3. 全試験を通しての結果の比較と解析
3.4 外因性要因
3.4.1
薬物相互作用リナグリプチンのin vitro試験の結果(3.1項参照)に基づき,リナグリプチンの曝露に対する 併用薬の影響について,CYP3A4および
P-糖蛋白の強力な阻害剤であるリトナビル
[CTD 5.3.3.4-7,試験
1218.31](2.12
項参照),およびCYP3A4
およびP-糖蛋白の強力な誘導
剤であるリファンピシン[CTD 5.3.3.4-9,試験1218.67](2.13
項参照)を用いて検討した。また
P-糖蛋白の基質であるジゴキシン[CTD 5.3.3.4-5,試験 1218.29]
(2.19項参照)およびCYP3A4
の基質であるシンバスタチン[CTD 5.3.3.4-2,試験1218.9]
(2.17項参照)に対するリナグリプ チンの影響も検討した。このほかにもリナグリプチンの曝露に対する併用薬の影響およびその 併用薬に対するリナグリプチンの影響(糖尿病治療薬のみ)を検討した。検討した薬剤は,メ トホルミン[CTD 5.3.3.4-1,試験1218.4](2.14
項参照),ピオグリタゾン[CTD 5.3.3.4-3,試 験1218.13]
(2.14項参照),グリブリド(グリベンクラミド)[CTD 5.3.3.4-6,試験1218.30]
(2.15 項参照),ワルファリン[CTD 5.3.3.4-4,試験1218.28](2.17
項参照),およびエチニルエスト ラジオールとレボノルゲストレルの配合剤[CTD 5.3.3.4-8,試験1218.44](2.19
項参照)であ った。開発の早期に実施した薬物相互作用試験では,リナグリプチンの投与量として,その時点で予 測された臨床用量の最高用量である
10 mg
を使用した。リナグリプチン10 mg
による影響は,リナグリプチン
5 mg
による影響と少なくとも同等以上と予想されるので,リナグリプチン10 mg
で実施した薬物相互作用試験の結果は5 mg
を併用した場合にも適応できると考えられる。またリナグリプチン
10 mg
を投与したとき,トランスポーターまたはチトクロムP450
との相 互作用を受けやすい非結合型のリナグリプチン濃度が大きく上昇するので,リナグリプチン10 mg
投与により実施した薬物相互作用試験ではリナグリプチンに対する他の薬剤の影響をより 高感度に検出できると考えられる。リナグリプチンは
P-糖蛋白の基質であることが明らかにされており(3.1
項参照),リナグリプ チンの薬理活性を持たない主な代謝物であるCD 1790
は,主にCYP3A4
によって生成すると考 えられている。このためP-糖蛋白および CYP3A4
の強力な阻害剤および強力な誘導剤の併用に よる薬物動態に対する影響を検討した。試験
1218.31[CTD 5.3.3.4-7]において,リナグリプチン 5 mg
単回投与時の薬物動態に対するCYP3A4
およびP-糖蛋白の強力な阻害の影響をリトナビルの併用投与により検討した。リトナ
ビルとの併用によりリナグリプチンの
C
maxは約3
倍に上昇し,AUC0-24は約2
倍に上昇した。リトナビル
200 mg
併用時の投与24
時間後のリナグリプチンの血漿中濃度は,リナグリプチン 単独投与時と比較して51%高値であった。終末相における半減期に対する影響はみられなかっ
た。母集団薬物動態解析の結果,リトナビル併用による曝露の上昇はリナグリプチンのバイオ アベイラビリティの上昇により最も良く説明でき,一方,リナグリプチンの排泄に対するリト ナビルの影響はほとんどみられなかった。リトナビル併用時のリナグリプチン反復投与後の血 漿中濃度の予測から,リトナビル併用時の累積はリナグリプチンの単独時と同程度であると予 測された。第
III
相試験(試験1218.16
および試験1218.23)において,CYP3A4
およびP-糖蛋白阻害剤の
併用によるトラフ時の血漿中リナグリプチン濃度への影響はみられなかった。これまでに得られている非臨床試験および臨床試験の結果から,リナグリプチンの安全域は広 いと考えられる(安全域は,毒性試験では少なくとも
