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第 8 章 フィードバックと作文推敲

8.4 結果

8.4.1 フィードバックと作文推敲の関連

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た。そして、調査対象者のフィードバックと作文推敲の過程での思考・感情を再現するた めに、「プロトコル分析(protocol analysis)」(Ericsson & Simon 1984)を採用した。プロト コル分析は「発話プロトコル法」とも呼ばれ、布山・諏訪(2014:473)によれば、「行為 中の思考過程を行為時もしくは行為後に被験者に発話してもらい、その発話内容を行為時 の思考を反映しているデータとみなして分析する方法である」と定義している。また、布 山・諏訪(2014:473‐474)は、発話プロトコル法には、行為時に行為を行いつつ発話す る発話思考法(Think aloud method)と、行為後に行為を回想しながら発話を行う回想プロ トコル(Retrospective report)があると述べている。学習者はピア・レスポンスでの話し合 い中、同時に感想を発話することが不可能であるため、本研究では発話思考法ではなく回 想プロトコルの手法をとった。

以上の手順に沿い、本章での研究課題を実証していく。

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8.2 3回目のフィードバックの推敲成功数の平均値

項目

平均値

t

有意確 L1 L2

表層レベ ル変更

形式的変更 1.357 1.571 2.060 .424 意味保持変更 2.600 2.733 2.052 .774

意味レベ ル変更

ミクロ構造変更 3.933 2.600 2.048 .019*

マクロ構造変更 3.600 2.000 2.048 .000**

8.3 3回目の妥当性のあるフィードバックの平均値

項目

平均値

t

有意 L1 L2 確率

表層レベ ル変更

形式的変更 1.786 1.357 2.069 .265 意味保持変更 3.500 2.733 2.060 .131

意味レベ ル変更

ミクロ構造変更 5.000 3.533 2.064 .036*

マクロ構造変更 3.600 2.800 2.048 .133

8.4 3回目の具体性のあるフィードバックの平均値

項目

平均値

t

有意 L1 L2 確率

表層レベ ル変更

形式的変更 意味保持変更

意味レベ ル変更

ミクロ構造変更 4.467 1.800 2.074 0.000**

マクロ構造変更 3.400 2.200 2.086 0.004**

*p<.05 **p<.01

表8.2より、3回目のフィードバックの推敲成功数においては、ミクロ構造のフィードバ

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ックとマクロ構造のフィードバックの 2 つの項目で、両群の間に有意な差が見られた(そ

れぞれp=.019;.000)。2つともL2群よりL1群のほうの平均値のほうが高かった。表8.3

の結果より、妥当性のあるフィードバックの数においては、ミクロ構造のフィードバック に、両群の間に統計的には有意な差が見られることが明らかになった(p=.036)。L2 群と 比較し、L1 群のほうは平均値が高かった。そして、表 8.4の結果より、具体性のあるフィ ードバックの数において、ミクロ構造のフィードバックとマクロ構造のフィードバックに、

両群の間に有意な差が見られた(それぞれp=.000;.004)。いずれもL1群のほうの平均値 のほうが高かった。換言すれば、L2使用と比較し、L1使用のピア・レスポンス活動は3回 目のミクロ構造のフィードバックの妥当性や、ミクロ構造のフィードバックとマクロ構造 のフィードバックの具体性・推敲成功数の面に有効だと言えよう。このことは、L1 による フィードバックが推敲につながったのは、フィードバックが妥当性や具体性があるためで あることを示している。つまり、L1によるフィードバックの妥当性や具体性が高いことは、

推敲成功のための原因だと判断できるだろう。

以上の結果から、L1 によるフィードバックは、L2 によるフィードバックと比較すると、

ミクロ構造・マクロ構造のフィードバックの妥当性や具体性は高く、推敲成功数も高いこ とがわかった。

8.5 フィードバックのアイデアユニット数 総数 採用数(率)

L1 295 248(84.07)

L2 261 179(68.58)

一方、L1使用・L2使用のフィードバックの採用率に関してはアイデアユニットの数値結

果(表8.5)からは、両群においてほぼ同等数のフィードバックを受け取っているが、L2使

用よりもL1使用のほうが、学習者の書き直しをより促すという結果となった。

また、ポストインタビューによって L2 群の学習者のミクロ構造・マクロ構造フィード バックの具体性・採用率が低い理由が明らかになった。これらの意味レベルフィードバッ クについて、読み手は、「具体的な修正意見のかわりに、不自然な箇所だけを指摘した。先 生もこのように私たちの作文に意見を与えるので、このような指摘の仕方で十分だと思っ

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た」、「自分自身の考え方に自信がない」などが、具体的なフィードバックを与えなかった 理由を述べた。書き手は、「相手からのフィードバックの理由がわからない」「相手からの フィードバックが誤っている」などが、フィードバックを採用しなかった理由であった。

すなわち、学習者は L2 を使用すると、書き手は自分の考えを述べるのに困難となり、ま た読み手は、相手からのフィードバックを効率的に理解したり咀嚼したりすることに支障 が出ることを示している。

以上の結果を推敲レベルの観点から以下のように考察を行う。表層レベル的変更に関し てはL1群とL2群に大きな差がつかなかった。言い換えれば、テキストの内容に影響を及 ぼさない変更はL1使用かL2使用かによる変化をあまり受けないようである。そして意味 レベルでの推敲は L1 群の学習者は意識が向けられるように見られた。フィードバックの 採用率から、L1使用のほうが、より多くの書き直しを伴ってことがわかった。これは、テ キストの内容に影響を及ぼす変更には、L1使用のほうがより効果的であること示している。

このように、より意味レベルでの推敲を促しているのは、ピア・レスポンス活動における L1使用であるといえる。