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第 6 章 構造同定手法を援用した有限要素モデルの精緻化

6.6 まとめ

本章では,実構造物の加速度計測結果からSSIにより推定された固有振動数を参照値として,設計 値より作成した初期 FE モデルのパラメータを更新するモデルアップデートにより,実構造の動特性 を再現する FEモデルの精緻化手法を構築した.そして,5層ラーメンモデルによる簡易構造系と亀 裂損傷が発生した三径間連続鋼箱桁橋を対象として,構築した手法の妥当性を検証した.得られた結 果を以下にまとめる.

1) 5 層ラーメンを対象とした簡易構造系における検証の結果,固有振動数についてはモデル更新前 後の誤差率が0.004%以下となり,実構造とほぼ同等の動特性を再現することができた.しかし,

モデルパラメータとした板厚については,モデル更新前後で最大約13.6%の変動が生じ,板厚の 計測結果と一致しない結果となった.その要因としては,板厚以外の構造特性(ヤング係数や質 量密度)が実値と異なることや,モデルの境界条件や部材接合部の結合条件が実際と異なること が想定されるため,適切なモデルパラメータを選定することで更なる制度向上が期待できると考

-140-えられる.

2) 実橋を対象とした鋼箱桁橋における検証の結果,簡易構造系と同様に固有振動数については実橋 とほぼ同等の動特性を再現することができた.なお,更新するモデルパラメータとして板厚の他 に弾性係数と質量密度を考慮しており,更新後の結果がJIS規格と比較して一部条件を満足しな いものの,材料特性のばらつき等を考慮すると概ね妥当なモデル値に更新できた.本章では精緻 化手法構築の基礎的研究と位置づけて,固有振動数のみを目的関数としたが,固有振動モードを 用いた目的関数を定義することで,実橋の構造状態をより高い精度で再現するようにFEモデル が精緻化されることが期待される.

3) 疲労亀裂が生じた鋼箱桁橋を対象とした検証において疲労寿命を推定した結果,設計時の支承条 件を再現したCase1では67年,固定支承の回転機能の喪失を再現したCase2では34年となった.

いずれのケースも実橋の疲労寿命(49年)とは一致しなかったものの,本研究で構築した手法を 適用したことで,Case1では更新前よりも実橋に近い疲労寿命が推定することができたことから,

更新後のモデルの妥当性を検証した.ただし,応力解析では大型車を全て20t車と考えた場合の

200kNの単一荷重を載荷していることや,変動応力の出力位置によって疲労寿命が変わることな

ど,疲労寿命の推定結果にも若干の不確実性が含まれていることから,更新後のモデルの妥当性 をより正確に確認するためには,実橋から得られるひずみ等の実測記録を用いて比較を行うなど の課題がある.

4) 今後の実用化を踏まえると,参照値となる実応答に対する SSI の推定結果からの抽出において,

推定結果がばらつく場合には計算者の経験や主観に依るため客観的な抽出方法を検討する必要 がある.また,モデルの精緻化については,橋梁形式や振動励起状態の異なるデータに対する検 証を行うことや,内点法以外の最適化計算手法についても適用性を検証することで,更なる更新 精度の向上が期待できる.

【第 6 章の参考文献】

6-1)天谷賢治:工学のための最適化手法入門,数理工学社,2008

6-2)Byrd, R.H., J. C. Gilbert, and J. Nocedal:A trust region method based on interior point techniques for nonlinear programming, Mathematical Programming, Vol 89, No. 1, pp. 149–185, 2000.

6-3)Byrd, R.H., Mary E. Hribar, and Jorge Nocedal:“An interior point algorithm for large-scale nonlinear programming,” SIAM Journal on Optimization, Vol 9, No. 4, pp. 877–900, 1999.

6-4)Waltz, R. A. , J. L. Morales, J. Nocedal, and D. Orban:An interior algorithm for nonlinear optimization that combines line search and trust region steps, Mathematical Programming, Vol 107, No. 3, pp. 391–408, 2006.

6-5)K.Karmarkar:A new polynomial-time algorithm for linear programming,Combinatorica,4(1984),373-395 6-6)Broyden,C.G. : The convergence of a class of double-rank minimization algorithms,Journal

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6-7)Flecher,R.:A new approach to variable metric algorithms,Computer Journal,Vol.13,pp.317-322,1970.

6-8)Goldfarb,D.:A family of variable metric updates derived by variational means,Mathematics of Computing,Vol.24,pp.23-26,1970.

6-9)Shanno,D.F.:Conditioning of Quasi-Newton methods for dunction minimization,Mathemitics of Computing,Vol.24,pp.647-656,1970.

6-10)前田宣天,中村聖三,奥松俊博,西川貴文:3径間連続鋼箱桁橋における支承の機能劣化による ソールプレート近傍の応力状態の変化,平成 28年度土木学会西部支部研究発表会講演概要集,

I-004,2017.3.

6-11)日本道路協会:道路橋示方書・同解説,2012.3.

6-12)日本道路協会:鋼道路橋の疲労設計指針,pp. 5-17,2002.

6-13)国土交通省道路局:平成22年度 全国道路・街路交通情勢調査(道路交通センサス)