第 6 章 構造同定手法を援用した有限要素モデルの精緻化
6.3 モデルパラメータの自動更新手法の構築
最適化計算にはMATLAB(Mathworks製)を用いた.MATLABは一般的なプログラミング環境に 加えて豊富なアプリケーションが付属しており,本研究で扱う最適化問題に関するソルバーも豊富に 有している.加えて,モデルファイルや解析結果といった大規模な行列データの演算が高速であると いったことからMATLABを用いた.また,FEモデルの精緻化のためには繰返しFE解析を行うルー チンを構築する必要がある.そのため,GUIでの使用ではなく,プログラム内から解析の実行が可能 であるタイプのFE解析ソフトウェアが望ましい.そこで,FE解析のソルバーには汎用有限要素解析 ソフトウェアMarc(MSC Software製)を用いることとした.Marcでの解析は,モデルの情報が記述 されたテキストファイル(拡張子:.dat,以下.datファイル)を読み込んで解析を実行し,解析結果フ ァイル(拡張子:.t16または.out(以下,.outファイル)),ログファイル(拡張子:.log),を出力する という流れになる.また,Marcは会話型プリ・ポストプロセッサmentatを併用したモデル作成・解析 実行・解析結果表示などのGUIでの操作に加え,解析実行に関してはGUIを使用せずにCUIでのコ マンドによる解析実行も可能であるという特徴がある.また,Marcの付属機能であり,後述するMarc Usersubroutineを使用することで,任意の解析結果をテキスト形式として出力し,最適化計算へ組み込 むことが出来る.Marc Usersubroutineを利用する場合は,Fortranコンパイラをインストールする必要 がある.表-6.3.1に,本研究で使用したソフトウェアと計算環境をまとめる.
表-6.3.1 使用ソフトウェアと計算環境 ソフトウェア ベンダー
MATLAB Mathworks
Marc MSC Software
Intel Visual Fortran Compiler Intel
プロセッサ
Intel® CoreTM i7-2600 @3.40 GHz
実装メモリ 16.0 GB OS Windows 7, 64 bit
6.3.2 最適化計算の方法
最適化計算には,数値解析ソフトウェア MATLAB 付属のアプリケーションのひとつである最適化 ツールを用いた.最適化ツールには16種類のソルバーがあり,目的関数の線形,非線形,制約条件の 有無など,様々なタイプの最適化問題に対するソルバーがある.表-6.3.2にMATLAB付属の最適化 ソルバーと本研究で用いるソルバーをまとめる.また,図-6.3.1に最適化ツールのGUIを示す.
FEモデルの精緻化は目的関数が設計変数に対して非線形となることから非線形最適化問題である.
本章では基礎的研究として,最適化のソルバーには制約なし非線形最小化:fminsearch を用いること とした.また,アルゴリズムには既定の設定であり,前節で述べたinterior point(内点法)を用いた.
表-6.3.2 MATLAB 付属の最適化ソルバー一覧と本研究で用いるソルバー
bintprog 0-1整数計画
fgoalattain 多目的ゴール到達法
fminbnd 範囲指定付きの1変数非線形最小化
fmincon 制約付き非線形最小化
fminimax ミニマックス最適化
fminsearch 制約なし非線形最小化
fminunc 制約なし非線形最小化
fseminf 半無限最小化
fsolve 非線形方程式の解法
fzero 1変数の非線形方程式の解法
linprog 線形計画法
lsqcurvefit 非線形曲線近似
lsqlin 制約付き線形最小二乗法
lsqnonlin 非線形最小二乗
lsqnonneg 非負線形最小二乗法
quadprog 二次計画法
最適化ツールを用いた計算では,まず引数xの入力に対して目的関数の値J(x)が返されるように計 算プロセスを記述したファイルを作成する.最適化計算を開始すると,最適化ソルバーがソルバー内 で導いたxの値を与え,作成したファイルを用いてJ(x)を計算し,ソルバーにJ(x)を返す.繰返し同 様の計算を行い,xの値を評価しながら最適解を探索することとなる.
-122-図-6.3.1 最適化ツールの GUI の例
6.3.3 目的関数計算プログラム
前項で述べた処理を統合し,目的関数計算プログラムを構築した.プログラム内での計算の流れ を図-6.3.2に示す.
図-6.3.2 目的関数計算プログラムのフローチャート 対象箇所の置換
FE解析の実行
振動モード形の抽出 固有振動数の抽出 xを.datファイルに 書き込むフォーマットに変換
モデルファイルの読み込み
モデルファイルの書き出し
model.outの読み込み
modeshape.txtの読み込み
目的関数の計算 計算パラメータの宣言
振動特性の実測値
x
J(x)
Marc Usersunroutine output.f
振動モード形の解析結果 modeshape.txt
固有振動数の解析結果 model.out 更新後のモデルファイル
model.dat モデルファイル
model.dat
-124-6.4 簡易構造系における精緻化手法の検証