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第 7 章 ピア・レスポンスの発話機能の特徴

7.3 結果

7.3.1 発話機能における L1 使用と L2 使用の比較

本節では、L1使用はL2使用と発話機能においてどのような違いがあるかを考察するた めに、まず、2回目のL1群の学習者Cn-HとCn-E(書き手Cn-H、読み手Cn-E)の会話と、

2回目のL2群の学習者Jp-CとJp-J(書き手Jp-C、読み手Jp-J)の会話を取り上げ、それ ぞれの発話機能の割合を算出し、図 7.1に示す。次に、両群の学習者の会話例を挙げ、そ れぞれの発話における機能と特徴について考察していく。

図 7.1 を見ると、両群の学習者は<意見を言う><アドバイスする><反論する><自 己評価><他者評価>などの発話機能の割合がかなり近いことがわかった。L1群の学習者 であっても、L2群の学習者であっても、ピア・レスポンス活動ではこれらの発話機能が多 いことがわかった。

次に、<不明点を指摘する><質問に答える><同意する><否定する><アドバイス を求める><説明>などの発話機能の割合はL1使用のほうがより高い。

一方、L2使用は<話題提示><自分の立場を述べる><関係づくり><理解の表明><

話し合いの緩和>などの発話機能の割合がもっと高い。特に注目すべきなのは、<関係づ くり><理解の表明><話し合いの緩和>の割合は L1 使用がほぼゼロであるのに対し、

L2 使用は高いことである。Jp-CとJp-J のペアはピア・レスポンス活動においての関係づ くりや、理解の表明、話し合いの緩和などの発話機能がより多いことがわかった。

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7.1 Cn-H・Cn-EJp-C・Jp-Jの発話機能の割合の比較:2回目

それでは、このような発話機能の割合の違いがどのように会話に反映されているのか。

以下は、L1群Cn-H・Cn-E(書き手Cn-H、読み手Cn-E)の2回目の会話例である。

L1群の場合:2回目

【例7.1】

Cn-E:有一个想法他很重视名誉吗?

Cn-H:他不是想要三颗星,还要接待外宾?

Cn-E:他那个不算是注重名誉吧,他无论什么时候都是很在意这些的。6

Cn-H:“大切にする”,他很珍惜那个名誉,就是很珍惜地去接待他那位外国朋友。

Cn-E:他不管是外国朋友,还是其他什么客人,都是很认真啊。9

Cn-H:可是电影确实是给了他很特写的地方啊,他很紧张,说自己腕がよくない,很紧张。9

100 Cn-E:紧张吗?9

Cn-H:你忘了吗? 3

日本語訳(筆者による。以下同様。)

Cn-E:思ったんだけど、小野さんは名誉が大事なの?不明点を指摘する

Cn-H:小野さんは三ツ星を獲得して外国のお客さんを接待したいんじゃないの。質問に答え

Cn-E:それは名誉を重んじているとはいえないでしょう。小野さんはいつでもどんなことに

も気をつけているのよ。否定する

Cn-H:「大切にする」。名誉を重んじるというのは、あの外国の友達を真剣に接待していた

ことだよ。説明する

Cn-E外国のお客さんでもいいし、普通のお客さんでもいいし、彼は真剣に対応しているよ。

反論する

Cn-H:でも、映画には確かに彼がクローズアップされて、「腕がよくない」と言って、緊張 していたじゃない。反論する

Cn-E:緊張してた?反論する

Cn-H:あなた忘れたの?質問に答える

この部分の会話例は、Cn-E(読み手)と Cn-H(書き手)が「小野さんが名誉を重んじ ているかどうか」をめぐっての討論である。Cn-Eが単刀直入に「小野さんは名誉を重要視 している」ことに対して疑問を投げかけ、相手の作文の不明点を指摘した。それについて、

Cn-Hは小野さんが外国のお客さんを重視しているからだと答えた。しかし、Cn-E はその ような答えに納得できないで、「小野さんがいつでもどんなことにも気をつけている」と考 え、Cn-Hの答えを否定した。Cn-Hはその考えに対し、「名誉を重んじるのは、外国のお客 さんを真剣に接待していたこと」を指していると説明し、自分の立場を堅持した。続けて、

誰に対しても小野さんが真剣に対応していたとCn-EはCn-Hを説得しようと反論したが、

逆にCn-H から映画の中の例「小野さんが緊張していた」と挙げられて反論された。最後 に、Cn-Eは「緊張してた」と反論しようとしたが、結果的にCn-Hに説き伏せられた。

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ここで特徴的なのは、Cn-HとCn-Eの「答える→否定→説明→反論→反論→反論→答え る」という過程がうかがえることである。反論を重ねることで、Cn-Eは辛抱強くCn-Hを 説得させたが、自分の考えばかりで説得力のない証拠を出したようなので、Cn-Hは自分の 立場を変えず、映画の中の実例を挙げてかえって Cn-E を説き伏せた。このやり取りの過 程を見ると、Cn-EはCn-Hを説得させられなかったものの、二人の会話の深さと複雑さが うかがえる。

