第 2 章 ピア・レスポンスの理論的背景と先行研究
2.4 まとめと残された課題
ピア・レスポンスの効果は、作文プロダクト、活動プロセス、フィードバックおよび学 習者の意識によって研究されているが、ピア・レスポンスにおける話し合いでの使用言語 としてのL1とL2の比較については完全に解明されているとはいえない。
まず、作文プロダクトによる研究は L1 が作文の言語形式的側面だけではなく、内容的 側面にもよい影響を与えることをある程度明らかにしているが、L1とL2の比較において、
L2 が作文プロダクトにどのような役割を果たしているのかについてはあまり触れていな い。広瀬(2000, 2004)の一連の実践研究は、ピア・レスポンスにおけるL1とL2の使用
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についての比較はなされていないのが現状である。また、作文プロダクトによる研究は作 文の言語形式の側面と内容的側面の比較にとどまっており、作文の論理的側面の観点が欠 けている。つまり、ピア・レスポンス活動での話し合いにおけるL1とL2の使用が作文プ ロダクトにどのような役割を果たすかを明らかにするにあたって、以上の研究では限界が あると考えられる。
また、活動プロセスによる研究は、発話機能の側面からアジア系・欧米系の学習者間、
言語能力の差のある学習者間などがピア・レスポンス活動に参加するにあたってどのよう な差異があるかを検証したが、L1とL2の比較がなされていない。
そして、作文推敲過程という側面からもESL・EFLの英語教育場面や韓国語をL1とす る日本語教育の実践において、研究は盛んに行われているが、中国の日本語教育現場を対 象としたものは管見の限り見当たらない。
さらに、学習者の意識による研究は、学習者が話し合いにおいてL1とL2のどちらの言 語を選択して使用した理由を明らかにしているが、L1とL2の使用がピア・レスポンス活 動への満足度や作文学習観へどのような影響を与えるのかについてまだ解明されていない。
Yu & Lee(2014:36)、Yu & Hu(2017:25)は、EFLの英語教育場面において、「学習者 の信念と目標」、「教師のフィードバック」などが使用言語の選択を左右する理由であるこ とを明らかにしている。広瀬(2000, 2004)、石塚(2012)の、韓国語をL1とするJFLに おけるL1とL2の使用についての比較がなされている研究では、学習者がL1を使用する 傾向があるということが明らかにされたものの、中国語をL1とする日本語学習者がL1と L2の使用についてどのような意識を持っているのかが依然として不明である。
したがって、本研究では、中国四年制大学の日本語専攻の学習者を対象に、作文プロダ クト、活動プロセスおよび学習者の意識というピア・レスポンス活動の各方面から、L1と L2 のどちらの言語によるピア・レスポンスがより効果的なのだろうかを探求する。まず、
中国の大学の日本語専攻の作文教育におけるピア・レスポンス実践の必要性を見つけたう えで(研究課題1)、L1使用とL2使用を比較しながら、どちらの言語によるピア・レスポ ンスが作文によりよい効果を与えるか、L1使用とL2使用での発話機能の違いを探り、学 習者の意識や作文学習観を調査し、L1使用とL2使用が作文学習と学習者に及ぼす影響を 明らかにすることにする(研究課題2)。その上で、ピア・レスポンスでの使用言語として のL1とL2の効果が異なる原因と、今後作文教育を実践するにあたっての改善方法につい て検討する(研究課題3)。
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次章以降、これらをもとに中国におけるJFL環境のピア・レスポンスについて論じる。
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