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構造同定手法の運用性の評価方法

第 4 章 実稼働モード推定のための構造同定条件に関する解析的検討

4.2 構造同定手法の運用性の評価方法

4.2.2 応答の生成

本章の主眼は同定計算の精度や推定値の安定性,計算時間に対する同定計算条件の影響を定量的に 考察することにあり,簡易的な解析による生成応答で十分に検討に耐えうるものと考えた.また,構 造形式によるモード特性の差異については,各モードの識別が実構造物におけるモード推定の主課題 の一つであり,推定値の精度と変動の大きさが鍵となる.そのため,構造形式については単一の形式 を対象として議論の明瞭化を図ることとした.

以上を考慮して,実在する鋼アーチ橋の構造諸元をもとに図-4.2.1のような簡易な2次元有限要 素はりモデルを作成し,常時微動を模した不規則振動応答を生成して検討に用いた.有限要素解析の 計算条件を表-4.2.1に,固有値解析で得られた振動数を表-4.2.2に示す.入力は図-4.2.2に示すよ うな正規乱数をもとに入力する節点ごとに独立して生成・入力し,速度応答をNewmarkβ法によって 算出した.

図-4.2.1 振動応答解析用のFEはりモデル

表-4.2.1 振動応答解析の計算条件

項目 条件

使用モデル 2次元FEはりモデル(節点数=27) 支持条件 ピン-ローラー

時間刻み 0.01s

解法 Newmark β法

外力 正規乱数で模した不規則振動

各節点に異なる波形を独立して生成・入力 鉛直方向

減衰定数 0.02(全モード)

[email protected]=113.75m

17.00m

-70-表-4.2.2 固有値解析による固有振動数(Hz)

モード 振動数 モード 振動数

1次 1.365 7次 9.600

2次 2.417 8次 11.619

3次 3.806 9次 13.730

4次 5.208 10次 15.768

5次 6.597 11次 17.000 6次 7.924 12次 18.029

(a) 入力波形(正規乱数)

(b)入力の周波数分布

図-4.2.2 FE解析の入力に用いた正規乱数の例

4.2.3 運用性の評価項目と方法

(1)精度

推定結果は構造物の入力や応答レベルによって変化するため,実際の実稼働モード推定においては 推定精度を直接的に評価する手段がない.本章では,有限要素モデルを対象としているため,固有値 解析の結果と比較することで構造同定手法による振動数の推定精度を評価した.また,減衰定数につ

Random number P.S. amp.

いては,表-4.2.1の設定値と比較し評価した.振動特性の推定結果は,上述したように連続して得ら れるため,所定の回数の推定結果の平均値を結果として精度の評価対象とした.

(2)安定性

実稼働モード推定が損傷検知の手法として期待されるのは,連続して得られる推定結果における構 造損傷に起因する変化を検知することである.その実現のためには,健全時あるいは平常時において 安定して振動特性が推定されることが必須であり,安定性は構造同定手法の最も重要な性能の一つで ある.本章では,応答のスペクトルおよび固有値解析で得た固有振動数にもとづいて,構造同定手法 による振動数の推定結果と振動モードの対応を定め,モード毎の推定振動数の変動係数をもって安定 性を評価することとした.減衰定数およびモード形は,振動数にしたがって振動モードとの対応を定 め,同様に評価した.

(3)ロバスト性

振動特性の推定精度と安定性には,応答レベルに加えて,上述したように同定計算の実行条件,す なわち計算パラメータが強く影響する.そのために,実稼働モード推定では手法と対象構造物に応じ てパラメータを適切に設定する必要がある.そこで,本章では推定精度と安定性に対して,パラメー タ,応答レベルおよび応答に含まれるノイズがおよぼす影響の大きさを指標とし,スタビリゼーショ ン図と推定結果の変動統計量によって各手法のロバスト性を評価した.

実測記録に対して同定手法を適用する際は,ノイズの影響を考慮して最適なパラメータを試行錯誤 的に定める必要がある.本章では同定計算の条件による影響と観測ノイズによる影響を分離する目的 で,同定パラメータの影響に関する分析には常時微動シミュレーションで生成した応答を直接用いた.

また,観測ノイズの影響の分析には観測ノイズを模した正規乱数を重畳した応答を用いた.

-72-4.3 各手法の運用性の解析的検討