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橋梁の部材振動系に対する抽出結果の検証

第 7 章 統計分析手法を援用した振動特性の推定と遺伝的アルゴリズムの適用性検証

7.2 統計分析手法を援用した振動特性の推定

7.2.4 橋梁の部材振動系に対する抽出結果の検証

-148-表-7.2.4 カーネル密度推定による固有振動数推定結果(全体振動系)

推定方法

固有振動数[Hz]

1 次 2 次 3 次 4 次 5 次

①カーネル密度推定

(帯域幅:0.02,閾値:10-4

3.180 4.720 8.400 10.520 18.800

②従来手法 3.173 4.722 ― ― ― 比率(①/②) 1.002 1.000 ― ― ―

図-7.2.6 対象部材の位置(部材振動系)

表-7.2.5 対象部材の構造諸元

部材長[m] 23.655

格点間距離[m] 26.803

断面形状 箱型

フランジ [mm]

幅 500

板厚 9(補強部:25)

ウェブ [mm]

幅 574

板厚 9(補強部:12)

(a) 常時微動状態

図-7.2.7 計測加速度計波形の一例(部材振動系)

-150-(b) 低風速振動時

(c) 強風振動時

図-7.2.7 計測加速度計波形の一例(部材振動系)(つづき)

(2)振動特性の推定結果

対象とした3ケースの加速度データに対して表-7.2.6に示すSSIの計算パラメータにより振動特 性の推定を実施した.固有振動数の推定結果を図-7.2.8~図-7.2.10に示す.図-7.2.8より,常時 微動では7Hz付近に顕著な振動モードを比較的安定して捉えられているが,8Hz以上においてはばら つきが大きく有意な振動数の抽出は困難であった.また,低風速振動による定常振動状態を対象とし た図-7.2.9についても,7Hz付近の顕著な振動モードを安定的に推定できているものの,8Hz以上 においては結果がばらつく傾向にあった.一方,強風時の不規則な面外振動を含む振動状態を対象と した図-7.2.10では,高振動数域においても常時微動や低風速振動時より比較的安定した推定ができ ている.ただし,定風速域で強風時の応答データには風圧力による面外振動の影響を受けているため,

必ずしも純粋な面内(鉛直)方向の振動ではないことに留意する必要がある.前項と同様に,従来手

0 100 200 300 400 500 600

Time [s]

-10 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8

10 Acceleration waveform of Channel 1

0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20

Frequency [Hz]

0 1 2 3 4 5 6 7

8 10-8 Power spectrum of ch.1

法により抽出した固有振動数を表-7.2.7 に示す.なお,表中の振動次数は抽出された固有振動数を 低い順に並べたものであり,一般的なモード形状を表す振動次数を表すものではない.

表-7.2.6 SSI の計算パラメータ(部材振動系)

項目 値

データ長 3000(30秒)

初期モデル次数 80

特異ベクトル長 20

Low-Passフィルタ なし

図-7.2.8 SSI による振動数の推定結果(部材振動系_常時微動)

Frequency[Hz]

-152-図-7.2.9 SSI による振動数の推定結果(部材振動系_低風速振動時)

図-7.2.10 SSI による振動数の推定結果(部材振動系_常時微動)

Frequency[Hz]

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

Iteration 02

46 108 1214 1618 2022 2426 2830 3234 3638 4042 4446 4850

Frequency[Hz]

表-7.2.7 固有振動数の抽出結果(部材振動系における従来手法)

対象データ

固有振動数[Hz]

1 次 2 次 3 次 4 次 5 次 6 次 常時微動 6.707 - - - - - 低風速振動時 6.671 - 17.498 - - - 強風速振動時 6.416 15.336 - 21.584 22.904 25.724 注)表中の「-」は,検出不可であったことを表す.

(3)カーネル密度推定による自動抽出結果

部材振動系におけるカーネル密度推定の計算パラメータを表-7.2.8 に示す.また,常時微動に対 する帯域幅を変化させたときのヒストグラムを図-7.2.11 に示す.全体系振動に対する結果と同様,

としたときの全体振動系と同様に,SSI の推定結果において確認された顕著なモードを検出できてい るものの,帯域幅に応じた離散的な分布表現から定量的な固有振動数値を抽出することは困難である.

次に,表-7.2.8 の計算パラメータによる励起状態の異なる3ケースの加速度応答に対するカーネ ル密度推定の結果を図-7.2.12~図-7.2.14に示す.パラメータの変化に対する推定結果への影響は,

全体振動系と同様の傾向を示しており,対象データに応じた適切な閾値および帯域幅の設定が必要で あった.各3ケースの結果を次頁以降に示す.

