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第 6 章 構造同定手法を援用した有限要素モデルの精緻化

6.2 有限要素モデルの精緻化手法に関する検討

6.2.2 最適化方法

本章では,目的関数を最小化するために,最適化問題の解法のひとつである内点法6-2),6-3),6-4)を用 いる.問題に制約条件を付加できること,計算効率が良いこと,非線形問題にも対応が可能であると いったことから本研究では内点法を採用した.内点法は線形計画問題に対するカーマーカー法 6-5)に よって触発され発展した制約付き最適化問題の反復解法の総称であり,実行可能領域の内部を探索し 点列を逐次生成することで解を求める.特に大規模問題に有効とされ,凸計画問題,半正定値計画問 題等へも拡張されている.主問題または双対問題のどちらか一方の実行可能領域に点列を生成する内 点法を主内点法,主問題および双対問題の双方の実行可能領域に点列を生成する内点法を主双対内点 法と呼ぶ.ここでは,主双対内点法による内点法の理論について,ニュートン法,準ニュートン法,

ラグランジュの未定乗数法を用いて示す.以下,精緻化の対象となるモデルパラメータを並べたベク

2

1

n ai mi

i mi

f f

J f

x x (6.1)

-114-トルをx Rnとし,最小化する目的関数をJ x とする.

(1)ニュートン法

内点法の理論を示す前に,ニュートン法の理論について示す.ニュートン法は目的関数の勾配をも とに,反復解法により方程式を解く手法の1つである.目的関数J xxkまわりでテイラー展開し,

2次の項まで近似すると,2次近似式は次のように書ける.

( ) ( )

( ) ( )

1! 2!

T T

k T k

k k k k

J J

J J x x

x x x x x x x x (6.2)

k k

x x d とすると,

( ) ( ) ( ) 1 ( )

2

T T T

k k k k k k

J x J x J x d d J x d (6.3)

またJ x の2階微分を並べたヘッセ行列は

2 2 2

2

1 1 2 1

2 2 2

2

2 1 2 2

2 2 2

2

1 2

n

T

n

n n n

J J J

x x x x x

J J J

J x x x x x

J J J

x x x x x

x (6.4)

となる.2次近似式をxについて微分し第3項以降を無視すると,以下の式を得る.

T

k k k

J x J x J x d (6.5)

J x の最小値はJ x の2次近似式の勾配がゼロ,すなわち J x 0となる点であるので.

T

k k k

J x J x d 0 (6.7)

T

k k k

J x d J x (6.7)

が成り立ち,上式はニュートン方程式とよばれる.この連立1次方程式を解くと

T 1

k J k J k

d x x (6.8)

のように探索方向ベクトルdkが得られる.

以下に,ニュートン法のアルゴリズムを示す.

① 初期設定 0

k とおき,開始点x0を決める.

② 探索方向決定

ニュートン方程式を解き,探索方向ベクトルdkを計算する

③ 解の更新

1

k k k

x x d とし,解を更新する

④ 収束判定

収束判定条件を満たせば を解として終了.

満たさなければk k 1として②へ戻る.

(2)準ニュートン法

準ニュートン法は,ヘッセ行列の正定値性の確保と,ヘッセ行列の計算を容易にするために,ヘッ セ行列を適当な正定置対称行列Bkで近似を行う.すなわち,ニュートン方程式はヘッセ行列に代わっ てBkを用いて以下に示す準ニュートン方程式に近似される.

k k J k

B d x (6.9)

ニュートン法と同様に,この準ニュートン方程式を解くことで,探索方向ベクトルdkを決定する.

1

k k J k

d B x (6.10)

を更新するために下に示すBFGS(Broyden, Flecher, Goldfarb, Shanno)公式6-6),6-7),6-8),6-9)を用いる.

1

T T

k k k k k k

k k T T

k k k k k

B s B s y y

B B

s B s s y (6.11)

ここに,

1

k k k

s x x (6.12)

1

k J k J k

y x x (6.13)

である.

-116-以下に,準ニュートン法のアルゴリズムを示す.

① 初期設定 0

k とおき,開始点x0を決める.

