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行動科学と社会医学および医療倫理

ドキュメント内 Standard: (ページ 47-53)

2. 教育プログラム

2.4 行動科学と社会医学および医療倫理

基本的水準:

医科大学・医学部は

 カリキュラムに以下を明示し、実践しなければならない。

 行動科学(B 2.4.1)

 社会医学(B 2.4.2)

 医療倫理学(B 2.4.3)

 医療関連法規(B 2.4.4)

注 釈:

 [行動科学]、[社会医学]は、地域の必要性、関心および歴史的経緯により生物統計、地域 医療、疫学、国際保健、衛生学、医療医学人類学、医療心理学、医療社会学、公衆衛生 などおよび社会医学を含む。

 [医療倫理学]は、医師の行為ならびに判断に関わる価値観、権利および責務などで、医療 実践に必要な規範や道徳観を扱う。

 [医療関連法規]は、医療制度、医療専門職および医療実践に関わる法規およびその他の規 則を扱う。規則には、医薬品ならびに医療技術(機器や器具など)の開発と使用に関す るものを含む。

 行動科学、社会医学、医療倫理学および医療関連法規をカリキュラムに明示し実践する ことは、社会経済的、人口統計的および文化的原因の規定因子、分布および結果として の健康障害、さらにその国の医療制度および患者の権利を理解するのに必要な知識、概 念、方法、技能そして態度を提供し教育することを意味する。この教育を通じて地域・

社会の医療で必要とされることの分析力、効果的な情報交換、臨床判断、そして倫理の 実践を学ぶ。

日本版注釈:

 [社会医学]は、法医学を含む。

B2.4.1

医科大学・医学部は

 カリキュラムに以下を明示し、実践しなければならない。

 行動科学(B 2.4.1)

A 基本的水準に関わる点検

本学では1996年カリキュラム改訂時に3年次に「行動科学」のユニットを開設した。わ が国の中では、本学の行動科学の開講はかなり早い時期から開始したことになる。

行動科学では、行動の生物学的基礎、行動の心理学的基礎、ライフサイクル、性の発達 と病理面接学、人格論、組織と個人、患者学、リスクマネージメントについて学習する

(資料109)。

B 基本的水準についての評価

本学における行動科学は、医学は、身体機能だけを扱うのではなく、広く心理・社会的 側面の機能をも扱うことを理解する必要があるとの認識から、①人間の行動を規定してい

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る心理的基礎を理解すること、②行動の基礎となっている脳科学的な考え方を理解するこ と、③乳幼児から老年期に至るライフサイクルからみた心理行動特性の推移を理解するこ と、④行動科学の直接的な対象として行為、活動、また間接的な対象として生理学、生物 学、社会学などに関する諸現象を理解すること、などをテーマに臨床医学との接点を持っ た講義内容に配慮し、教養の範囲を超えたより実践的な内容である。これらの事は、常に 新しい研究知見が増加しており、毎年改訂が必要であると共に、臨床との関連付けにも十 分な配慮が必要である。

C 改善に向けた提言

年度毎に改訂の際に、各講義が有機的な結びつきを持ち、できる限り新しい内容を盛り 込み、臨床との関連付けを明らかにするように配慮し、それらを検証する。

D 改善に向けた計画

年度毎に、改訂に向けた準備会議を開催し、各講義間の連携を図り、単なる座学に留ま らない内容の改善を行う。

B2.4.2

医科大学・医学部は

 カリキュラムに以下を明示し、実践しなければならない。

 社会医学(B 2.4.2)

A 基本的水準に関わる点検

社会医学に関しては社会医学Ⅰ(3年次)、Ⅱ(4年次)および選択科目として産業医実 習を開講している。また1年次の医療総論演習でも医療システムについて学習する。

社会医学Ⅰでは法医学に関する基本的な事項を講義で学び、実習では血液型鑑定、法医 病理学、法医解剖見学を実施している。法医学演習では、検案・解剖写真や検査データか らグループ毎に問題点について考察している。

社会医学Ⅱでは、疫学、予防医学、環境衛生、地域保健、保健統計、産業衛生、食品衛 生、社会福祉・社会保障・医療経済、医療保険、医療法規、医療事故・突然死・死体検案 について、臨床医学に近い立場から、社会との繋がりを持った学問として学ぶ。環境保健 医学演習では、社会医学領域のテーマについて、グループワークによる問題解決とプレゼ ンテーションを行う。

産業医実習として、産業医活動の現場を経験して、産業医の職務、職場巡視、作業環境 管理、作業管理、健康管理、労働衛生教育、職業病、作業関連疾患などについて学ぶプロ グラムがある。

