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同定パラメータの影響

第 4 章 実稼働モード推定のための構造同定条件に関する解析的検討

4.3 各手法の運用性の解析的検討

4.3.1 同定パラメータの影響

-72-4.3 各手法の運用性の解析的検討

ERA における初期モデル次数 による振動数および減衰定数の推定結果の変化を,それぞれ図-4.3.1および図-4.3.2に示す.図-4.3.1の振動数の推定結果には初期モデル次数による差異が見られ ないが,図-4.3.2に示すように減衰定数については初期モデル次数が小さいと推定誤差が大きくなる ことがわかる.さらに,推定結果の統計量の変化に着目し,推定振動数の変動係数の変化を図-4.3.3 に示す.同図より,初期モデル次数が対象モデルに対して小さいと推定結果の変動が大きく,また一 方で初期モデル次数が大き過ぎる場合には特に高次側で変動が大きくなる傾向が見て取れる.

ERA/DCにおいては,ERAにおける共分散行列からさらに共分散ブロック行列を構成するため,モ

デル次数に関わる二つのパラメータを定める必要があり,相互に推定結果に影響をおよぼす.そこで,

第一モデル次数 と第二モデル次数 の組み合わせに対する推定結果の差異について検討した.ここで は,紙面の制約上,スタビリゼーション図は省略するが,ERAに比べて第一および第二モデル次数が 小さい範囲で適正な推定値が得られる結果となった.これは特異値分解の計算負荷が軽減される ERA/DCの特長といえる.

次に,前進SSIにおけるデータブロック行列のサイズパラメータkの影響について示す.サイズパ ラメータkより,データブロック行列の行ブロック数2kが定まる.サイズパラメータによる振動数お よび減衰定数の推定結果の変化を,それぞれ図-4.3.4および図-4.3.5に示す.これらより,サイズパ ラメータには明確な適正範囲があり,振動数と減衰定数の双方で検討することで,適正値が定められ ることがわかる.後進SSIにおけるサイズパラメータの影響は,ERAおよびERA/DCとの比較に対し て前進SSIとの差異は大きくないため省略する.

-74-図-4.3.1 初期モデル次数による振動数推定結果の変化

(ERA,ノイズ0%,横軸:振動数,縦軸:初期モデル次数,波形は速度応答のパワースペクトル)

図-4.3.2 初期モデル次数による減衰定数推定結果の変化

(ERA,ノイズ0%,横軸:初期モデル次数,縦軸:減衰定数,実線:h=0.02) Frequency[Hz]

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 5

10 15

20 Stabilization diagram

5 10 15 20 0

0.05

5 10 15 20 0

0.05

5 10 15 20 0

0.05

5 10 15 20 0

0.05

5 10 15 20 0

0.05

5 10 15 20 0

0.05

5 10 15 20 0

0.05

5 10 15 20 0

0.05

5 10 15 20 0

0.05

5 10 15 20 0

0.05

The num. of block rows 5 10 15 20 0

0.05

The num. of block rows 5 10 15 20 0

0.05

図-4.3.3 初期モデル次数による推定減衰定数の変動係数の変化

(ERA,ノイズ0%,横軸:初期モデル次数,縦軸:変動係数)

C.V.[%] C.V.[%]

C.V.[%] C.V.[%]

C.V.[%] C.V.[%]

C.V.[%] C.V.[%]

C. V .[ % ] C. V .[ % ]

C.V.[%] C.V.[%]

-76-図-4.3.4 データブロック行列のサイズパラメータによる振動数推定結果の変化

(前進SSI,ノイズ0%,横軸:振動数,縦軸:サイズパラメータ)

図-4.3.5 データブロック行列のサイズによる減衰定数推定結果の変化

(前進SSI,ノイズ0%,横軸:サイズパラメータ,縦軸:減衰定数,実線:h=0.02)

50 100 150 200 0

0.05

50 100 150 200 0

0.05

50 100 150 200 0

0.05

50 100 150 200 0

0.05

50 100 150 200 0

0.05

50 100 150 200 0

0.05

50 100 150 200 0

0.05

50 100 150 200 0

0.05

50 100 150 200 0

0.05

50 100 150 200 0

0.05

Matrix size parameter: k 50 100 150 200 0

0.05

Matrix size parameter: k 50 100 150 200 0

0.05

(2)相関パラメータ

ERA およびERA/DC における共分散ブロック行列は,応答の相関長さに関するパラメータの一つ

である.本章では,これを相関パラメータと記す.ERAにおける相関パラメータ の設定値による推 定結果の差異は,振動数および減衰定数のそれぞれについて図-4.3.6 および図-4.3.7 のようになっ た.振動数の推定結果においては50 から230の範囲で差異は見られないが,減衰定数の推定結果か ら,モードごとの差異はあるものの150から200の範囲に適正値があることがわかる.

