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臨床医学と技能

ドキュメント内 Standard: (ページ 53-62)

2. 教育プログラム

2.5 臨床医学と技能

基本的水準:

医科大学・医学部は

 臨床医学について、学生が以下を確実に実践できるようにカリキュラムを明示し実践しなけ ればならない。

 卒業後に適切な医療的責務を果たせるように十分な知識、臨床および専門的技能の修得

(B 2.5.1)

 卒後の研修・診療に準じた環境で、計画的に患者と接する教育プログラムを教育期間中 に十分持つこと(B 2.5.2)

 健康増進と予防医学体験(B 2.5.3)

 重要な診療科で学習する時間を定めなくてはならない。(B 2.5.4)

 患者安全に配慮した臨床実習を構築しなくてはならない。(B 2.5.5)

注釈:

 [臨床医学]は、地域の必要性、関心および歴史的経緯により、麻酔学、皮膚科学、放射

線診断学、救急医学、総合診療/家庭医学、老年医学、産婦人科学、内科学(各専門領 域を含む)、臨床検査学、医用工学、神経科学、脳神経科学、腫瘍学ならびに放射線治 療学、眼科学、整形外科学、耳鼻咽喉科学、小児科学、緩和医療学、理学療法学、リハ ビリテーション医学、精神科学、外科学(各専門領域を含む)および性病学(性感染症)

が含まれる。臨床医学にはまた、卒後研修・専門研修をする準備段階の教育を含む

 [臨床技能]には、病歴聴取、身体診察、医療面接の技能、手技・検査、救急診療、薬物

処方および治療実践が含まれる。

 [専門的技能]には、患者管理技能、協働とリーダーシップの技能、職種間連携が含まれ

る。

 [適切な医療的責務]は、健康促進、疾病予防および患者ケアに関わる医療活動を含む。

 [教育期間中に十分]とは、教育期間の約 3 分の 1 を指す。(日本では 6 年教育の 1/3で、

概ね 2 年間を指す)

 [計画的に患者と接する]とは、学生が診療の状況の中で十分に学ぶことができる頻度と目的を

考慮することを意味する。

 [臨床領域で学習する時間]には、臨床体験(ローテーション)とクラークシップが含まれる。

 [重要な診療科]には、内科(各専門科を含む)、外科(各専門科を含む)、精神科、総合診療

科/家庭医療科、産婦人科および小児科を含む。

 [患者安全]では、学生の医行為に対する監督指導が求められる。

 [早期に患者との接触機会]とは、その一部をプライマリ・ケア診療のなかで行ない、患者から

の病歴聴取や身体診察および医療コミュニケーションを含む。

 [実際の患者診療への参画]は、地域医療環境で患者への検査および治療の一部を監督指

導下に責任を果たすことを含む。

日本版注釈:

 臨床技能教育は、低学年での患者との接触を伴う臨床現場での実習から高学年での参加 型臨床実習を含み、全体で 6 年教育の 1/3 で、概ね 2 年間を指す。

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B 2.5.1

医科大学・医学部は

 臨床医学について、学生が以下を確実に実践できるようにカリキュラムを明示し実践しなけ ればならない。

 卒業後に適切な医療的責務を果たせるように十分な知識、臨床および専門的技能の修得

(B 2.5.1)

A 基本的水準に関わる点検

4年次以降の臨床系カリキュラムは2015年度より大幅に改編される。この臨床系カリキ ュラムの改編は平成24年度文部科学省補助金「グローバルな医学教育認証に対応した診療 参加型臨床実習の充実」(臨床実習GP)によるものである。

現行の臨床系カリキュラムは、4年次コース臨床医学Ⅰ(講義による知識の伝達)、5年 次臨床医学Ⅱ(臨床実習)、6年次臨床医学Ⅲ(選択実習)からなっている。4年次の臨床 系カリキュラムは臓器別統合カリキュラムで、講義・病理学各論実習・臨床医学演習(テ ュートリアル)で構成され、例えば「循環器」ブロックの講義を実施する期間に、循環器 の病理学各論実習と循環器系疾患のテュートリアルが並走する形となっている。4年次後 期には午後3時間が30回の基本的臨床技能実習がある。ここでは、診療参加型臨床実習に 必要最低限の基本的診療・検査・手技と医師としての基本的な態度を身につけることを目 標とし、医療面接、診療録記載、内科・小児科の診療手技、基本的外科手技、検査、輸血、

疼痛管理、リハビリテーションなどの研修を行う。コース臨床疫学としてEvidence-based

Clinical Practice も並走し、4年次では臨床医学に関する知識・技能・EBMそして病理学各

論が統合されて提供されている。

現行の臨床実習(患者接触プログラムを含む)は、1年次から4年次で6週間、5年次で 41週間、6年次で15週間の合計62週が必修化されており、学生が希望すればこれに加え てプライマリケア・選択学外臨床実習での単位を積み重ね、72週を超える臨床実習が可能 となっている。2015年度以降の臨床医学カリキュラム改訂では必修として74週の臨床実 習が確保されることとなる。2015年度からの臨床系カリキュラム改訂の趣旨は、申請書に 記載した(資料75)。

B 基本的水準についての評価

卒業後に適切な医療的責務を果たせるような十分な知識、臨床および専門的技能のうち、

知識については卒業試験と医師国家試験によってある程度の評価がなされてはいるものの、

臨床的技能についての評価は5年次OSCE(資料112)までであり、卒業後に適切な医療的 責務を果たせるかは検証されていない。また、薬物処方などの実践的な薬理学が十分に行 われていない。