B 基本的水準についての評価

社会医学に関する教育項目は全て網羅されている。しかし、臨床の現場で社会医学をど の様に活用したら良いのか、患者を診療する中で予防医学をどの様に展開したら良いのか など、臨床の現場で使える社会医学の教育が十分でない。

C 改善に向けた提言

臨床に役立ち応用できる社会医学を教育する必要がある。

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D 改善に向けた計画

2015年度から開始される参加型臨床実習プログラム(特に、学外病院実習)の中で、疾 病治療後の再発予防、退院後の社会的適応への援助、地域の健康作り事業、医療保険業務 などを実践させる。

B2.4.3

医科大学・医学部は

 カリキュラムに以下を明示し、実践しなければならない。

 医療倫理学(B 2.4.3)

A 基本的水準に関わる点検

医療倫理に関しては医学総論で1年次から5年次にかけて継続的に実施している。

 1年次:医学総論Ⅰ演習(医師としてのマナーとプロフェッショナリズム)、医療 総論演習(医療倫理の TBL、患者について考える、行動変容、市民参加の授業)、

人文科学(倫理学)

 2年次:医学総論Ⅱ演習(薬害を考える)

 3年次:医学総論Ⅲ演習(ハラスメント、プロフェッショナリズム、ターミナルケ アを考える、患者の自己決定とサポート体制、腎不全の治療、医療事故)

 4年次:医学総論Ⅳ演習(患者・医師関係と面接、医療安全)

 5年次:医学総論Ⅴ演習(臨床実習中間報告会、看護学科共修授業「医療倫理を考 える」)

B 基本的水準についての評価

本学の医療倫理教育(上述)は「医師としてのマナーとプロフェッショナリズム」から 始まり「医療安全」、「医師及び看護師としての職種の違いによる医療倫理のあり方」ま で網羅し、現状では到達基準に達していると自己評価している。

C 改善に向けた提言 特にありません。

D 改善に向けた計画 特にありません。

B2.4.4

医科大学・医学部は

 カリキュラムに以下を明示し、実践しなければならない。

 医療関連法規(B 2.4.4)

A 基本的水準に関わる点検

関連法規に関しては、医療総論演習(医療倫理のTBL、医療システム)、社会科学(1 年次)、医療法規(4年次)で学習している。

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B 基本的水準についての評価

明らかに医療関連法規についての教育が不足している。医療経済に関する教育も不足し ている。特に実践的な教育が不足している。

C 改善に向けた提言

医療関連法規や医療経済の教育は低学年では学生の興味が湧かず、過去に失敗した経験 がある。一方、6年生にこの領域の講義を行うと国家試験が優先し、無視された経験も有 している。本来は、臨床現場の中で、関連法規や医療経済を学ぶ学習環境を考えなければ ならないであろう。

D 改善に向けた計画

九州大学医学部が、学生を大学病院に1泊、模擬入院させ、その後医療経費を計算させ るプログラムを行っており、この実習で学生は医療費がどれくらいかかるかを実感してい ることが報告されている。このような実践は極めて参考になる例である。医療経済や関連 法規に関する教育手法を今後検討していかなければならない。

質的向上のための水準:

医科大学・医学部は

 行動科学、社会医学および医療倫理学を、以下に従って調整、修正すべきである。

 科学的、技術的そして臨床的進歩(Q 2.4.1)

 現在と将来に社会および医療で必要となること(Q 2.4.2)

 人口動態および文化の変化(Q 2.4.3)

Q2.4.1

医科大学・医学部は

 行動科学、社会医学および医療倫理学を、以下に従って調整、修正すべきである。

 科学的、技術的そして臨床的進歩(Q 2.4.1)

A 質的向上のための水準に関わる点検

社会医学に関して、本学は1996年度のカリキュラム改革時からEBMの重要性に勘案し て1年次から4年次へと連続性を持った「医療情報・EBM」というコースを新設した。そ の到達目標は、医師として最も適切な医療を患者に提供できるための考え方とプロセスを 理解して実践できることである。一方、分子生物学の著しい進歩により、法医学の方法論 は以前とは次元の異なるものとなり、新たな技術の出現により、例えば昨今問題となって いる生殖補助医療の進歩により、今までには考えられないような医療倫理問題についてと りあげる必要性が生じている。

Q.2.3.1とQ.2.3.2で既に述べたように本学ではコース・ユニット制となっており、ユニ

ット内の教育内容は毎年見直されることになっている。行動科学、社会医学、医療倫理学 もコース臨床基礎医学Ⅰ、社会医学ⅠとⅡ、医学総論で毎年点検評価が行われており、科

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