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(1) ERA,ERA/DCにおいては,初期モデル次数が対象モデルに対して小さいと推定結果の変動が大 きく,また一方で初期モデル次数が過度に大きい場合には特に高次側で変動が大きくなる傾向が 共通して確認された.SSI のデータ行列サイズパラメータは,観測ノイズの強度に依らず対象モ デル次数の約2倍に定めるのが適当であることが結果から示された.

(2) いずれの手法においても,データセグメント長を長めに設定することで推定結果の変動が小さく なることを確認した.ERAとERA/DCはほぼ同様の結果を示したが,SSIはこれらと比較して低

次側では7~10%程度,高次側では5%程度変動が小さい結果を示した.SSIでは,他の2手法と

比較してセグメント長を短く定め,推定回数を増加させることが可能といえる.

(3) ノイズの影響は,ERAおよびERA/DCにおいて,MACの低下に表れ,特に高次側の推定結果に おいて影響が大きくなる.ノイズの影響を変動の変化の大小で評価すると,ERAと ERA/DC で はノイズレベルの増大にしたがって変動が顕著に大きくなる一方,SSI ではノイズの影響が小さ いことが確認された.

(4) ERA/DCにおいては,ノイズが含まれないケースよりも第1および第2相関パラメータを大きめ に設定すると,計測ノイズの影響を少なからず低減できる.

第5章では,高精度な推定を可能とする実稼働モード解析のための構造同定手法として前進SSIを 対象に,実橋梁の応答データに対する同定計算条件の影響について,特異ベクトル長と初期モデル次 数に着目した分析を行った.

(1) 実応答に対する前進SSIの同定条件として,先行の解析的検討結果に基づく適正値で同定計算を 実施したところ,振動数についてはパワースペクトルのピークが顕著な10Hz 未満の帯域につい ては,検出率が40%以上と比較的安定して推定できることを確認した.しかし,スペクトルのピ ーク値が顕著でない10Hz~20Hzまでの帯域においては,推定結果のばらつきが目立ち,各モー ドに対する推定値を特定することは困難であった.また,減衰定数については,一般的に常時微 動を用いた推定は困難であると捉えられているが,妥当な値であると想定される0.02付近にある 時間帯が限定的にはあるものの,変動係数は0.5以上とばらつきが大きく安定性は乏しい結果と

-190-なった.

(2) 前進SSIの同定条件として特異ベクトル長と初期モデル次数に着目し,実橋にて計測された常時 微動に対するパラメータの影響検討を行い,各橋におけるパラメータの適正範囲を推定した.な お,特異ベクトル長については先行の解析的検討結果とほぼ同等レベルの結果であった.しかし,

初期モデル次数については対橋梁形式や橋長に応じて,検出対象とする振動数が2Hz以下の低次 振動数に対しては初期モデル次数を解析的検討結果に基づく適正値に比べて高く設定(帯域分離 推定法を適用)する必要があることがわかった.なお,振動数が2Hz以上の帯域に対しては,先 行研究における適正値よりも25%程度高くなることがわかった.

(3) 実橋にて計測された常時微動のうち,振動が励起されやすい交通振動のみを対象として,常時微 動に対する検討と同様の方法で同定計算パラメータに関する影響検討を実施し,各パラメータの 適正範囲を推定した.しかし,3橋に共通した各パラメータの適正範囲に統一的な傾向は見られ なかった.その要因としては,通行車両の重量や速度など交通振動の励起状態が必ずしも同等で ないことや,加振される橋梁の規模や形式が異なることが要因と考えられる.ただし,鋼ランガ ー橋であるA橋については,交通振動時の方が各パラメータを低く設定できる傾向にあり,その 橋梁形式から振動しやすい構造であることが起因していると思われる.

第6章では,実構造物の加速度計測結果からSSIにより推定された固有振動数を参照値として,設 計値より作成した初期 FE モデルのパラメータを更新するモデルアップデートにより,実構造の動特 性を再現する FEモデルの精緻化手法を構築した.そして,5層ラーメンモデルによる簡易構造系と 亀裂損傷が発生した三径間連続鋼箱桁橋を対象として,構築した手法の妥当性を検証した.

(1) 5 層ラーメンを対象とした簡易構造系における検証の結果,固有振動数についてはモデル更新前 後の誤差率が0.004%以下となり,実構造とほぼ同等の動特性を再現することができた.しかし,

モデルパラメータとした板厚については,モデル更新前後で最大約13.6%の変動が生じ,板厚の 計測結果と一致しない結果となった.その要因としては,板厚以外の構造特性(ヤング係数や質 量密度)が実値と異なることや,モデルの境界条件や部材接合部の結合条件が実際と異なること