3. 学生評価 1 評価方法
3.2 評価と学習との関連
基本的水準:
医科大学・医学部は
評価の原理、方法を用いて以下を実現する評価を実践しなくてはならない。
目標とする教育成果と教育方法との整合(B 3.2.1)
目標とする教育成果を学生が達成(B 3.2.2)
学生の学習を促進(B 3.2.3)
学生の教育進度の認識と判断を助ける形成的評価および総括的評価の適切な配分(B 3.2.4)
注釈:
[評価に関わる原理、方法および実践]は、学生の達成度評価に関して知識・技能・態度の 全ての側面を評価することを意味する。
[学生の教育進度の認識と判断]では、進級の要件と評価との関連に関わる規程が必要とな る。
[試験の回数と方法(特性)の調節]は、学習の負の効果を避けるように配慮されるべきで ある。さらに膨大な量の情報を暗記する学習や過密なカリキュラムは避けるような配慮 も含まれる。
[統合的学習の修得]には、個々の学問領域や主題ごとの知識を適切に評価しながら統合的 に評価をすることを含む。
B 3.2.1
医科大学・医学部は
評価の原理、方法を用いて以下を実現する評価を実践しなくてはならない。
目標とする教育成果と教育方法との整合(B 3.2.1)
A 基本的水準に関わる点検
卒業時達成指針(資料4)を2013年に設定し、2014年度からのシラバスには明記するこ ととなった。各ユニットのシラバス作成教員に対しては、シラバス執筆依頼の際に卒業時 達成指針を配布し、その達成指針に沿った到達目標を設定する様に指示が成された(資料 7)。
B 基本的水準についての評価
卒業時達成指針を2013年に設定し、2014年度からのシラバスで卒業時達成指針に沿っ た到達目標を設定するようになったばかりである。各ユニットで行われる教育方法が達成 指針に整合性があるかの検証はこれからである。
C 改善に向けた提言
各ユニットで行われる教育方法が卒業時達成指針に整合性があるのか、カリキュラム委 員会で検討する。
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D 改善に向けた計画
各ユニットで行われる教育方法が卒業時達成指針に整合性があるのか、各ユニットで行 われる教育方法に過不足はないのか、らせん型の教育が実施されるのか、教育IRとして検 証する。
B 3.2.2
医科大学・医学部は
評価の原理、方法を用いて以下を実現する評価を実践しなくてはならない。
目標とする教育成果を学生が達成(B 3.2.2)
A 基本的水準に関わる点検
現行カリキュラムでは、知識の評価として総合試験、問題解決能力評価として口頭試験 やTriple Jump Exercise 、Multi-station Examination、技能評価として4年次OSCEと5年次 OSCEまたは基礎医学系実習評価が行われ、態度評価として、低学年から各学年で実習や 演習での評価を行い、医師として適切な行動がとれる学生を育てるべく指導を行っている。
このように本学では、6年間を通じて知識、技能、態度に該当する能力を評価しようとす る努力が行われている(資料153,154,155,156,157)。
卒業時達成指針の各項目についての評価は以下の様に実施されている。
「他者の存在を受け入れてその考えを理解する力」としては、1年次から継続的に行 われる医学総論における態度評価、前臨床実習での施設からのフィードバック、実習 や演習での態度評価で行われている。医療総論演習は看護学科との共修での態度評価 をしている。
「人類文明によって立つ自然科学への基本的理解力」は1年次生命基礎科学の筆記試 験による総括評価が行われる。
「自己主導型学習習慣と自己研鑽能力」については、2〜4年次のオリエンテーション での学習に対するグループディスカッションとリアクションペーパーで態度評価を実 施している。
「豊かな人間性と人類愛」は医学総論において、倫理性や個々の人々に関わる事項に ついてのグループ討論やリアクションペーパーにより評価している。
「多様な立場の人々と良好に意思疎通する力」は、プレゼンテーション試験、レポー ト評価、1年次の市民参加の授業でのあけぼの会の方からのフィードバックで行われ ている。
「社会人・国際人としての教養とマナー」は、人文科学や社会科学での試験、医学総 論での知識と態度の評価、外国語での筆記試験と態度評価、を行っている。
「道徳的思考力と倫理的判断力」については医学総論のグループディスカッションの 態度評価やリアクションペーパーの記述によって評価している。
「探究する心と科学的判断力」は研究室配属での参加態度評価、レポート作成能力で 評価している。医学英語専門文献抄読では、医学論文を読む能力について評価してい る。
「基礎医学および医学に関連する科学の基本的知識」は基礎医科学、臨床基礎医学の コースごとの総合試験でMCQと論述による知識の評価、口頭試験によるパフォーマ ンス評価、実習や演習での知識と態度の評価、レポート評価を行っている。
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「臨床医学および医療の基本的知識」は臨床医学Ⅰ、Ⅱの総合試験、医学卒業総括試 験、CBT、などの筆記試験で評価している。
