• 検索結果がありません。

学生と卒業生の実績・成績

ドキュメント内 Standard: (ページ 180-189)

7. プログラム評価

7.3 学生と卒業生の実績・成績

基本的水準:

医科大学・医学部は

・ 次の項目に関して、学生と卒業生の業績を分析しなければならない。

・ 使命と期待される教育成果(B 7.3.1)

・ カリキュラム(B 7.3.2)

・ 資源の提供(B 7.3.3)

注釈:

 [学生の業績]の測定と分析には、教育期間、試験成績、合格率および不合格率、進級率 と落第率および理由、各課程におけるレポートなどの情報のほか、学生が興味を示してい る領域や選択科目の履修期間なども含まれる。留年を繰り返している学生に対する面接、

プログラムから離脱する学生の最終面接を含む。

 [卒業生の実績]の測定には、職業選択に関する情報、卒業後や昇進後の臨床診療におけ る実績などが含まれる。

 [背景と状況]には、学生を取り巻く社会的、経済的、文化的環境が含まれる。

B 7.3.1

医科大学・医学部は

・ 次の項目に関して、学生と卒業生の業績を分析しなければならない。

・ 使命と期待される教育成果(B 7.3.1)

A 基本的水準に関わる点検

本学の建学の精神は「病気を診ずして病人を診よ」であり、この使命を医学教育で果た すために教育目標が定められ、卒業時アウトカムが設定された(資料4)。

本学では知識、技能、態度に該当するそれぞれの能力について学生の達成度を適切に評 価するために、知識量を求める総括的試験に加えて、問題解決能力を評価するための multi-station examination、triple jump exercise、プレゼンテーション試験、また技能を評価す るOSCEも導入した。さらに学生が伸びていくための支援として、態度評価、レポート評 価、学習プロセスの中で学生が自らの誤りに気付くための形成的評価も行っている(資料 153,154,155,156,157)。

一方、本学が求める学生像は、「自ら求め、自ら学ぶ」という姿勢である。そのために 本学では講義という教育手法を用いるユニットでは出席を取っておらず、講義での学習成 果はコース総合試験で成果判定される。これは学生に自らの学習行動への責任を問うため である。それに対して演習・実習では、その学習に対するフィードバックが随時行われ、

学生の学習態度への評価を伝えることで学生の学習行動の適正化を図ろうとしている。こ のように学生自身の学習への責任を絶えず問うことを行い、「学習する責任は学習者にあ る」ことを知らせている。さらには、6年次選択実習では、4週間単位で自らが選んだ実習 先(学外、海外、基礎の研究所も含む)での実習を可能としているだけでなく、正課外の プライマリケア・選択学外臨床実習での経験を単位として認めており、より学びたい学生

179

への支援を惜しまない体制となっている。すなわち慈恵医大の卒業生は生涯学ぶ医療者で あり続けるための支援を大学として行っている。

本学は卒業時アウトカムを学生に担保できるような教育カリキュラムの構築を目指して、

2006年と2011年に卒業生アンケートを実施した。その結果から本学の学生と卒業生の業 績を分析してみる。

獲得できていると思われる教育成果としては、「低学年から大学病院以外に患者がいるこ とを認識して、地域や社会構造をも包含して医療を理解できた」と述べられているように、

地域医療の中で医師の使命と責任の自覚ができていた。「病気を診ずして病人を診よの能 力が自然に身に付いた」「患者中心の医療が自然に身に付いた」という意見は、患者中心 の職業的倫理観、医師としての適切な態度と行動が達成できていたことを示している。

「多職種連携教育を受けていたので卒後すぐに意思疎通が上手くできた」のように、チー ム医療に臨む主体性・協調性が培われていたことがわかる。「自主性を重んじた自由な校 風」「カリキュラムの自由度」「国試の予備校になっていない」等、自己主導型学習習慣 と自己研鑽能力を自然と磨いていたことが卒業生の意見から汲み取れる。

教育成果として達成が不十分だと考えられるのは、「自主的問題解決能力」「コミュニ ケーションスキル」「プレゼンテーション能力」が卒業生の意見として挙げられた。また、