【例7.2】例7.1の続き

Cn-E:我感觉相同点都在说一个事儿,就感觉颠过来倒过去都是一个事,废话太多。 7 Cn-H:那我写上。5

Cn-E:我感觉好的地方是共同点找的挺好。 7

Cn-H:你还跟我说废话太多,你怎么总是在自我矛盾啊。 15

Cn-E:不是很明显的日中之间的共同点。你要是随便找个人也会有这样的观点。7 Cn-H:嗯,不够突出不够明显。 5 14

Cn-E:并不认为珍惜名誉是件坏事,你能不能正着说,别反着说?7 Cn-H:我乐意,这叫做语言的深度。

Cn-E:就是你用了一个“悪いこと”、就感觉跟“悪いこと”比起来、よいこと能舒服点儿。 8 Cn-H:“よいことだと考えます。”5

Cn-E:你喜欢用“悪いことではない”的“ないではない”、是不是为了凑字数啊? 2 Cn-H:やだ、違う。 6 3

日本語訳

Cn-E:共通点がどれも同じようなことばかりに感じる。同じ話を繰り返しているだけで、余 計な話が多いと思う。意見を言う

Cn-H:じゃあ直す。同意する

Cn-E:よいところは共通点をよく見つけたこと。意見を言う

Cn-H:余計な話が多いと言っていたのに、それじゃあ矛盾しているよ。他者評価

Cn-E:はっきりした日中間の共通点だとはいえない。誰でもあのような観点を思いつくわ。

意見を言う

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Cn-H:うん、はっきりしていない。同意する 自己評価

Cn-E:名誉を重んじることは悪いことではない。否定の形じゃなくて、直接的にいえばよい んじゃない?意見を言う

Cn-H:好きで書いたの。これが言葉の奥行というものなの。

Cn-E:「悪いこと」で書いてあるけど、「悪いこと」より「よいこと」のほうが聞こえがよ い。アドバイスする

Cn-H:「よいことだと考えます」。同意する

Cn-E:あなたは「悪いことではない」みたいに、「ないではない」という文型が好きだよね、

字数を稼ぎたいの?不明点を指摘する

Cn-H:「やだ、違う。」否定する 質問に答える

会話例7.2においては、Cn-E(読み手)が<意見を言う>という発話機能を4回使った。

Cn-E は、相手の作文を肯定的に評価せずに、「共通点がどれも同じようなことばかり…余 計な話が多い」と否定的な意見を出した。Cn-H(書き手)は、「直します」と素直に意見 を受け入れようとしたが、「よいところは共通点をよく見つけたこと」という2つ目の意見 を言われて困惑したので、<他者評価>の発話機能を使用して「あなたは矛盾している」

と論駁した。それで、Cn-Eは迅速に対応して自分の考えを整理して「はっきりした日中間 の共通点だとはいえない」と3つ目の意見を述べた。4つ目の「否定の形を使わないで、

直接的にいえばよい」という意見に対し、Cn-Hはまず「これが言葉の奥行きというものな の」と冗談を言ったが、相手の意見やアドバイスが的確だと理解し、同調した。

この会話例は、全体的に、言語形式の丁寧度の低い会話である。ポライトネス理論で説 明すると、Cn-Eが相手を賞賛せずに否定したことは、相手の「ポジティブ・フェイス」を 脅かしている。Cn-Hは自分の「ポジティブ・フェイス」を守るために冗談や仲間内の言葉 を用いたが、相手の否定的な意見が的確だと思った時にも積極的な行動をとった。

そのほか、読み手の意見は必ずしもわかりやすいものではない。この場合、「フェイス」

の侵害の考慮よりは、読み手と書き手がどのように協力して問題を解決させるかのほうが 重要である。

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【例7.3】例7.1・7.2の続き

Cn-H:“私は生の食べ物が苦手です。…”11

Cn-E:这段话太乱了,能不能简单的说明:就日本人喜欢吃生食,中国人不喜欢吃生食就完事

了呗。 7 8

Cn-H:这不是写着了嘛,“中国では…” 12 Cn-E:就不要说“我”喜不喜欢啦! 8

Cn-H:我也是一个中国人,不要忽视我作为一个中国人的代表性和特性。 9 Cn-E:啰嗦。 7

Cn-H:我是一个传统的…9 Cn-E:此段太啰嗦。 7

日本語訳

Cn-H:「私は生の食べ物が苦手です。…」アドバイスを求める

Cn-E:この段落はめちゃくちゃ。「日本人は生ものが好きだが、中国人は生ものが苦手」と 簡単に説明できない?意見を言う アドバイスする

Cn-H:ここに「中国では…」と書いてあるでしょ。説明する

Cn-E:「私」が好きかどうかと言わなければよいじゃない。アドバイスする

Cn-H:私だって一人の中国人でしょ。私の中国人としての特性を無視しないでください。反 論する

Cn-E:うるさいなぁ。意見を言う Cn-H:私は伝統的な…反論する

Cn-E:この段落はだらだらしてる。 意見を言う

会話例7.3では、Cn-Hが「私は生の食べ物が苦手です…」とCn-Eにアドバイスを求め ていた。Cn-E はまず、「この段落がめちゃくちゃ」と Cn-H の一段落の文に否定的な評価 を与えてから、日本と中国の生の食べ物に対する態度を比較すればよいというアドバイス を提供した。さらに、この会話では、Cn-E が Cn-H の間違いを指摘する際に、「めちゃく ちゃ」、「だらだらしてる」と簡潔な言葉ではっきりと表現した。Cn-Eが反論する際も、「こ こに書いてあるでしょ」、「私だって一人の中国人でしょ」とはっきりと自分がそのように