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3. 全試験を通しての結果の比較と解析

3.3 内因性要因および特別な集団

3.3.1

年齢,BMI,体重および性別

母集団薬物動態解析において,年齢,

BMI,体重および性別の影響を評価した[CTD 5.3.3.5-1,

U -1535-01]。解析には 302

例の男性患者および

160

例の女性患者からのデータを用いた。年

齢は

30~78

歳,体重は

57~132 kg,BMI

20.4~42.2 kg/m

2であった。年齢,体重および性別 は,統計学的に有意な共変量であった。シミュレーションの結果から得られたこれらの個々の 共変量が曝露に与える影響(データセットの

5

パーセンタイルおよび

95

パーセンタイルの共変 量の影響)は−8.7%~6.8%であった。これらの個々の共変量による影響は,生物学的同等性の 基準の範囲内であり,臨床的に問題となる影響はないと考えられた。BMIは体重と高い相関を 示すが,視覚的な検討からは,リナグリプチンの曝露に対する

BMI

の明らかな影響は認められ なかった(2.22項参照)。以上から,年齢,

BMI,体重および性別の内因性要因に基づく用量調

節は不要であると考えられる。リナグリプチン投与の効果が,年齢,BMIおよび性別の影響を 受けないことは,主たる有効性検討試験の統合データに基づく層別解析でも確認された[CTD

2.7.3,3.3

項]。

3.3.2

肝機能障害

試験

1218.27[CTD 5.3.3.3-2]において,様々な程度の肝機能障害が単回投与時(対照被験者,

軽度,中等度および高度肝機能障害患者で検討)の薬物動態および薬力学,または反復投与時

(対照被験者,軽度および中等度肝機能障害患者で検討)の薬物動態および薬力学に及ぼす影 響を検討した。試験には軽度(Child Pughスコア:6ポイント),中等度(Child Pughスコア:7

~9ポイント)および高度(Child Pughスコア:10~15ポイント)の肝機能障害患者を組み入 れ,年齢,体重および性別を合わせた健康被験者と比較した。リナグリプチン単回投与後の様々 な程度の肝機能障害患者におけるリナグリプチンの曝露は,健康被験者よりやや低く,肝機能 の低下による曝露の上昇はみられなかった。軽度肝機能障害患者では定常状態での曝露

(AUCτ,ssおよび

C

max,ss)は健康被験者と比較して約

25%および 36%低く,中等度肝機能障害患

者では約

14%および 8%低かった。高度肝機能障害患者の定常状態での薬物動態パラメータを

予測したところ,反復投与時の曝露の上昇は示唆されなかった。高度肝機能障害患者での曝露 の予測値は,軽度および中等度肝機能障害患者で認められた曝露とほぼ同程度であった。健康 被験者と比較してすべての肝機能障害患者群で曝露がやや低下したが,DPP-4阻害率に対する 影響はみられず,健康被験者,軽度肝機能障害患者および中等度肝機能障害患者における定常 状態でのトラフ時の

DPP-4

阻害率の中央値はいずれも

80%を上回っていた(それぞれ 90.6%,

90.4%および 88.7%)。高度肝機能障害患者では,単回投与 24

時間後の血漿中

DPP-4

阻害率の

中央値は既に

80%を上回っていた(84.1%)。試験 1218.27

の結果から,肝機能障害患者に対し てリナグリプチンを投与した時,安全性の懸念はなく,肝機能正常な患者と同程度の有効性が 得られると考えられた。第

III

相試験データを用いた層別解析結果からも,肝機能障害患者で の安全性の懸念事項は示されなかった[CTD 2.7.4,5項]。さらに,母集団薬物動態解析にお

いて,肝機能障害の指標となる肝酵素(ALT,AST,GGT)の影響を検討した結果,リナグリ プチンの曝露に対する臨床的に問題となる影響はないことが示された。

試験

1218.27

の肝機能障害患者の血漿検体において,リナグリプチンの蛋白結合は肝機能の低

下によって変化しなかった[CTD 5.3.2.1-4,U -2250-01]。

したがって現在得られているデータからは,いずれの重症度の肝機能障害患者においてもリナ グリプチンの用量調節は不要であると考えられる。

3.3.3

腎機能障害

試験

1218.26

[CTD 5.3.3.3-1]において,様々な程度の腎機能障害がリナグリプチンの薬物動態

および薬力学に及ぼす影響を評価した。まず,各

6

例の軽度,中等度もしくは高度腎機能障害 患者または

ESRD

患者における薬物動態および薬力学を,年齢,体重および性別を合わせた健 康被験者と比較した。軽度および中等度腎機能障害においては反復投与を行ったが,高度腎機 能障害および

ESRD

患者にはリナグリプチン単回投与のみを行った。また,これとは別に高度 腎機能障害を有する

2

型糖尿病患者

10

例の単回投与時および反復投与時の薬物動態を,腎機能 正常の

2

型糖尿病患者

11

例と比較した(10例の患者は年齢,体重および性別を高度腎機能障 害を有する

2

型糖尿病患者と合わせた)。

リナグリプチンを単回投与した際,いずれの程度の腎機能障害患者群においても曝露は同程度 であり,腎機能の低下に伴うリナグリプチン曝露の上昇はみられなかった。健康被験者と比較 した場合,腎機能障害患者群では

26%~57%の曝露の上昇が認められたが,この程度の差は,

種々の試験間でみられた変動の範囲内であった(3.2.3項参照)。定常状態での,軽度腎機能障 害患者のリナグリプチンの曝露は健康対照被験者と同程度であった(AUCτ,ss:健康被験者