「社会医学および公衆衛生に関わる基本的知識」は、コース社会医学総合試験、実習 での態度、レポート、プレゼンテーションで評価している。
「医学知識を臨床実践に活用する力」は、症候学演習での事前学習、ディスカッショ ン能力についての評価、臨床医学演習(テュートリアル)での、知識、ディスカッシ ョン能力、レポートによる評価が行われている。
「科学的根拠に基づく臨床推論に裏付けられた診療を実践する力」は、Evidence-based
Clinical Practiceでレポート、態度評価が行われている。臨床実習中には知識や問題解
決能力の評価が行われている。
「基本的臨床能力としての診療手技」は基本的臨床技能実習で技能と態度の評価が行 われている。
「基本的な臨床コミュニケーション技能」は医学総論Ⅳ(患者・医師関係)での態度 とレポートによる評価、参加型臨床実習での患者とのコミュニケーション能力の評価 が中心であるが、低学年での前臨床実習の態度評価、コミュニケーション教育での態 度評価も実施されている。
「医師としての使命と責任の自覚」は、1年次から医学総論でFitness toPractiseと患者 一人ひとりについて考えさせる教育を行っており、リアクションペーパーやレポート での記載で評価している。
「患者中心の職業的倫理観」については、前臨床実習での態度評価、臨床実習での態 度評価を行っている。医学総論Ⅴでの白衣授与式、医療倫理討論での態度評価が行わ れている。
「チーム医療に臨む主体性・協調性」は前臨床実習での態度評価、5年次のチーム医 療構築ワークショップへの出席評価、臨床実習での担当教員による態度評価が行われ ている。
「医師としての適切な行動と態度」は1年次からFitness to Practiseの観点からの頻回 なフィードバックが行われている。
B 基本的水準についての評価
卒業時アウトカムを目指すためのマイルストーンが設定されていないため、卒業時 アウトカムを測るための教育効果測定になっていない。
現在の医学卒業総括試験は、卒業時アウトカムとの整合性が検討されていないので、そ の妥当性を評価する必要がある。また、現在の試験は医師国家試験を重視した知識偏重の 傾向が強いため、パフォーマンス評価が十分されているとは言えない。
C 改善に向けた提言
2014年度からカリキュラム委員会で早急にマイルストーン設定の検討と、その能力を測 るためのパフォーマンス評価の導入計画の検討を開始する。
医師国家試験を重視した現行の卒業試験から、大学独自の卒業時アウトカムに沿った特 色のある卒業試験のあり方を模索すべき時期に来ている。最近65%の合格水準を2回目ま でに上回る学生の中から医師国家試験不合格者が出ていることを考慮し、卒業試験の実施 方法と合格水準を見直す時期に来ていると考えられる。
2017年度から6年次実施予定のAdvannced OSCE(卒業時OSCE)を、2014年度から 2015年度にかけて、卒業時アウトカムに沿って系統的に構築する。その実施に際しては、
外部評価者の招聘を計画する。
卒業時までに生じる成績上位者と下位者の格差を是正すべく、6年間のカリキュラムを 全学的に見直すべきである。
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D 改善に向けた計画
学生全員が卒業時アウトカムに到達することを目標に、学習評価の在り方を継続的に検 討していく。
B 3.2.3
医科大学・医学部は
評価の原理、方法を用いて以下を実現する評価を実践しなくてはならない。
学生の学習を促進(B 3.2.3)
A 基本的水準に関わる点検
総合試験では総合試験採点結果連絡票で学生へのフィードバックを行っており、学生自 身が自己の能力を振り返り、自ら学習しなければならない項目を認識できるように配慮し ている。連絡票には、各ユニットの得点率と平均得点率、MCQの得点率、論述の得点率、
席次、コース内得点率グラフと各学生の位置が示されている(資料145)。
形成的評価は組織的には成されておらず、実習教育で実習中に行うフィードバックが形 成的評価となっているが、どのユニットでどこまでフィードバックを行っているかは大学 としては把握していない。
B 基本的水準についての評価
Web-based Test のシステムは完備しているが、多くの学生はこの試験問題プールを本試
験準備のために使い、必ずしもコース学習中の自分の能力の自己診断には使っていない
(資料178)。
C 改善に向けた提言
知識提供型の授業から、能動的学習へと転換を迫られており、学生が自己主導型で学ぶ 環境が必要である。SeDLESを学生が自ら自己学習に使うようにしていかなければならな い。それと同時に、SeDLESの学習履歴を担当教員が確認して、学生に対するフィードバ ックが確実に行われるような体制を整えなければならない。
D 改善に向けた計画
SeDLESにより学生の修学的成長を経時的に検証し、必要があれば逐次システムに改修
を加える。
B 3.2.4
医科大学・医学部は
評価の原理、方法を用いて以下を実現する評価を実践しなくてはならない。
学生の教育進度の認識と判断を助ける形成的評価および総括的評価の適切な配分(B 3.2.4)
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