 3,15.6.2.1: 4より作成
肝機能障害の程度が高くなっても代謝物である
CD 1790
の生成の低下はわずかであり,リナグ リプチンの消失過程における代謝の役割は重要ではないことが示唆された。軽度および中等度 肝機能障害患者ならびに健康被験者の定常状態のトラフ時における血漿中DPP-4
阻害率の中央値は
80%を上回っていた(それぞれ 90.4%,88.7%,および 90.6%)。高度肝機能障害患者につ
いては,初回投与
24
時間後のDPP-4
阻害率は80%を上回っていた(84.1%)。
トラフ時
DPP-4
阻害率の中央値を表2.7: 2
にまとめる。表2.7: 2 肝機能障害患者または健康被験者にリナグリプチン5 mg単回または反復経
口投与後のDPP-4阻害率
DPP-4阻害率
健康 対照被験者
(N=8)
軽度肝機能 障害患者
(N=8)
中等度肝機能 障害患者
(N=9)
高度肝機能 障害患者b)
(N=8) パラメータ
[単位]
中央値 (範囲)
中央値 (範囲)
中央値 (範囲)
中央値 (範囲)
E24,ssa)[%] 90.6
(85.5 – 93.8) 90.4
(83.0 -92.8) 88.7
(71.2 – 93.6) 84.1 (59.3 - 92.0) a)高度肝機能障害患者についてはE24を示す。
引用元:CTD 5.3.3.3-2,試験1218.27,Table 15.7.1.1: 9-12より作成
肝機能の低下によるリナグリプチンの血漿蛋白結合率の変化はみられなかった[CTD 5.3.2.3-4,
U -2250-01]。
結論:
単回投与後の肝機能障害患者におけるリナグリプチンの曝露は健康被験者よりやや低かったが
(AUC0-24は最大
22%,C
maxは最大31%),肝機能の低下に伴う曝露の増加はみられなかった。
軽度および中等度肝機能障害患者では定常状態における曝露(AUCτ,ssおよび