C 改善に向けた提言

2015年以降の臨床系カリキュラムを遂行する中で、学生が臨床の場でどのような経験を したかのデータを収集し、重要疾患や症候の経験の統計をとり、さらには予防医学や健康 増進の学習機会の回数・内容を分析し、さらなる臨床実習カリキュラムの改善に臨む。教 育病院や診療所などを利用することによる教育環境整備を図り、問題を解決する方法を検 討する。

臨床実習カリキュラムの改善に向けては、教育IR 部門でのデータ収集と解析とが重要と なる。さらに2015年度より、教育アドバイザーを導入することで、臨床実習を総括的に検

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証することにより、現場での学生・指導医の教育課程の改善にも取り組むことが決まって いる(資料94)。

D 改善に向けた計画

教育IRのデータ解析や、教育アドバイザーの観察記録を、臨床実習改善につなげるシス テムを確立していく。

B 2.5.2

医科大学・医学部は

 臨床医学について、学生が以下を確実に実践できるようにカリキュラムを明示し実践しなけ ればならない。

 卒後の研修・診療に準じた環境で、計画的に患者と接する教育プログラムを教育期間中 に十分持つこと(B 2.5.2)

A 基本的水準に関わる点検

患者接触プログラムは現行カリキュラムで以下の様に実施されている。

 1年次:Early Clinical Exposure (5月と2月):2日間、病院業務見学実習3日間、福 祉体験実習(1週間)

 2年次:重症心身障害児療育体験実習(1週間)、地域子育て支援体験実習(1週 間)

 3年次:在宅ケア実習(1週間)

 4年次:病院業務実習(1週間)

の合計6週間が必修単位となっており、2015年度にはさらに3年次の高齢者医療体験実習

(1週間)が加わる(資料111)。

選択単位として1年次以降に「プライマリケア・選択学外臨床実習」が正課外で履修可能 となっている。

参加型臨床実習として

 5年次:臨床医学II (41週間)

 6年次:選択実習 (15週間) を実施している。

B 基本的水準についての評価

2015年度からの臨床系カリキュラム改訂の実施によって、①実習週数の拡大、②重要診 療科での実習数の確保、③診療参加型臨床実習の充実、④様々な場での臨床実習(附属病 院以外の大学教育病院でのクラークシップ)などの課題は解決される。

C 改善に向けた提言

2015年度からの臨床系カリキュラムの大幅な改訂について、その内容の詳細を現在検討 している。臨床系カリキュラム改訂では必修として74週の臨床実習が確保されることにな る。2015年度からの臨床系カリキュラム改訂の趣旨は申請書に記載した(資料75)。

D 改善に向けた計画

2015年度に行われる予定の臨床系カリキュラム改訂後には、その教育成果についての評 価が必要である。

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B 2.5.3

医科大学・医学部は

 臨床医学について、学生が以下を確実に実践できるようにカリキュラムを明示し実践しなけ ればならない。

 健康増進と予防医学体験(B 2.5.3)

A 基本的水準に関わる点検

健康増進と予防医学体験については、4年次の社会医学Ⅱで社会福祉・社会保証・医療 経済、食品衛生、産業衛生、医療法規、医療事故・突然死・死体検案、環境衛生、地域保 健、保健統計、疫学についての授業が行われている。また、5年次臨床実習では家庭医実 習があり、地域のクリニックで学生は患者支援のプログラムを実施している。さらに選択 科目として希望者は「産業医実習」を経験することができる(資料113)。

B 基本的水準についての評価

健康増進、予防医学の経験は必ずしも十分とは言えないが、希望者には「産業医実習」

を行っており、学ぶ環境が提供されている。

C 改善に向けた提言

4年生までに総論的に健康増進と予防医学にかかわる教育がなされているが、臨床実習に おいてはより具体的にその重要性が実感できる教育が必要となる。つまり、喫煙、薬物依 存、アルコール中毒など健康に好ましくない悪癖・習慣・中毒・依存の予防、さらには偏 見・ストレス・誤解から心の病に至るまでの教育などが必要であろう。例えば、内科分野 においては喫煙やメタボリック症候群などがもたらす生活習慣病について症例を通してそ の予防の重要性を実感できるものにしなければならない。精神神経科やリハビリテーショ ン科でも予防医学の意義を実感できる症例は多いと思われることからそう云う側面からの 教育も必要であろう。

D 改善に向けた計画

低学年から高学年まで各分野との連携を強化して包括的な健康増進教育がなされている かを検証していく必要がある。

B 2.5.4

医科大学・医学部は

 重要な診療科で学習する時間を定めなくてはならない。(B 2.5.4)

A 基本的水準に関わる点検

現行カリキュラムにおいて、4年生までの患者接触プログラムでプライマリケアと位置 付けられている実習は6週間、内科臨床実習は12週間、外科は4週間、小児科4週間を確 保している。しかし、産婦人科 2 週間、精神科 2週間、救急医学 2週間であり、産婦人科、

精神科、救急医学の臨床実習数が不十分である。2015年度以降のカリキュラムではこの重 要診療科は全て4週になるように計画されている。

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ドキュメント内 Standard: (ページ 53-62)