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基礎医学

ドキュメント内 Standard: (ページ 43-47)

2. 教育プログラム

2.3 基礎医学

基本的水準:

医科大学・医学部は

 カリキュラムに以下を明示し実践しなければならない。

 科学的知見の理解のための基礎医学の応用(B 2.3.1)

 臨床医学を修得し応用するために必要な基本的概念と方法(B 2.3.2)

注釈:

 [基礎医学]は、地域での必要性、関心および伝統によって異なるが、解剖学、生化学、生 物物理学、細胞生物学、遺伝学、免疫学、微生物学(細菌学、寄生虫学およびウイルス 学を含む)、分子生物学、病理学、薬理学および生理学を含む。

B2.3.1

医科大学・医学部は

 カリキュラムに以下を明示し実践しなければならない。

 科学的知見の理解のための基礎医学の応用(B 2.3.1)

A 基本的水準に関わる点検

1年次の自然科学(物理学、化学、生物学)に続き、2年次前期に基礎医科学Ⅰを配置し ている。基礎医科学Ⅰは生物物理学的な要素を重視した生理学総論、臓器別にはなじまな い生化学や生体調節、組織学総論、そして運動器系の解剖生理学を講じ、自然科学の原則 の上での基礎医学導入を行っている。2年次後期の基礎医科学Ⅱは解剖学・生理学・生化 学そして臨床系教員の助力も得ながら「基礎系臓器別統合カリキュラム」を実施している。

さらに、薬理学総論として、薬物-受容体相互作用を詳細に講じている。本学ではドイツ で実施されている、「解剖学および医学的生物学」、「生化学および化学」、「生理学お よび物理学」の考え方を重視し、自然科学を基盤にした基礎医学総論を基礎系臓器別統合 カリキュラムの前に配置している(資料43)。

B 基本的水準についての評価

自然科学から、「解剖学および医学的生物学」、「生化学および化学」、「生理学およ び物理学」へと進んで「臓器別」に学び、その次に「病因・病態」という視点から「個体」

の反応を考察するという「基礎系臓器別統合カリキュラム」は本学独自のものであり、今 後もこのカリキュラム構造は堅持していく。

C 改善に向けた提言

2年生後期での臓器別ユニット間の連携が不十分で、学習すべき事項の過不足が存在し ているので、ユニット間、ユニット内での授業内容について全体的な視点から検討する。

また3年生の臨床基礎医学では、臨床医学への導入的側面については検討すべき課題もあ る。特に3年次の臨床基礎医学の内容をさらに臨床医学の知識と組み合わせれば、4年次 の臨床系統講義の学生負担の軽減につながる上に、基礎医学・臨床医学の連携が学生にも 分かりやすくなり、学生のモチベーションの向上にもつながると考えられる。

講義と併行して英文成書の学習を強く奨励する。

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D 改善に向けた計画

4年次の臨床系統講義の負担軽減のための3年次カリキュラムの改善を検討する。

具体的には、臨床医学とのつながりが大きい薬理学各論の講義が、「病態と薬物」とし て現在わずか10コマ(90分)のみ講ぜられているが、これは全国的に見て有意に少ない コマ数である。鎮痛薬、抗炎症薬等、他の科目に振り分けられている項目もわずかながら 存在するが、根本的に内容を充実させる必要があると考える。臨床教育の中での実践的薬 理学についても検討する。

B2.3.2

医科大学・医学部は

 カリキュラムに以下を明示し実践しなければならない。

 臨床医学を修得し応用するために必要な基本的概念と方法(B 2.3.2)

A 基本的水準に関わる点検

3年次前期の臨床基礎医学Ⅰでは病因・病態を中心に、「基礎系臓器別」の知識につい て病態を軸にした「個体」の視点で学び、基礎医学の知識の統合と病因の理解に焦点を当 てている。3年次後期の臨床基礎医学Ⅱでは、病原体と個体との反応を中心に知識の統合 を図っている。このように基礎医学を病因・病態理解につなげるカリキュラムが構築され ている。

3年次に症候学演習という基礎医学系の問題解決型テュートリアルが実施されている。

これは臨床ケースを題材に、それまで学んだ基礎系臓器別の知識とこの時期に学んでいる 病因・病態を繋げる内容であり、螺旋型カリキュラムを構築している。

B 基本的水準についての評価

学生にも高く評価されている症候学演習であるが、学生からのアンケートによるとテュ ーターの能力にばらつきがあり、学習内容に差があるとの不満が寄せられている。テュー ターの質を向上するためにテュータートレーニングを実施する必要がある。

現在の症候学演習では、やや診断学の領域にまで踏み込んだ題材が多く、3年次の知識 では解決困難な場合もあり、今後の検討を要する。

C 改善に向けた提言

教員各位の教育能力向上の一環として、テュータートレーニングのためのFD再開をカ リキュラム委員会で検討する。

3年次までに履修した基礎医学の内容を確認し、着実に症候と結びつくような題材を検 討、作成する。さらに、臨床医学、診断学の学習が進んだ4年次での症候学演習の実施を 検討する。