表-7.2.8 計算パラメータ(部材振動系)

対象データ 式(7.1)の閾値 帯域幅

常時微動 10-4 10-5 10-6 0.01 0.04 0.05 0.10 低風速振動 10-4 10-5 10-6 0.01 0.02 0.04 0.10 強風振動 10-4 10-5 10-6 0.01 0.02 0.05 0.10

-154-(a)帯域幅 0.01 (b)帯域幅 0.04

(c)帯域幅 0.05 (d)帯域幅 0.10 図-7.2.11 推定された振動数のヒストグラム(部材振動系_常時微動)

① 常時微動

図-7.2.12 より,閾値と帯域幅の大きさに反比例して抽出されるピーク数が変化する.そのため,

閾値については高く設定するほど有意でないピークを排除できる.しかし,帯域幅については,帯域 幅が大きいほど抽出されるピーク数は減少するものの,帯域幅内に有意なピークが複数含まれる場合 に判別できないことや,抽出される振動数の分解能が低くなるため,可能な限り低く設定するのが望 ましい.以上を考慮し,本データにおいては,閾値を10-5帯域幅を0.04に設定することで,より定量 的で客観的な結果が得られたといえる.従来手法との抽出結果の比較を表-7.2.9 に示す.従来手法 に比べてカーネル密度推定による結果が100.2%,最大誤差が0.013Hzと両手法の誤差は比較的小さか った.また,従来手法で抽出が困難であった17.56Hz,19.12Hz,26.92Hz,33.32Hz,48.56Hzについて,

カーネル密度推定による判別では抽出できており,本手法の優位性が高いことが示唆されている.

② 低風速振動

図-7.2.13より,常時微動と同様に,閾値と帯域幅の大きさに反比例するように抽出されるピーク 数が変化することがわかる.前述した閾値と帯域幅の設定方法を踏まえると,本データにおいては,

閾値を10-5帯域幅を0.02に設定することで,より定量的で客観的な結果が得られたといえる.従来手 法との抽出結果の比較を表-7.2.10に示す.従来手法に比べてカーネル密度推定による結果が99.9~

100.1%,最大誤差が0.018Hzと両手法の誤差は比較的小さかった.なお,常時微動の結果を比較する と,カーネル密度推定により抽出された振動数が少なくなっている.これは,対象データの励起状態 が風による空力励起振動により鉛直1 次モードと想定される6.68Hz で極端な定常振動にあるため,

自由振動状態である常時微動に比べて他の振動モードが励起され難い状況であるためと考えられる.

また,カーネル密度推定の結果では6.36Hzが抽出されているが,これは後述する強風振動時に発生し ていた風圧の影響による水平方向の振動によるものと推測され,低風速振動では鉛直方向の振動が卓 越した状態ではあるものの,少なからず風による水平方向の影響を受けていると推測される.

③ 強風振動

図-7.2.14より,他のケースと同様に,閾値と帯域幅の大きさに反比例するように抽出されるピー ク数が変化している.前述した閾値と帯域幅の設定方法を踏まえると,本データにおいては,閾値を 10-6帯域幅を0.05に設定することで,より定量的で客観的な結果が得られたといえる.従来手法との 抽出結果の比較を表-7.2.11に示す.従来手法に比べてカーネル密度推定による結果が99.8~100.3%, 最大誤差が0.066Hzと両手法の誤差は比較的小さかった.なお,本データは風圧を受けて不規則な水 平振動が生じている状態であることから,他のデータに比べて複数の振動数を安定して推定できてい るものの,純粋な鉛直方向の振動だけではないことに留意する必要がある.

以上より,部材振動系を対象として本検討では,風による振動励起状態に応じて適切な帯域幅を設 定することで,有意な固有振動数を定量的かつ客観的に抽出することができた.ただし,全体系振動 と同様に,パラメータとなる閾値や帯域幅の設定においては一律に決められず,対象データの励起状 態等に応じて適切に設定する必要があるなど課題が残るものの,従来手法に比べて定量的で客観的な 固有振動数の自動抽出が可能となった.

-156-(a)閾値10-4

(b)閾値10-5

(c)閾値10-6

図-7.2.12 カーネル密度推定結果(部材振動系_常時微動)

(a)閾値10-4

(b)閾値10-5

(c)閾値10-6

図-7.2.13 カーネル密度推定結果(部材振動系_低風速振動)

-158-(a)閾値10-4

(b)閾値10-5

(c)閾値10-6

図-7.2.14 カーネル密度推定結果(部材振動系_強風振動)

表-7.2.9 カーネル密度推定による固有振動数推定結果(部材振動系_常時微動)

推定方法

固有振動数[Hz]

1 次 2 次 3 次 4 次 5 次 6 次 カーネル密度推定(x)

(帯域幅:0.04,閾値:10-5

6.720 17.560 19.120 26.920 33.320 48.560

従来手法(y) 6.707 - - - - -

比率(x/y) 1.002 - - - - - 表-7.2.10 カーネル密度推定による固有振動数推定結果(部材振動系_低風速振動時)

推定方法

固有振動数[Hz]

1 次 2 次 3 次 4 次 5 次 6 次 カーネル密度推定(x)

(帯域幅:0.02,閾値:10-5

6.360 6.680 17.480 - - -

従来手法(y) - 6.671 17.498 - - - 比率(x/y) - 1.001 0.999 - - - 表-7.2.11 カーネル密度推定による固有振動数推定結果(部材振動系_強風振動時)

推定方法

固有振動数[Hz]

1 次 2 次 3 次 4 次 5 次 6 次 7 次 カーネル密度推定(x)

(帯域幅:0.05,閾値:10-6

6.400 15.300 20.600 21.650 22.900 25.750 39.650

従来手法(y) 6.416 15.336 - 21.584 22.904 25.724 - 比率(x/y) 0.998 0.998 - 1.003 1.000 1.001 - 注)上記表中の「-」は,検出不可であったことを表す.

-160-7.3 精緻化に用いる最適化計算手法