図-4.3.6 相関長さによる振動数推定結果の変化

(ERA,ノイズ0%,横軸:振動数,縦軸:相関長さ.図中の 印はMAC<0.8)

図-4.3.7 相関長さによる減衰定数推定結果の変化

(ERA,ノイズ0%,横軸:相関長さ,縦軸:減衰定数,実線:h=0.02)

Frequency[Hz]

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 50

100 150 200

250 Stabilization diagram

100 200

0 0.05

100 200

0 0.05

100 200

0 0.05

100 200

0 0.05

100 200

0 0.05

100 200

0 0.05

100 200

0 0.05

100 200

0 0.05

100 200

0 0.05

100 200

0 0.05

The num. of block columns

100 200

0 0.05

The num. of block columns

100 200

0 0.05

-78-(3)データセグメント長

データの集録から振動特性の推定に至る一連のプロセスを常時または定期的に連続して行う実稼 働モード推定においては,推定計算に用いる応答長も重要なパラメータである.本文では,これをデ ータセグメント長と記す.前項までの検討と異なり,セグメント長が変化すると同定計算に用いる全 体の応答が異なることになるため,全体の応答長を一様に定め,同定結果の変動の大きさによってデ ータセグメント長の評価を行うこととした.

データセグメント長が重要なパラメータとなる減衰特性の推定について,ERA,ERA/DCおよび前 進 SSI におけるデータセグメント長と減衰定数の推定結果の変動の関係をそれぞれ図-4.3.8,図-4.3.9,図-4.3.10に示す.いずれの手法においても,当然ながらセグメント長が長いほど変動は小さ くなる傾向が共通しており,低次モードの推定精度を向上させるためには,セグメント長を長めに設 定することが有効である.ERAとERA/DCはほぼ同様の結果を示しているが,前進SSIはこれらと比 較して低次側ではいずれのセグメント長においても7~10%程度,高次側では6,000以下のセグメント 長において5%程度変動が小さい結果となっている.SSIでは,他の2手法と比較してセグメント長を 短く定め,推定回数を増加させることが可能といえる.

(a) 1次~6次モード

(b) 7次~12次モード

図-4.3.8 セグメント長と減衰定数推定結果の変動係数の関係

(ERA,ノイズ0%,横軸:セグメント長,縦軸:推定減衰定数の変動係数)

Length of data segment: N

2000 0 4000 6000 8000 10000 12000

20 40 60

80 Coefficient of variation of damping ratio: mode of 1 to 6

Mode 1 Mode 2 Mode 3 Mode 4 Mode 5 Mode 6

Length of data segment: N

2000 4000 6000 8000 10000 12000

C .V . of da m pin g ra ti o [% ]

0 10 20 30

40 Coefficient of variation of damping ratio: mode of 7 to 12 Mode 7 Mode 8 Mode 9 Mode 10 Mode 11 Mode 12

-80-(a) 1次~6次モード

(b) 7次~12次モード

図-4.3.9 セグメント長と減衰定数推定結果の変動係数の関係

(ERA/DC,ノイズ0%,横軸:セグメント長,縦軸:推定減衰定数の変動係数)

Length of data segment: N

2000 0 4000 6000 8000 10000 12000

20 40 60

80 Coefficient of variation of damping ratio: mode of 1 to 6

Mode 1 Mode 2 Mode 3 Mode 4 Mode 5 Mode 6

Length of data segment: N

2000 0 4000 6000 8000 10000 12000

10 20 30

40 Coefficient of variation of damping ratio: mode of 7 to 12

Mode 7 Mode 8 Mode 9 Mode 10 Mode 11 Mode 12

(a) 1次~6次モード

(b) 7次~12次モード

図-4.3.10 セグメント長と減衰定数推定結果の変動係数の関係

(前進SSI,ノイズ0%,横軸:セグメント長,縦軸:推定減衰定数の変動係数)

(4)特異ベクトル長

本章で取り上げる構造同定手法では,いずれにおいても計算過程において特異値分解を行う.特異 値分解は,非正方行列を式(4-1)のように対角成分に非負実数の特異値 ii 1 ~n)を有する実対角 行列と,2つの直交行列に分解する.

1, 2, , n | n m n diag

D 0 (4-1)

Length of data segment: N

2000 0 4000 6000 8000 10000 12000

20 40 60

80 Coefficient of variation of damping ratio: mode of 1 to 6

Mode 1 Mode 2 Mode 3 Mode 4 Mode 5 Mode 6

Length of data segment: N

2000 4000 6000 8000 10000 12000

C .V . of da m pin g ra tio [% ]

0 10 20 30

40 Coefficient of variation of damping ratio: mode of 7 to 12

Mode 7 Mode 8 Mode 9 Mode 10 Mode 11 Mode 12

-82-ERA,ERA/DC,SSIのいずれにおいても,特異値分解によって得られる各行列の行数は上記の初期 モデル次数に相当する.上述したように,初期モデル次数は同定対象のモデル次数よりも大きめに定 めるが,特異値が小さい成分に対してモデルの推定を行うと,不安定な結果が得られるため,特異ベ クトル長を定める必要がある.特異ベクトル長は,推定モデルの次数となるため,推定結果の良否を 左右する最も重要なパラメータである.

特異ベクトル長に関する検討は先行事例にあるようにスタビリゼーション図によるものが適当であ り,本章においても各手法に対して同様の検討を行った.特異ベクトル長の検討は既往の研究におい て数多く行われているため,本文では結果の図示を省略するが,検討の結果,いずれの手法において も最適値は対象構造モデルの2倍値に相当するものであった.