第 4 章 実稼働モード推定のための構造同定条件に関する解析的検討
4.3 各手法の運用性の解析的検討
4.3.2 計測条件の影響
-82-ERA,ERA/DC,SSIのいずれにおいても,特異値分解によって得られる各行列の行数は上記の初期 モデル次数に相当する.上述したように,初期モデル次数は同定対象のモデル次数よりも大きめに定 めるが,特異値が小さい成分に対してモデルの推定を行うと,不安定な結果が得られるため,特異ベ クトル長を定める必要がある.特異ベクトル長は,推定モデルの次数となるため,推定結果の良否を 左右する最も重要なパラメータである.
特異ベクトル長に関する検討は先行事例にあるようにスタビリゼーション図によるものが適当であ り,本章においても各手法に対して同様の検討を行った.特異ベクトル長の検討は既往の研究におい て数多く行われているため,本文では結果の図示を省略するが,検討の結果,いずれの手法において も最適値は対象構造モデルの2倍値に相当するものであった.
デルに対しては100Hzが十分なサンプリング速度であるといえる.
図-4.3.11 サンプリング速度による前進SSIの振動数推定結果の差異
(赤丸点:時間刻み0.02秒応答による推定値,黒角点:時間刻み0.01秒応答による推定値)
(2)観測ノイズの影響
上述したように,応答の励起状態と含まれる観測ノイズレベルによって推定結果は大きく変動する.
ここでは,観測ノイズが推定結果におよぼす影響を分析し,各同定手法の耐ノイズ性を評価する観点 で考察する.応答レベルの 0%から 50%相当まで段階的に観測ノイズを重畳した応答を用い,各手法 における振動数および減衰定数の推定を行った.例として,ノイズレベル30%の応答を用いた各手法 による振動数の推定結果を図-4.3.12に示す.ノイズの影響は,ERAおよびERA/DC において,図-4.3.12 (a)および同図(b)に示すように,推定結果の信頼性を定量的に示す MAC(Modal Assurance Criterion)4-3)の低下に表れている.特に,高次側の推定結果において影響が大きくなることがわかる.
ノイズの影響の大小を後述する変動係数の変化で評価すると,ERA とERA/DC ではノイズレベルの 増大にしたがって変動が顕著に大きくなった.また,ERA/DCにおいては,ノイズが含まれないケー スよりも第1および第2相関パラメータを大きめに設定すると,計測ノイズの影響を少なからず低減 できることがわかった.
一方で,SSIはノイズの影響が他手法と比較して小さいことを確認した.SSIは他の2手法よりも耐 ノイズ性に優れたロバストな同定手法であるといえる.
Iteration
0 5 10 15 20 25 30
01 23 45 67 89 1011 1213 1415 1617 1819
20 Natural frequency, noise level = 0 [%]
-84-(a) ERA
(b) ERA/DC
(c) 前進SSI
図-4.3.12 ノイズレベル30%重畳応答に対する振動数推定結果
((a)ERAおよび(b)ERA/DCの結果における 印はMAC<0.8) Iteration
0 10 20 30 40 50
01 23 45 67 89 1011 1213 1415 1617 1819
20 Natural frequency, noise level = 30 [%]
Iteration
0 10 20 30 40 50
Frequency[Hz]
01 23 45 67 89 1011 1213 1415 1617 1819
20 Natural frequency, noise level = 30 [%]
Iteration
0 10 20 30 40 50
01 23 45 67 89 1011 1213 1415 1617 1819
20 Natural frequency, noise level = 30 [%]