第 3 章 研究方法
3.3 分析方法
ここでは、ミックス法と、ミックスを用いる際の並行的トライアンギュレーション戦略、
この戦略の視覚モデル、およびこの戦略を用いる際のデータの収集方法を説明していく。
3.3.1 ミックス法
一つの研究の中で量的、質的の両方のデータを収集し分析することは、ミックス法を用 いた研究である。Creswell(操・森岡訳 2007:17)は、ミックス法は最初に心理学者の
Campbellと Fiske によって提唱したことを紹介し、「1つの手法による理解から他方の
手法による理解へと広げていくこと、異なるデータ源から得た結果を 1 つにまとめたり、
相互に確認したりすること」などの理由から、多くの研究者に採用されていると述べてい る。さらに、ミックス法は、1つの研究プログラムで実施される複数の研究の中であるが、
1 つの研究内のことでもある。それらの理由に関連して、本研究は、1 つの研究内で実験
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を行い、そして作文・ワークシート・発話・インタビューなどのさまざまなデータを得て、
最後に統合して1つの結果にまとめるという研究手法をとるため、研究の量的かつ質的側 面の両方の確認のミックス法に属すると考えられる。
3.3.2 並行的トライアンギュレーション戦略
Creswell(操・森岡訳2007:243-244)は、並行的トライアンギュレーション(concurrent
triangulation approach)は、ミックス法での最もよく知られており、多く使用されてい るアプローチであると紹介し、量的データの収集と質的データの収集は、1 つの研究の同 一段階で、並行で実施されるので、それほど多くの時間を費やさずに済むなどの利点をも っていると指摘している。その理由により、本研究ではミックス法での並行的トライアン ギュレーション戦略をとったのである。
Creswell(操・森岡訳 2007:19)によれば、ミックス法による研究では、量的データ
には統計学的分析に使われるデータなどがあり、質的データはインタビューによるデー タ・AV データ・テキスト・文書類のデータなどが含まれるという。本研究は、量的デー タと質的データともに収集する。
この戦略によるデータの収集手順の視覚化モデルを図 3.2に示す。図3.2は量的・質的 データの収集、分析そして解釈のための手順を表している。
+
QUAN 作文データ ワークシート
QUAL 作文データ 発話データ ワークシート インタビュー QUAN
データ収集 QUAL
データ収集
QUAN データ分析
QUAN データ分析 データの結果の統合
図3.2 データの視覚的モデル
「+」は、データの収集が同時、あるいは並行して実施される形式を意味する。「→」
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は、データ収集が順次実施される形式を意味する。「QUAN」と「QUAL」は、それぞれ
「量的」と「質的」の略語である。四角で囲んだものは、量的ならびに質的データの収集 を強調している。
そして、具体的なデータの収集方法は以下のとおりである。
(1)作文資料
1人の学習者に3回分の作文(推敲前の作文と推敲後の作文)を出してもらった(資料
②を参照)。そして、欠席や作文の提出なしの学習者がいなかったため、3回分全部提出し た学習者は28人であった。
(2)録音・録画
学習者の承諾を得て、ペアごとにスマートフォン(スマートフォンは学習者の私物であ る)を置いて、L1群とL2群の3回のピア・レスポンス活動における発話を録音録画した
(資料②を参照)。
(3)インタビュー
インタビューのデータについて、録音した内容はすべて文字化し、必要な部分に日本語 訳をつけ、データを整理した。
3.3.3 分析対象とするデータ
本研究はL1群とL2群の合計3回のピア・レスポンス活動における作文データ(推敲前 の作文と推敲後の作文)、発話データおよびインタビューを分析データとする。そのデー タの内訳は表3.4のとおりである。
表3.4 分析データの内訳
分析データ L1群 L2群
作文
推敲前の作文(3回×14人)
推敲後の作文(3回×14人)
推敲前の作文(3回×14人)
推敲後の作文(3回×14人)
発話 3回×420分 3回×420分 ワークシート 3回×14本 3回×14本 インタビュー 3回×14人 3回×14人
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3.3.4 分析手法
各章で使用されている分析手法をまとめると表3.5の通りである。その詳細は各章の「分 析手法」で記述されている。
表3.5 分析手法
分析データ 章立て 分析手法
作文 ワークシート インタビュー
第5章(研究課題2)
原田(2006b:6)の作文の評価表を採用して、推敲前の作文と推 敲後の作文への評価を行った。
第6章(研究課題2)
収集されたピア・レスポンス前後の作文を、トゥールミンモデル
(戸田・福澤訳2011:143-173)によって分析し、論理構造の特 徴を確認した。
発話 第7章(研究課題2)
発話機能のコード・システムを使って、学習者の3回のピア・レ スポンスの音声データを分析した
インタビュー
第9章(研究課題3)
1・2回目のインタビューデータから「ピア・レスポンスへの意識」
「ピア・レスポンス使用言語への意識」に関する語りを取り上げ、
「質的研究の分析手法SCAT(Steps for Coding and Theorization)」
(大谷2007:29)を用いて、ピア・レスポンス使用言語に対する
意識分析を行った。
第10章(研究課題3)
2回目のインタビューから収集した「作文の学習への考え」に関 するデータを取り上げ、SCATとKJ法を併用して分析した。
次の第5章から第10 章までは、同じ実験に基づいた分析し、考察を行う。