第 5 章 実応答データを用いた確率的部分空間法の同定条件に関する検討
5.3 実応答を用いた検討結果
5.3.3 初期モデル次数
-100- 同様の方法で他橋の常時微動に対しても評価した結果,得られた特異ベクトル長の適正範囲を表-5.3.2に示す.表-5.3.2より, 3橋のみの結果ではあるが,常時微動に対する特異ベクトル長の適正 範囲について,第4章の解析的検討による適正値である25とほぼ同等であったものの,橋梁によって は少し高めに設定した方がよい場合もあることがわかった.そのため,実際の適用にあたっては,20
~30付近で推定精度の事前検証を行い,最適な適正値を確認する必要があると思われる.
表-5.3.2 特異ベクトル長の適正範囲(常時微動)
対象橋梁 特異ベクトル長
A橋 28 ~ 34
B橋 10 ~ 50
C橋 20 ~ 26
ースペクトルのピークが顕著な第 1~4 モードでは初期モデル次数を大きくすることで比較的安定し た推定結果を示している.ただし,特異ベクトル長に関する検討と同様,減衰定数の推定値そのもの については言及しないこととした.以上より,A橋の常時微動データに対する初期モデル次数の適正 範囲は75~85付近であると考えられる.
(a) 初期モデル次数による振動数推定結果の変化
(横軸:振動数,縦軸:初期モデル次数,実線は観測常時微動加速度のパワースペクトル)
(b) 初期モデル次数による残差平方和(横軸:初期モデル次数,縦軸:残差平方和)
図-5.3.7 常時微動に対する初期モデル次数の影響分析結果(A橋の振動数推定結果)
Matrix size parameter.k
-102-図-5.3.8 初期モデル次数による減衰定数推定結果の変化
(横軸:初期モデル次数,縦軸:減衰定数)
次に,C橋で観測された図-5.3.9に示す常時微動を用いて,初期モデル次数による振動数の推定結 果への影響分析を行った.図-5.3.10のスタビリゼーション図より,初期モデル次数が60以上におい て,パワースペクトルで比較的ピークが大きい2.13Hz,2.91Hz,7.47Hz,19.86Hzと符合する振動数を 検出できている.しかし,パワースペクトルのピークが最も顕著な0.37Hz付近は検出できていない.
そこで,初期モデル次数の対象範囲を20~200(刻み値:20)として再度同定計算を実施したところ,図 -5.3.11 (a)のスタビリゼーション図より,初期モデル次数が120以上においてパワースペクトルがピ ークを示す帯域と符合する0~3Hz付近の低次振動の検出率が高い傾向を示した.さらに,図-5.3.11 (b) では初期モデル次数が60と140において残差平方和が小さくなっていることから,C橋では検出対象 とする振動数帯によって初期モデル次数の範囲を分けて検討することとした(以下,この方法を帯域分離
推定法と呼ぶ).以上の結果から,検出対象が2Hz以下の低次振動数に対するモデル次数の適正値は140
付近,2Hz以上の高次振動数に対するモデル次数の適正値は60付近となる.同様に,他橋の常時微動に 対しても検討した結果を表-5.3.3に示す.
なお,前項の特異ベクトル長に関する影響検討では,初期モデル次数を50としていたが,140とし た場合でも推定対象とする 20Hz 以下の振動数帯における推定結果の傾向に変化は見られなかった.
40 60 80 100
0 0.05 0.1
1st
40 60 80 100
0 0.05 0.1
2n d
40 60 80 100
0 0.05 0.1
3r d
40 60 80 100
0 0.05 0.1
4th
40 60 80 100
0 0.05 0.1
5t h
40 60 80 100
0 0.05 0.1
6t h
また,A橋およびB橋にもC橋と同様に2Hz以下にピークがあるものの,検討対象とした初期モデル
次数が25~100の範囲においてパワースペクトルのピークと符合する振動数を推定できていることか
ら,帯域分離推定法は適用していない.
(a) 観測された常時微動の加速度波形(Ch.1)
(b) 観測常時微動の周波数分布(全Chの合計)
図-5.3.9 観測された常時微動(C橋)
図-5.3.10 C橋の観測応答における振動数推定結果の変化
(横軸:振動数,縦軸:初期モデル次数(25-100),実線は観測常時微動加速度のパワースペクトル)
Matrix size parameter.k
-104-(a) C橋の観測応答における振動数推定結果の変化
(横軸:振動数,縦軸:初期モデル次数(20-200),実線は観測常時微動加速度のパワースペクトル)
(b) 初期モデル次数による残差平方和(横軸:初期モデル次数(20-200),縦軸:残差平方和)
図-5.3.11 常時微動に対する初期モデル次数(20-200)の影響分析結果(C橋の振動数推定結果)
表-5.3.3 初期モデル次数の適正範囲(常時微動)
対象橋梁 初期モデル次数 A橋 75 ~ 85 B橋 40 ~ 45
C橋
60付近(2Hz以上の高次振動)
140付近(2Hz以下の低次振動)
Matrix size parameter.kSquared error
5.4 交通振動を用いた検討結果