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カリキュラムモデルと教育方法

ドキュメント内 Standard: (ページ 30-39)

2. 教育プログラム

2.1 カリキュラムモデルと教育方法

基本的水準:

医科大学・医学部は

 カリキュラムモデルを定めなくてはならない。(B 2.1.1)

 採用する教育法ならびに学習法を定めなくてはならない。(B 2.1.2)

 学生の生涯学習への準備を整えるカリキュラムを持たなくてはならない。(B 2.1.3)

 平等の原則に従い学生にカリキュラムが提供されるようにしなくてはならない。(B 2.1.4)

注 釈:

 [カリキュラム]とは目標とする教育成果、教育内容/シラバス、経験および課程を指し、計 画される教育と学習方法の構造、および評価法を含む。

カリキュラムでは、学生が達成すべき知識・技能・態度が明示されるべきである。

 [カリキュラムモデル]には、学体系を基盤とするもの、臓器器官系を基盤とするもの、臨 床課題や疾患特性を基盤とするもののほか、学習内容によって構築された教育単位また はらせん型(繰り返しながら発展する)が含まれる。

 [教育ならびに学習方法]は、講義、少人数グループ教育、問題基盤型あるいは症例基盤型 学習、相互学習(peer assisted learning)、体験実習、実験、臨床実習、臨床見学、臨床技 能教育(シミュレーション教育)、地域実地経験、およびweb を通じた学習を含む。

 [カリキュラムと教育の方法]は最新の学習理論に基づくべきである。

 [平等の原則]は、教員および学生を性、人種、宗教、性的嗜好、社会的経済的地位に関、

身体能力に配慮して等しく扱うことを意味する。

B2.1.1

医科大学・医学部は

 カリキュラムモデルを定めなくてはならない。(B 2.1.1)

A 基本的水準に関わる点検

本学は1996年度から6年一貫統合型カリキュラムを実施している。

このカリキュラムでは学年・講座の代わりにコース・ユニットを置いており、コースとし て、「医学総論」、「総合教育」、「外国語」、「生命基礎科学」、「基礎医科学」、

「医療情報・EBM」、「臨床基礎医学」、「社会医学」、「研究室配属」、「臨床医学」、

「選択実習」があり、それぞれのコースには科目に相当する複数のユニットが置かれてい る。

コースの概要図を示す(資料82)。

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【資料82 コース概要図】

各コース・ユニットの位置づけ、到達目標、学習上の注意、評価方法、講義スケジュー ルはシラバスに記載されている(資料43)。

本学のカリキュラムは、建学の精神をその中に組み込むために、1 年次には何を学習し、

その学習後に次のステップとしての2年次、3年次、4年次の学習があり、5年次の臨床実 習につなぎ、大学附属病院だけでは学びきれない医療についてはどの学年で何を経験させ るかを順次性の中で考えた構造化されたカリキュラムとなっている。

具体的には、1年間の国領校では、人文・社会科学、日本語表現法、数学、教養ゼミの ユニットから成る「総合教育」と、「生命基礎科学」(物理・生物・化学)を学ぶ。

コース「外国語」は1年~4年に設定されており、1年次では一般英語Ⅰと選択必修の初修 外国語(ドイツ語・フランス語・中国語)、2年次で一般英語Ⅱ、3年次に医学実用英語Ⅰ と医学英語専門文献抄録、4年次で医学実用英語Ⅱと幅広く長期に亘って学ぶ。

2年次から西新橋校に移り、「基礎医科学Ⅰ」で解剖学、生理学、生化学を学んだ後、基 礎系臓器別統合カリキュラム「基礎医科学Ⅱ」、3 年次には病因・病態、感染・生体防御、

ライフサイクル、行動科学などが含まれる「臨床基礎医学」と、法医学の内容を扱う「社 会医学Ⅰ」、そして6週間全日を使用しての「研究室配属」に続く。4年次には臨床系臓 器・機能別統合講義と、臨床実習に入るために最低限必要な基本的臨床能力(医療面接、

診療録作成、身体診察、検査と治療の基本手技、臨床推論)について「臨床医学Ⅰ」の中 で学ぶ。公衆衛生学「社会医学Ⅱ」も学ぶ。

臨床実習でevidence-based medicineを実践できるようにするために、「情報リテラシー(1 年)」、「医学統計学Ⅰ(2年)」、「医学統計学Ⅱ(3年)」、そして「EBM(4年)」

とつながるコース「医療情報・EBM」が用意されている。

5 年次では、41 週にわたり全日臨床実習で全科をローテートし(コース「臨床医学Ⅱ」)、

6年次前期の15週間は4週間を単位として学生自身が自分のカリキュラムを組むコース

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「選択実習」が設けられており、附属病院診療部、国内学外病院、海外の大学・病院さら に基礎医学研究施設等で学ぶ機会が提供されている。その後6年生は「国家試験準備オリ エンテーション」、「選択ゼミ」があり、卒業のための試験を受けることになる。

本学のカリキュラムの特徴は、「基礎系臓器別統合カリキュラム」と「臨床系臓器別統 合カリキュラム」の2巡構造になっていることである(資料83)。すなわち、2年次では まず人体の正常構造と機能を「基礎系臓器別統合カリキュラム」で「機能・臓器別」に学 び(基礎医科学Ⅰ、Ⅱ)、3年次臨床基礎医学では病因・病態をテーマに「個体」を対象 にし、社会医学では個体の集まりである「集団」を対象に学ぶ。そして4年次の臨床医学