教育成果を測定するための評価について問題だとされたのは、「口頭試験が一問一答方式 で意味がなかった、何を求めているのかわからなかった」「レポートを提出してもフィー ドバックが来なかった」など教員の質を問うものであった。

B 基本的水準についての評価

Aに述べたように、本学は求める学生像を明確に定め、それに則した教育と評価、学生 支援を実施している。卒業生も本学の使命の多くを具現化できていると考えられるが、

「自主的問題解決能力」「コミュニケーションスキル」「プレゼンテーション能力」とい ったノンテクニカルスキルの涵養が教育の中で十分ではないことが明らかになっている。

また、教育成果を測定するための評価については、評価側の教員の質が問題である。教育 成果が確かに達成されたかのパフォーマンス評価が十分ではない。パフォーマンス評価に 対する教員の理解も十分ではない。

C 改善に向けた提言

卒業時アウトカムを実現するためのマイルストーンとルーブリックを定め、学生にはそ の学年で何が求められているのかを明確に示す。

コミュニケーションスキル、プレゼンテーション能力を向上させるために、低学年から 順次性を持ったカリキュラムを構築する。

パフォーマンス評価やテューターとしての能力向上のためのFDを実施する。

D 改善に向けた計画

ルーブリックに則ったパフォーマンス評価を確実に実施する。

自然に患者の前でコミュニケーションできる能力、患者に説明できる能力、明晰なプレ ゼンテーションできる能力を学生に涵養するための方策とその実績について検証する。

180

B 7.3.2

医科大学・医学部は

・ 次の項目に関して、学生と卒業生の業績を分析しなければならない。

・ カリキュラム(B 7.3.2)

A 基本的水準に関わる点検

1996年度から導入された本学のカリキュラムでは、1987年に阿部正和先生が提案された、

基本的知識、基本的技術、基本的態度・習慣をベースに、初年次教育の改革、心理社会的 側面や多文化理解を重視した医学総論、テュートリアルなどの問題解決型学習、臨床実習 の強化、地域医療教育、そして選択カリキュラムの導入など教育内容の改善を行っただけ でなく、コース・ユニット制、総合試験システムという本学独自のカリキュラム実施体制、

および前臨床実習として低学年からの体系的学外実習での患者理解、多職種連携教育とい う他大学にはない特徴が具体化された。また、本学がわが国で最初の試みとなる家庭医実 習(1986年開設)を必修化、拡充して前臨床実習とともに地域で学生を育てる地域医療実 習も体系化した(資料8)。

「低学年からの患者接触、学外実習による動機付けがあった」「地域、現場での経験が できた」「様々な医療の姿をみることができた」「選択実習で学外、海外にいけること」

など学外実習や選択実習に対する高い評価、その他に「他職種とのふれあいを大切にして いるカリキュラム」でチーム医療を学べること、「良き臨床医を育てようとする目標が明 確」なプログラムが良い、と学生や卒業生に指摘されている。

カリキュラムの問題点としては、「教養教育、基礎医学と臨床医学が結びついていない」

「低学年から臨床に結びつく教育をすべき」「症例中心の授業にするべき」など、本学の カリキュラムは学生に基本的臨床能力を求めているにもかかわらず、統合型カリキュラム が充分機能していないとの意見であった。「シラバスに統一性がない」「シラバスの記載 と実際に行われている教育内容が異なる」というのも、教育プログラムが全体として検証 されていないことを示す。

B 基本的水準についての評価

Aで述べた様に、統合型カリキュラムとして、基礎医学と臨床医学が十分に融合してい ないことがわかる。症例を基盤とした問題解決を問うカリキュラムも十分ではない。

C 改善に向けた提言

自主的問題解決能力、臨床推論能力を高めるために、低学年から Active Learning の導入、

症例ベースの授業を推進する。その際に海外や他学の実践例も参考にする。

卒業時達成指針に向けて、各コース・ユニットの連携を高めて教育内容を網羅的に検証 する。

D 改善に向けた計画

座講を大幅に減らしてテュートリアル、TBLなどの問題解決型の学習を増やすことを検 討する。

アウトカム基盤型カリキュラムへ移行する。

181

ドキュメント内 Standard: (ページ 180-189)