② 探索方向決定

準ニュートン方程式を解き,探索方向ベクトルdkを計算する

③ 直線探索

黄金分割法などにより,J xk k kd を最小化するステップ幅 kを計算する.

④ 解の更新

1

k k k k

x x d とし,解を更新する.

⑤ 収束判定

収束判定条件を満たせばxk 1を解として終了.

満たさなければ⑥へ.

Bkの更新

BFGS公式によりBk 1を計算し,k k 1として②へ戻る.

(3)ラグランジュの未定乗数法

滑らかな制約付きの問題では、ghをそれぞれ不等式と等式制約 (すなわち、範囲、線形、非線形 制約) を表すベクトル関数となる.関数hで表される等式制約と,関数gで表される不等式制約が付 加された場合,最適化問題は次式のようになる.

min ( ), subject to ( ) 0 and ( ) 0J h g

x x x x (6.14)

ここで,この問題を双対な問題に置き換え,ラグランジュ乗数λgλhを用いてラグランジュ関数を次 式のように定義する.

, ,

( , , )g h ( ) g i i( ) h j j( )

L x J x g x h x (6.15)

このとき,極小値xminは次のKarush-Kuhn-Tucker条件(KKT条件)を満たす.

min min , min , min

( , g, )h ( ) g i i( ) h j j( )

L J g h

x x λ λ x x x 0 (6.16)

1( ) 0, ( ) 0, , ( ) 02 i

h x h x h x (6.17)

min , , min

( ) 0, 0, ( ) 0 ( 1,2, , )

i g i g i i

g x g x i m (6.18)

(4)内点法6-1),6-2),6-3),6-4)

前項と同様に,滑らかな制約付きの問題を考える.関数hで表される等式制約と,関数gで表され る不等式制約が付加された場合,最適化問題は次式のようになる.

min ( ), subject to ( ) 0 and ( ) 0J h g

x x x x (6.19)

ここで,元の問題の近似問題は0より大きいμに対して対数項であるバリア関数を用いて次式で表さ れる.

1

min ( ) ( ) - n ln i( ) , subject to ( ) 0

i

J J g h

x x x x x (6.20)

μは正のスカラーであり,μが0に収束していくとfμ( )x が最適解に収束していく.また,双対な問題 に置き換えるために等式制約h(x)に関するラグランジュ乗数λhを導入すると,この近似問題は次式で 表される制約なしの問題に変換される.

( , , )h ( ) h j j, ( ) - ln i( )

Lx λ J x h x g x (6.21)

両辺をxについて微分すると,

,

( , , ) ( ) ( ) - 1

h h j j ( )

i

L J h

x λ x x g

x (6.22)

i ( )

i

z g x とすると,

( , , )h ( ) h j, j( )

-L J x h x z (6.23)

このとき,極小値xは次のKKT条件を満たす.

( , , )h ( ) h j, j( )

-L J x h x z 0 (6.24)

1( ) 0, ( ) 0, , ( ) 02 j

h x h x h x (6.25)

-118-XZe e 0 (6.26) ここに,

1 0 0 1 0 0 1

0 0 , 0 0 ,

0 0 n 0 0 n 1

x z

x z

X Z e (6.27)

である.

得られたKKT条件式を,ニュートン法による反復で解くことを考えると,ステップkにおけるニ ュートン方程式は次式で表される.

( ) ( ) , -

k k k k k h k k

T

k k k

k k k k k j

h J h z

h h

x λ z

W x I d x x

x 0 0 d x

Z 0 X d X Z e e

(6.28)

ここに,Wkは近似問題の目的関数J(x)のヘッセ行列であり,次式で表される.

2 ( , , ) 2 ( ) T

k L k k zk J k h k k zk

W x λ x x λ (6.29)

(2.29)式についてdkxdkλを解くために線形システムで表すと.

k k k k k k k

T

k k k

c J c

c c

x λ

W Σ x d x x λ

d x

x 0 (6.30)

1

k k k

Σ X Z (6.31)

となり,dzkについて解くと.

1 z

k k k zk k kx

d X e Σ d (6.32)

を得る.

適当なステップサイズαkにより,

1

k k k

x dx (6.33)

, 1 h

h k k k

λ dλ (6.34)

1 z

k k k

z d (6.35)

とすることで,xλ,zを更新する.