Ⅰで再び「臨床系臓器別統合カリキュラム」に進んで「臓器別」に学んだ後に、臨床実習

(5年次)及び選択実習(6年次)で再び患者さんを一人の人間(個)として見ながら、

「個体」と「集団」の観点から疾患について考えて医学を学ぶという、臓器・個体を基 礎・臨床で2巡するという独特のカリキュラム設計となっているのである。この設計は、

基礎・臨床統合カリキュラムが人体を1つの「個」として考える機会が無い、という大き な欠点を勘案したものであり、まさに「病気を診ずして病人を診よ」の建学の精神をカリ キュラムに埋め込んで、分析的知識を病人という個体、及びその集合である

Population-based Medicine へと知識を統合する思想を反映している。

B 基本的水準についての評価

1996年度以降、臓器別→個体、基礎→臨床の2層構造のカリキュラムを実施しており、

カリキュラムの基本構造は整っていると考えている。学生を含めたカリキュラムに関する 議論でもこのカリキュラム構造に対する疑義は出ていない。

コース・ユニット制ではそれぞれのコースに教育科目としてのユニットを置き、それぞ れに1年任期のコース責任者、ユニット責任者を決定している(資料84)。コース責任者 は、そのコースの各ユニットでの教育内容を調整し、6年一貫医学教育におけるそのコー スの役割を絶えず点検、調整する。コース責任者は各コース間の教育内容の点検、調整も 行い、絶えずカリキュラムを自己点検し、毎年、大学が発行する「教育・研究年報」にそ の年の教育活動を報告しなければいけないシステムとなっている(資料85)。

2013年度に卒業時達成指針が設定された(資料4)が、まだそのアウトカムを獲得する ためのマイルストーンが設定されていない。マイルストーンを設定し、その目標に学生全 員が到達するためのコース・ユニットでの教育目標の設定を急がなければならない。螺旋 型カリキュラムの中で、学生が自ら見いだした学習課題について、どのように解決してい くかの支援、自己学習のやり方や教員による学習支援の方法、特にe-learning を中心に考 えていく必要がある。

C 改善に向けた提言

アウトカム基盤型カリキュラムを構築するために、卒業時アウトカムからマイルストー ンを設定し、それを各授業科目の教育目標に落とし込んでいく作業は2014年度から開始す る。2014年度のシラバスではこのような教育の水平的統合や垂直的統合は図られていない が、2015年度、2016年度をめどに科目間の水平的統合や垂直的統合を図る努力を、カリキ ュラム委員会を中心に学生とともに計画する。

D 改善に向けた計画

アウトカム基盤型カリキュラムが構築されているかの検証に加え、アウトカムが妥当性 と信頼性を持って評価されているのかを検証し、カリキュラムの修正、改善を図る。

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B2.1.2

医科大学・医学部は

 採用する教育法ならびに学習法を定めなくてはならない。(B 2.1.2)

A 基本的水準に関わる点検

学習方法としては講義、演習、実習、臨床実習を明確に分け、講義では出席を取らず

(資料86)、学生に自由な学習方法の選択を許しながらも、コース総合試験で厳格な知識 の評価を行っている。演習、実習では厳格な出席制度を履行し、その場にいなければ学べ ない項目、例えば体験学習、グループ討論、問題解決学習、グループ内での適切な行動を 評価する仕組みとなっている。

講義を担当する教員が本学の教育理念に沿った講義を行うようにと、その意義について のメッセージが、前学長の阿部正和先生(資料87)と栗原敏先生(資料88)から伝えられ ている。

講義で得た能力と演習・実習で学生が身に付ける能力を明確に区分けし、知識以外の技 能・態度そしてFitness to Practise がいかに重要であるかを、評価を用いて学生に伝えてい る。知識を応用するPBL-テュートリアルとして、3年次の症候学演習(問題解決型テュー トリアル)を半年間(35コマ)、4年次の臨床医学演習(臨床推論テュートリアル)を通 年(60コマ)で組み込み、またこのテュートリアルの準備教育として1年次、2年次に医 療倫理関係の話題についてのグループ討論(TBLを含む)をコース医学総論で実施してい る。

1年次の国領教育(準備教育)、2年次・3年次の基礎医学系教育では実習を含めActive

Learning の機会を組み込んでおり、4年次の臨床医学系では臓器別講義に連動する形で病

理学各論、臨床系テュートリアル(臨床医学演習)、および技能系教育である基本的臨床 技能実習としてActive Learningを組みこんでいるが、学生の負担を考えるとまだまだ講義 偏重となっている。

1年次からグループ学習の有用性について説明し、グループ学習を促進する方針がとら れているが、2014年度のシラバスから、少人数のグループ学習を編成する場合についての 記載が求められる様になり、カリキュラムの中でのグループ学習の割合が明示される様に なった(資料7)。

症候学演習や臨床医学演習の教材、アンケートなどのためにe- learningが用いられてお り(資料40)、2012年度からは医学総論を中心にクリッカーを使用した授業を行っている

(資料89)。

臨床講義については、臨床実習のフィードバックとの連続性を考えた上で、講義で教え 込むことをしぼるべきとの方針のもと、2010年度から従来の90分講義から70分講義への 短縮を図った(資料90)。

B 基本的水準についての評価

教育方法と学習方法については今後十分な検討が必要である。今までの教え込む教育か ら、学生が自ら学ぶ学習へと移行していく必要性について、医学教育分野だけでなく、広 く初等・中等教育で、そして高等教育でも論じられている。反転授業、PBL-テュートリア ル、TBL、自己学習(e-learning)など、学生の学習効果を高めるための新たな教育・学習 方法の導入を調査研究に基づいて検討する必要がある。

現行のカリキュラムでの受動的学習(講義)と能動的学習(演習・実習)の教育時間比 率を示す(資料91)。

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ドキュメント内 Standard: (ページ 30-39)