第 6 章 構造同定手法を援用した有限要素モデルの精緻化
6.4 簡易構造系における精緻化手法の検証
6.4.2 簡易構造系のモデル化と精緻化
(1)簡易構造系のFEモデル化
初期モデルは図-6.4.1に示した設計値に基づいて作成した.図-6.4.3に初期FEモデルの概要を 示す.
Y
Z X
General of FE model
Element 3D Shell
Young’s Modules 70.3 kN/mm2 Mass density [kg/mm3]
Wall 2.70×10-6
Slab 3.87×10-6
Plate thickness [mm]
Wall 1.0000 Slab 5.0000
Support condition
DX DY DZ RX RY RZ Fixed Fixed Fixed Fixed Fixed Fixed
Natural frequency [Hz]
1st Mode 2nd Mode
2.5933 7.6290 図-6.4.3 初期FEモデルの概要
-126-(2)精緻化の対象
精緻化の対象は左側各層間部材の板厚(5種類),右側各層間部材の板厚(5種類),各層床部材の板 厚(5種類)とし,設計値をその初期値とした.表-6.4.2に対象とするモデルパラメータとその初期 値をまとめる.
表-6.4.2 精緻化の対象と初期値
No. 対象 初期値
x1
層間部材(左側)
第1層 板厚 [mm] 1.000 x2 第2層 板厚 [mm] 1.000 x3 第3層 板厚 [mm] 1.000 x4 第4層 板厚 [mm] 1.000 x5 第5層 板厚 [mm] 1.000 x6
層間部材(右側)
第1層 板厚 [mm] 1.000 x7 第2層 板厚 [mm] 1.000 x8 第3層 板厚 [mm] 1.000 x9 第4層 板厚 [mm] 1.000 x10 第5層 板厚 [mm] 1.000
No. 対象 初期値
x11
床部材
第1層 板厚 [mm] 5.000 x12 第2層 板厚 [mm] 5.000 x13 第3層 板厚 [mm] 5.000 x14 第4層 板厚 [mm] 5.000 x15 第5層 板厚 [mm] 5.000
(3)精緻化の結果
①目的関数と固有振動数の推移
FEモデルの更新に伴う目的関数の変化を図-6.4.4 に示す.目的関数の値はパラメータの更新に伴 って減少し,収束条件を満たすことで計算は終了した.表-6.4.3にFEモデルと実験モデルの固有振 動数を示す.
図-6.4.4 精緻化のFEモデルの更新に伴う目的関数値の推移 表-6.4.3 更新前後のFEモデルの固有振動数[Hz]
Mode
FE Model
Measurement Before updating After updating
1 2.5933 2.2197 2.2198
2 7.6290 6.7616 6.7618
②モデル更新前後の誤差率
更新前後の FEモデルの固有値解析結果と実測値に基づく固有振動数の差異を評価するために,を 比較するために、誤差率εを(6.36)式で定義した
ここに, fは固有振動数,添字iはモード次数,aは解析値,mは加速度応答からSSIにより推定 された値である.
更新前後の固有振動数の誤差率を図-6.4.5に示す. 図-6.4.5では、更新前の固有振動数の誤差率 は,第1モードで16.824%,第2モードで12.825%であった.しかし、モデルの更新後は,第1モー ドで0.004%,第2モードで0.003%となり,更新後は各モードで固有振動数の誤差率が減少している。
これは、更新されたFEモデルが実構造とほぼ同等の動特性を再現できることが確認できた.
100 %
ai mi
mi
f f
f [%] (6.36)
-128-図-6.4.5 更新前後のFEモデルの固有振動数の誤差率
③モデルパラメータの変化
FEモデルの更新パラメータとした各部材の板厚について,実構造の板厚を計測し,FEモデルの更 新結果と比較を行った.実モデルにおける各部材の厚さは,図-6.4.6に示す各部材の10点でマイク ロメータを用いて測定した平均値とした.
表-6.4.4にモデルパラメータとした各部材の板厚について,更新前後のFEモデルと実構造の測定 結果の比較を示す。表-6.4.4より更新前後の板厚変動は,層間部材(wall)では-13.57~-2.48%で下層 ほど小さく更新され,床部材(Slab)では+0.16~+1.69%で上層ほど大きく更新されている.また,層 間部材の値は左右で同じ値に更新されており,各層両側の層間部材の板厚の目的関数に対する感度が 等しいためと考えられる.更新後のモデルパラメータの値を計測した板厚と比較すると,いずれの値 も計測値と一致しなかった.
検証の結果、更新モデルと実モデルの固有振動数はほぼ一致したものの,更新された FEモデルパ ラメータと実モデルの板厚測定値は一致しなかった.その要因としては,板厚以外の構造特性(ヤン グ係数や質量密度)が実値と異なることや,モデルの境界条件や部材接合部の結合条件が実際と異な ることが想定されるため,それらをモデルパラメータに考慮することで更なる制度向上が期待できる と考えられる.
図-6.4.6 各部材の板厚計測位置 表-6.4.4 各部材の板厚の更新結果
Variable
Initial Value [mm]
Updated [mm]
Change [%]
Measured [mm]
x1 1.0000 0.8643 -13.57 1.0049
x2 1.0000 0.9148 -8.52 0.9999
x3 1.0000 0.9279 -7.21 1.0039
x4 1.0000 0.9443 -5.57 1.0038
x5 1.0000 0.9752 -2.48 1.0033
x6 1.0000 0.8643 -13.57 1.0014
x7 1.0000 0.9148 -8.52 1.0003
x8 1.0000 0.9279 -7.21 0.9973
x9 1.0000 0.9443 -5.57 0.9954
x10 1.0000 0.9752 -2.48 0.9982
x11 5.0000 5.0080 +0.16 5.0092
x12 5.0000 5.0385 +0.77 5.0082
x13 5.0000 5.0352 +0.70 5.0012
x14 5.0000 5.0434 +0.87 5.0025
x15 5.0000 5.0845 +1.69 5.0081
-130-6.5 実構造系における精緻化手法の検証