AUC
で32
倍[CTD 2.6.6],ヒトではAUC
で約90
倍[CTD 5.3.3.1-1,試験1218.1]。臨床用量投与後の C
maxを38
倍上回る濃度においてQT
間隔に対する影響はみられていない[CTD 5.3.4.1-1,試験1218.32])。
したがって
2
倍の曝露上昇は臨床的に意味のある影響を及ぼさないと考えられ,患者の安全性 に対する影響はないと予想される。第
II
相および第III
相データを用いて,P-糖蛋白およびCYP3A4
の阻害剤の併用投与の影響を 検討するための層別解析を行った。この結果,リナグリプチンの安全性プロファイルはCYP3A4
および
P-糖蛋白の阻害剤の併用による影響を受けないことが明らかとなった[CTD 2.7.4, 5
項]。CYP3A4
およびP-糖蛋白の強力な誘導剤であるリファンピシン 600 mg
を1
日1
回反復併用投 与すると,リナグリプチンのAUC
τ,ssおよびC
max,ssはそれぞれ40%および 44%低下した。 CYP3A4
の誘導により,CYP3A4で生成されるCD 1790
の曝露は上昇すると予想されたが,CD 1790の リナグリプチンに対するAUC
から算出した相対曝露は約11%から約 3%へと約 70%低下した。
C
maxから算出したリナグリプチンに対するCD 1790
の相対曝露は,リファンピシン併用投与に より約22%から約 12%へと約 50%低下した[CTD 5.3.3.4-9,試験 1218.67]。
CYP3A4
によるCD 1790
の生成はリナグリプチンの用量依存的であり,低用量では相対曝露がより低くなる[CTD 5.3.1.1-3,試験
1218.33]。このため試験 1218.67
でみられたリナグリプチンおよび
CD 1790
の曝露をこれまでの試験で検討した種々の用量の結果と比較することで,リファンピシンの作用が
CYP3A
またはP-糖蛋白のどちらの誘導によるものかを推察することが
できる。試験1218.33[CTD 5.3.1.1-3]のリナグリプチン 1 mg
単独投与後のリナグリプチンお よびCD 1790
の曝露は,試験1218.67
でリファンピシン600 mg
とリナグリプチン5 mg
の併用 投与後と同程度であった。したがってリファンピシン併用下でみられた影響は,バイオアベイ ラビリティの低下,すなわちP-糖蛋白の誘導によるものである可能性が高いと考えられる。
リファンピシン併用時の薬物動態の違いを反映し,トラフ時の
DPP-4
阻害率は,非併用時の81.1%から併用時の 52.7%へと約 30%,24
時間の平均阻害率は非併用時の85.6%から併用時の
67.6%へと約 21%低下した。リファンピシン併用投与時のトラフ時 DPP-4
阻害率の中央値は,50%を上回っていた。リファンピシン併用時と同程度の曝露および DPP-4
阻害率が得られるリナグリプチン
1 mg
投与により,統計学的に有意にHbA1c
が低下することが第II
相試験で示さ れている[CTD 5.3.5.1-3,試験1218.6;CTD 2.7.3,4
項]。リファンピシン併用投与下において もリナグリプチンは臨床的に有効であると予想されるが,最大の効果は得られない可能性があ る。[
14C]リナグリプチンを用いた試験 1218.7[CTD 5.3.3.1-2]の結果から,リナグリプチンの消失
における代謝の寄与はわずかであったこと,ならびにCYP3A4
とP-糖蛋白の強力な阻害剤およ
び強力な誘導剤の併用による薬物動態への影響は主に腸管のP-糖蛋白を介したバイオアベイ
ラビリティの変動によるものと考えられることから,リナグリプチンの薬物動態に対するCYP3A4
の阻害または誘導の影響は小さいと考えられる。したがってリトナビルおよびリファンピシンの併用時にみられた程度のリナグリプチンの曝露に対する影響は,P-糖蛋白の強力な 阻害剤または誘導剤を併用する場合に限られると予想される。また,このことは,リナグリプ
