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実構造系のモデル化と精緻化

第 6 章 構造同定手法を援用した有限要素モデルの精緻化

6.5 実構造系における精緻化手法の検証

6.5.3 実構造系のモデル化と精緻化

(1)実構造系の FE モデル化

解析モデルの概要を図-6.5.6,材料特性と使用要素を表-6.5.3,境界条件を表-6.5.4に示す.モデ ル作成を容易にするため,着目部の応力に影響を及ぼすと考えられる主桁フランジ,ウェブ,縦リブ,

水平補剛材,支承近傍のダイヤフラムのみモデル化し,その影響が小さいと思われる横リブ,垂直補 剛材,ソールプレート近傍以外のダイヤフラムはモデル化していない.主桁にはシェル要素,床版お よびソールプレートにはソリッド要素を用い,主桁と床版は節点共有による剛結とした.き裂が確認 されたソールプレート近傍の応力状態の変化を把握するため,ソールプレート近傍のメッシュサイズ は5mm×5mmとし,それ以外の箇所に関しては,解析時間短縮のため5mm,10mm,20mm,60mm, 150mm,500mmとソールプレートから離れるに従い,粗くメッシュ分割を行った.支承は図-6.5.7の ように回転中心とソールプレートとの剛体リンクとしてモデル化を行った.

Y

Z X

固定

可動

可動

可動

図-6.5.6 対象橋梁の FE 解析モデル

表-6.5.3 材料特性と使用要素 弾性係数

[N/mm2]

質量密度

[kg/mm3] 要素 主桁 205×103 7.85×10-6 シェル

床版 30×103 2.30×10-6 ソリッド

-134-表-6.5.4 境界条件

DX DY DZ RX RY RZ

固定支承

(Case1) 拘束 拘束 拘束 自由 拘束 拘束

固定支承

(Case2) 拘束 拘束 拘束 拘束 拘束 拘束

可動支承 拘束 拘束 自由 自由 拘束 拘束

図-6.5.7 剛体リンクによる支承のモデル化

(2)精緻化の対象

精緻化の対象は,シェル要素の板厚(全21種類),鋼材の弾性係数と質量密度,コンクリートの弾 性係数と質量密度の合計25項目とした.目的関数における実測振動数は,観測加速度応答からSSIに より推定した1次および2次モードの固有振動数を用いた.

また,当該橋梁におけるき裂の発生原因として,固定支承の回転機能の劣化が推察された.そのた め,境界条件を設計時の状態としたモデルの精緻化のケースをCase1,固定支承の機能低下を考慮し,

固定支承の境界条件を完全固定とした状態のモデルの精緻化ケースをCase2とし,2つのケースのFE モデルの精緻化を行った.

(3)精緻化の結果

FEモデルの更新に伴う目的関数の値の推移を図-6.5.8に示す.Case1では158回目のパラメータ更 新後,パラメータの値がモデルに入力不可能な値となり,固有値解析の結果が得られなかったため計

算を終了し,直前の値を最適解として採用した.Case2は391回目のパラメータ更新後に計算を終了 した.

表-6.5.5に更新前後のモデルの固有振動数を示す.更新後のモデルと実橋の固有振動数はほぼ一致 しており,全体系の構造特性に関してはFEモデルが精緻化されていることが確認できる.

更新前後の要素の板厚,材料特性を表-6.5.6,断面の種類とその位置を図-6.5.9 に示す.板厚 1,

2,9については,微小かつ少数の要素であるため,図-6.5.9への表示は省略している.

ここで,道路橋示方書6-11)には「鋼板の厚さの許容差はJIS G 3193を適用し,かつ備考により,(-) 側の許容差が公称板厚の5%以内にならなければならない」とある.更新後の板厚に着目すると,Case1,

Case2の板厚4(ダイヤフラム,上下フランジの縦リブの板厚相当)では条件を満足していないが,こ

の他の種類の板厚については概ねこの条件を満たしており,モデルとして妥当な値に更新されたと考 えられる.また,材料特性に関してはCase1の床版の弾性係数で-10.21%の変化が生じたが,床版の経 年劣化やコンクリートの材料特性のばらつき等を考慮すると妥当な値に更新されたと考えられる.

(a)Case1 (b)Case2 図-6.5.8 FE モデルの更新に伴う目的関数値の推移

表-6.5.5 モデルの固有振動数[Hz]

Case Mode 更新前 更新後 実橋

(推定値)

Case1 1 0.962 0.978 0.973

2 1.480 1.473 1.473

Case2 1 0.965 0.978 0.973

2 1.487 1.473 1.473 0.00E+00

5.00E-04 1.00E-03 1.50E-03

0 100 200 300 400

J(x)

Iteration

0.00E+00 5.00E-04 1.00E-03 1.50E-03

0 100 200 300 400

J(x)

Iteration

-136-表-6.5.6 更新前後のモデルパラメータ Case1 板厚 [mm]

種類 設計値 更新後 変化率 [%]

1 12.000 12.028 +0.23

2 10.000 10.191 +1.91

3 20.000 19.694 -1.53

4 15.000 14.047 -6.35

5 8.000 8.072 +0.90

6 8.000 8.135 +1.69

7 8.000 7.885 -1.44

8 8.000 8.079 +0.99

9 22.000 22.046 +0.21

10 10.000 9.998 -0.02

11 12.000 12.738 +6.15

12 22.000 21.998 -0.01

13 14.000 14.142 +1.01 14 20.000 20.749 +3.74 15 22.000 22.687 +3.12 16 22.000 22.568 +2.58 17 18.000 19.237 +6.87 18 13.000 13.076 +0.59

19 20.000 19.594 -2.03

20 15.000 14.924 -0.51

21 16.000 15.393 -3.79

Case2 板厚 [mm]

種類 設計値 更新後 変化率 [%]

1 12.000 12.134 +1.11 2 10.000 10.114 +1.14 3 20.000 19.966 -0.17 4 15.000 12.807 -14.62

5 8.000 8.114 +1.42

6 8.000 8.028 +0.35

7 8.000 8.038 +0.47

8 8.000 8.122 +1.52

9 22.000 22.043 +0.20 10 10.000 9.826 -1.74 11 12.000 12.575 +4.79 12 22.000 21.903 -0.44 13 14.000 14.084 +0.60 14 20.000 19.703 -1.49 15 22.000 22.521 +2.37 16 22.000 21.994 -0.03 17 18.000 19.094 +6.08 18 13.000 13.222 +1.71 19 20.000 20.018 +0.09 20 15.000 15.247 +1.65 21 16.000 15.734 -1.66 Case1 弾性係数 [N/mm2]

設計値 更新後 変化率 [%]

主桁 205000 208422 +1.67

床版 30000 26936 -10.21

Case2 弾性係数 [N/mm2]

設計値 更新後 変化率 [%]

主桁 205000 207101 +1.02

床版 30000 29509 -1.64

Case1 質量密度 [kg/mm3]

設計値 更新後 変化率 [%]

主桁 7.85×10-6 7.65×10-6 -2.55 床版 2.30×10-6 2.28×10-6 -0.77

Case2 質量密度 [kg/mm3]

設計値 更新後 変化率 [%]

主桁 7.85×10-6 7.77×10-6 -1.07 床版 2.30×10-6 2.29×10-6 -0.45

10 18

20

13

19

4 5 6

8

7 8 5

Y

Z X

3(ダイヤフラム)

4 19

12

4(縦リブ)

11 13 17

10

14 11 15 16

12 13

211311 11 10 13

Y Z

X

図-6.5.9 断面の種類と位置