D 改善に向けた計画

問題解決能力、臨床推論能力の涵養のため、低学年から症例ベースのテュートリアル導 入を検討する。

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質的向上のための水準: 医科大学・医学部は

 カリキュラムに以下の項目を反映させるべきである。

 科学的、技術的そして臨床的進歩(Q 2.3.1)

 現在と将来に社会および医療で必要となること(Q 2.3.2)

Q2.3.1

医科大学・医学部は

 カリキュラムに以下の項目を反映させるべきである。

 科学的、技術的そして臨床的進歩(Q 2.3.1)

A 質的向上のための水準に関わる点検

本学のカリキュラムはコース・ユニット制を取っている。ユニットで行われる教育はコ ース責任者によりユニット内およびユニット間調整が行われ、さらにはコース責任者が最 新の医学教育へのニーズを各ユニットに含めるように指示することができる。科学的、技 術的そして臨床的進歩や医療における社会的要求も毎年のコース・ユニットの教育目標作 成時に反映させることができるシステムとなっている(資料84)。

B 質的向上のための水準についての評価

卒前教育では学生がどの分野に進むにしてもその基礎となる教育を行うことになってい る。本学では、卒前教育における最も重要な教育目標として、変化に対応し自分自身の能 力を再開発するという生涯学習能力の涵養を唱えている。したがって、カリキュラムに科 学的、技術的、臨床的そして社会的ニーズを含めるだけでなく、変化するニーズに対応で きる能力の獲得を目指す方針を反映できるシステムとなっている。

C 改善に向けた提言

科学的、技術的、臨床的進歩は各教員が責任を持って教育に反映しなければならない。

したがって、充実した学生教育を行なうためには、各教員は専門領域の学問的進歩を担う エキスパートであることが不可欠であり、その領域で真に認知された研究者でなければな らない。

D 改善に向けた計画

教員各自の研究を奨励する。具体的には研究成果(論文発表、科学研究費取得)に対す る評価を、正当かつ厳正に行なう。

Q2.3.2

医科大学・医学部は

 カリキュラムに以下の項目を反映させるべきである。

 現在と将来に社会および医療で必要となること(Q 2.3.2)

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A 質的向上のための水準に関わる点検

コース責任者のほとんどがカリキュラム委員会(資料18)や教学委員会(資料25)のメ ンバーであり、カリキュラム委員会や教学委員会での討議された医学教育へのニーズは、

各コース責任者からコース内に反映される仕組みとなっており、現在と将来に社会および 医療で必要になることを迅速に取り入れることができるシステムである。また、コース責 任者は毎年刊行される「教育研究年報」にコース教育の内容の点検評価と課題について報 告する義務を負っており、コース教育は毎年、見直されることとなっている(資料85)。

B 質的向上のための水準についての評価 Q2.3.1で述べた。

C 改善に向けた提言

社会的ニーズをいかにカリキュラムに反映させるかを考える必要がある。大学附属病院 では、急性期疾患を対象とした特定機能病院としての機能を持たなければならず、附属病 院で臨床を行う臨床教員は特定機能病院の機能に沿って教員としての能力を開発していく。

しかしながら、大学附属病院の医療は国民が求める医療ニーズの一部にすぎない。在宅医 療、慢性疾患患者の長期フォローや生活支援、治癒困難な障害や疾患の患者の生活支援、

一般生活における予防医学などは大学と大学病院のみでは教えることができない。様々な 医療ニーズを学生に示すために、医学教育は大学と大学附属病院で完遂させてはならない。

本学ではすでに、障害者の地域授産厚生施設(資料62)、重症心身障害児施設(特別支援 学校を含む)(資料63)、地域子育て支援施設(資料64)、訪問看護ステーション(資料 65)、地域開業医実習(資料107)だけでなく、大学病院以外の地域病院での実習を取り 入れているが、今後ますます、教育病院群・施設群(資料108)を医学教育に取り入れる ことを進めていかなければならない。現在、2015年開講を目指し、高齢者医療にかかわる 学外実習を計画している。この実習では高齢者医療という側面だけではなく、生活する高 齢者、病気を得た高齢者が自分の生活に戻るための生活支援を念頭に準備を進めている。

まさに、病気ではなく、病を得た病人の医療、その人の生活を考える実習環境を整えよう としている。

D 改善に向けた計画

医療への社会的ニーズは国内にとどまらず、国際保健という視野も持たなければならな い。本学にはまだ国際保健に対する教育理念が確立されておらず、今後本学のミッション としての国際保健、国際貢献について議論を始めなければならない。

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ドキュメント内 Standard: (ページ 43-47)