チンの腸管または肝臓における初回通過効果はわずかであるという非臨床データとも一致して いる[CTD 2.6.4,5項]。
リナグリプチンはin vitroにおいて弱~中程度の
CYP3A4
の不可逆的な阻害剤であることが示 されているので(3.1項参照),20例の健康男性被験者を対象としたシンバスタチン40 mg
との 薬物相互作用試験[CTD 5.3.3.4-2,試験1218.9]において,シンバスタチン(CYP3A4
の基質)およびシンバスタチン酸の定常状態での薬物動態に対するリナグリプチン
10 mg
反復投与の影 響を検討した。リナグリプチンとシンバスタチンの併用投与によって,シンバスタチンおよび シンバスタチン酸のAUC
τ,ssは,それぞれ34.2
および33.3%上昇した。C
max,ssに対する影響は,AUC
τ,ssに対する影響より小さかった(10.0および20.7%)。リナグリプチンの併用による AUC
および
C
maxの上昇は35%未満であったことから,
in vivoにおいて臨床用量に近い用量を投与後の血漿中濃度付近では,リナグリプチンは
CYP3A4
の弱い阻害剤に過ぎず,リナグリプチンの 併用によるCYP3A4
の基質となる薬剤の代謝に対する影響は小さいと考えられる。また本試験は
10 mg
のリナグリプチンを用いて実施されており,5 mg
から10 mg
にかけて非結合型リナグリプチン濃度が用量比を上回って上昇することを考慮すると,シンバスタチンの薬物動態に対 するリナグリプチン
5 mg
の影響はかなり小さいと予想される。In vitroにおけるリナグリプチ ンのCYP3A4
に対するK
i(テストステロンの6β-ヒドロキシル化に対する K
i[CTD 5.3.2.2-3,U -1012])は 115µM
であること,およびin vivoでのシンバスタチンのクリアランスに対する影響がみられなかったことをもとに,他の
CYP3A4
の基質に対するリナグリプチンの影響を予 測した場合,リナグリプチンによるCYP3A4
活性の阻害による薬物動態への影響は臨床的に問 題にならない程度であると考えられる。In vitro試験の結果,リナグリプチンは
P-糖蛋白の弱い阻害剤である(3.1
項参照)と考えられた。このため試験
1218.29[CTD 5.3.3.4-5]において,P-糖蛋白の良い基質であり 2
型糖尿病患 者において併用される薬剤であるジゴキシンの定常状態での曝露に対する影響を検討した。リ ナグリプチン反復併用投与によるジゴキシンの薬物動態に対する影響はみられなかった。した がって,リナグリプチンは,P-糖蛋白またはin vivoにおいてジゴキシンの薬物動態に関与する 他のトランスポーターの阻害剤ではないと考えられた。メトホルミンおよびリナグリプチンの単独投与に対する,メトホルミン
850 mg 1
日3
回投与と リナグリプチン10 mg
反復併用経口投与後のメトホルミンおよびリナグリプチンの相対バイオ アベイラビリティを試験1218.4
で検討した[CTD 5.3.3.4-1]。メトホルミンのAUC
τ,ssの90%信
頼区間は生物学的同等性の基準である80~125%の範囲に含まれていたことから,リナグリプ
チン併用投与によるメトホルミンの曝露量への影響はないと考えられた。リナグリプチンの併 用により,メトホルミンのC
max,ssは約11%低下した(90%信頼区間:78.2~100.4%)。メトホル
ミン併用時にリナグリプチンの定常状態での曝露量(AUCτ,ss)は約20%上昇したが,C
maxに変 化はみられなかった。母集団薬物動態解析の結果からも,同様にメトホルミンの併用によりリ ナグリプチンの曝露量は19.8%上昇することが示されている[CTD 5.3.3.5-1,U 1535-01]。
ドキュメント内
トラゼンタ錠 5mg CTD 第 2 部資料概要 2.7 臨床概要 臨床薬理試験 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社
(ページ 135-140)