154

nM·h,軽度腎機能障害患者 166 nM·h)。中等度腎機能障害では,健康被験者と比較して約 71%

の曝露の上昇(AUCτ,ss:263 nM·h)が認められた。これに伴う累積係数から算出した半減期も しくは終末相における半減期の対照からの延長,および累積係数の上昇はみられなかったこと から,リナグリプチンのクリアランスに対して中等度腎機能障害はほとんど影響しないと考え られた。高度腎機能障害患者での定常状態での曝露データは得られなかったので,この時点で は薬物動態に及ぼす腎機能の影響について結論を下すことはできなかった。このため試験

1218.26

のプロトコールを改訂して,高度腎機能障害を有する

10

例の

2

型糖尿病患者を対象と

して,高度腎機能障害患者におけるリナグリプチンの定常状態での曝露に対する影響を検討し た。併用薬および疾患の影響をなるべく除くため,正常腎機能の

2

型糖尿病患者

11

例を対照患 者とした。これら高度腎機能障害を有する

2

型糖尿病患者における曝露は,腎機能正常の

2

型 糖尿病患者と比較して

42%上昇した(AUC

τ,ss:腎機能正常

185 nM·h,高度腎機能障害患者 262 nM·h)。累積係数から算出した半減期および累積係数は両患者群とも同程度であったことから,

リナグリプチンのクリアランスに対して腎機能障害は大きな影響は与えないと考えられた。

中等度および高度腎機能障害患者データを用いた定常状態での薬物動態パラメータの予測値か ら,ESRD患者の定常状態での曝露は中等度または高度腎機能障害患者と同程度であることが 示唆された。最も曝露が上昇すると予測された

ESRD

患者の定常状態での

AUC

の上昇は

2

倍 未満であった(正常腎機能の

2

型糖尿病患者の

1.6

倍未満,健康対照被験者の

1.9

倍未満)。

定常状態条件でのリナグリプチンおよび主な代謝物である

CD 1790

の尿中排泄率は,いずれの 患者群とも

7%未満であった。

試験

1218.26

の腎機能障害患者の血漿検体において,リナグリプチンの蛋白結合は腎機能の低

下によって変化しなかった[CTD 5.3.2.1-4,U -2250-01]。

以上より,様々な程度の腎機能障害患者における定常状態の曝露は健康対照被験者と比較して

1.1

倍から

1.7

倍上昇した。この上昇の理由の一部は,腎排泄の低下によるものと考えられる。

これまでに,吸収および腎以外のクリアランス(たとえば代謝酵素またはトランスポーターの 関与するクリアランス)も腎機能障害の影響を受けると考えられることが報告されている[CTD

5.4-6,P09-04157]。リナグリプチンのこれまでの試験結果からは,リナグリプチンの消失にお

いて代謝の寄与はわずかであることが示されている[CTD 5.3.3.1-2,試験

1218.7]が,高度腎

機能障害の

2

型糖尿病患者で

CD 1790

の生成の低下が認められており,リナグリプチンの曝露 が上昇する原因とも考えられる。曝露の上昇は,初回投与後数時間以内からみられており,吸 収の変化または(全身循環に到達前の)代謝の変化が寄与している可能性も考えられる。

試験

1218.26

[CTD 5.3.3.3-1]の結果は,軽度腎機能障害患者および正常腎機能の患者を組み入

れた第

IIa

相および第

IIb

相データに基づく母集団薬物動態解析の結果とも一致していた[CTD

5.3.3.5-1, U -1535-01]。母集団薬物動態解析では,腎機能の低下によるリナグリプチンの曝露

への大きな影響はみられなかった(2.23項参照)。また第

III

相試験でのリナグリプチンのトラ フ濃度の解析からも,トラフ時のリナグリプチンの血漿中濃度に対する軽度および中等度腎機 能障害の影響は小さいことが示されている[CTD 5.3.5.1-6,試験

1218.16;CTD 5.3.5.1-9,試験 1218.23]。

III

相試験データを用いた層別解析結果からも,腎機能低下患者における安全性の懸念事項 は示されず,リナグリプチンの有効性は腎機能障害による影響を受けないことが示された(正 常腎機能,軽度腎機能障害および中等度腎機能障害患者間の比較)([CTD 2.7.3,

3.3

項;

CTD 2.7.4,

5

項]も参照)。

現在の

FDA

のガイダンス[CTD 5.4-14,R07-0393;CTD 5.4-43,R10-2511]に,透析によって 除去される可能性が低い薬剤の場合は薬物動態に対する透析の影響を検討しなくても良いと記 載されていること,および以下に述べるように透析によってリナグリプチンが除去される可能 性は低いと予測されることから,in vivoでの薬物動態に対する透析の影響は検討しなかった。

3.2.3

項で述べたように,リナグリプチンは非結合型の分布容積が大きい。単回静脈内投与試験

[CTD 5.3.1.1-2,試験

1218.10]のデータを用いた母集団薬物動態解析モデルから推定された分

布容積(402.2 L)をリナグリプチンの分布容積と仮定し,血液透析による非結合型のクリアラ

ンスを

200 mL/min,透析時間を 3

時間と仮定すると,血液透析により除去されるのは,最初に

体内に存在した薬剤の

10%未満(8.95%)と考えられる。仮定した分布容積には蛋白結合は考

慮されていないので,70~80%の非特異的蛋白結合を考慮すると,血液透析により除去される 割合はさらに低下して

2%未満になる。