第 7 章 統計分析手法を援用した振動特性の推定と遺伝的アルゴリズムの適用性検証
7.5 部材系構造モデルによる精緻化手法の検証
7.5.2 最適化計算のための条件設定
(1)最適化問題としての定式化
部材系構造モデルを対象とする本節では,対象とする観測データが1点のみであることから,精緻 な振動モードの推定が困難である.そのため,全体系構造モデルの定式化と同様に固有モードを考慮 することができない.そこで,部材系構造モデルでは計測値において顕著な卓越モードに重み付けを することで目的関数の精度向上を図ることとし,固有振動数ごとのスペクトル比を考慮した式(7.5)で 定式化した.
ここに,xは精緻化の対象となるモデルパラメータを並べたベクトル,fは固有振動数, Sはスペ クトル比,添字iはモード次数,aは解析値,mは実測値である.
本章では,解析値は固有値解析により算出し,実測値には計測した加速度応答のSSIにより推定さ れた結果に対するカーネル密度推定により自動抽出された固有振動数を対象とする.
2
1
n ai mi
i i mi
f f
J x
S
xf (7.5)(2)計算条件とパラメータの設定
①目的関数の設定
前項7.2.4で実施した低風速時の実応答に対するカーネル密度推定に基づく振動特性の推定結果(表
-7.2.10)と, 前項7.5.1のFEモデルの固有値解析結果を比較した結果,解析1次と実測2次(鉛 直対称1次),解析3次と実測3次(鉛直逆対称1次)の振動特性の差を最小化するように計算を行 うこととした.対象とする振動モードの固有振動数を表-7.5.2に示す2モードを対象とした最適化 計算を実施するにあたり,設定した目的関数を式(7.6)に示す.なお,式中のスペクトル比Sはスペク トルのピークが最大である実測2次モード(鉛直対称1次モード)のピーク値を1.0として,実測3 次モード(鉛直逆対称1次)のピーク値に対する実測2次モードスペクトルのピーク値の比率をスペ クトル比とした.また,最適化ソルバーによる導関数の計算を容易にするために,パラメータの微小 な変化に対して目的関数が大きく変化するよう,目的関数には106を乗じることとした.
表-7.5.2 対象モードにおける固有振動数およびスペクトル比
Mode
1st
(鉛直対称1次)
3rd
(鉛直逆対称1次)
固有振動数[Hz]
解析値(fa)
(固有値解析)
6.343 16.892
参照値(fm)
(計測結果)
6.680 17.480
スペクトル比(S) 1.00 0.17
J x
(7.6)
-180-②最適化計算の計算条件
最適化計算における内点法およびGAの計算条件を表-7.5.3に示す.各計算条件は,図-7.3.1で
示した MATLAB の最適化ツールにおける既定値とする.内点法では,停止条件を目的関数とパラメ
ータの変化が十分に小さくなったときに計算を終了することとし, J x 1 106 ,すべてのパラメ ータについて x 1 1010 が成立することとした.一方,GA では,50 世代停滞を繰り返すか,600 世代に到達した場合に計算が終了する.
表-7.5.3 最適化計算条件
GA
計算条件 値
母集団 200 エリート個体数 10
交叉率 0.8 停滞世代数 50 停止世代数 600
内点法
計算条件 値 最大反復回数 1000 最大評価回数 3000 x許容誤差 1.0×10-10 関数の許容誤差 1.0×10-6 制約の許容誤差 1.0×10-6
③パラメータの設定
対象とする部材系構造物は,補修されている部材であるため,剛性変化に起因する部材厚(一般部 と補強部のフランジとウェブ)と格点部における直角軸回りの回転ばね剛性の計6種類を精緻化のパ ラメータとした.表-7.5.4 に精緻化対象をまとめる.制約条件は,板厚については初期値±10%と し,回転ばね剛性については±10000%とした.
表-7.5.4 精緻化の対象パラメータと初期値
No 対象 初期値
x1 ばね剛性((L端) N・m/rad 2.0×109 x2 ばね剛性((R端) N・m/rad 2.0×109
表-7.5.4 精緻化の対象パラメータと初期値(つづき)
No 対象 初期値
x3 補強部フランジ板厚 mm 25
x4 補強部ウェブ板厚 mm 12
x5 一般部フランジ板厚 mm 9
x6 一般部ウェブ板厚 mm 9