第 7 章 ピア・レスポンスの発話機能の特徴
7.3 結果
7.3.2 ピア・レスポンス活動の積み重ねによる変化
前節では、L1使用とL2使用において、それぞれどのような発話機能が働き、言語形式 にどのように表現されるかについて観察し、それをポライトネス理論によって考察した。
7.3.2.1と7.3.2.2では、両群の発話機能における特徴が、ピア・レスポンス活動の推移によ
りどのように変化していったのかを観察する。ここでは、活動の積み重ねによる変化に焦 点を当てる。
L1使用とL2使用の比較:初期
図7.2は、3回のピア・レスポンス活動の初期における両ペアの1回目のピア・レスポン スにおける発話機能の割合を表している。図7.2を見ると、発話機能の種類は、Cn-I・Cn-F が内容のやり取りに関するものが多いが、Jp-F・Jp-I が<関係づくり><相槌><やり取 り流れの管理>などの会話の形式が Cn-I・Cn-F を上回ることがわかる。特に、Jp-F・Jp-I は<関係づくり>における割合が33%に達していて目立つ。
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図7.2 Cn-I・Cn-FとJp-F・Jp-Iの発話機能の割合:1回目
以下、両ペアの会話例を示す。
【例7.7】L1群読み手(Cn-I)、書き手(Cn-F):1回目
Cn-I:这个温度罗列没有觉得很必要的感觉。
Cn-F:对,这个就叉叉叉,然后这也叉叉叉,然后我再从这儿开始接着说它的历史,到了现在 了,又办奥林匹克,它有很多可以玩的地方。
Cn-I:吃的地方,玩的地方。
Cn-F:玩的地方,台东的夜市什么的。然后我想我怎么把它这个很吸引住的地方…我想把它弄 上去。
Cn-I:放到最后也可以,就放到介绍历史。
110 Cn-F:对,然后…
Cn-I:介绍到现在之后,加上。
Cn-F:我觉得有点不伦不类,而且我觉得大学就不要了。这样的话我觉得就差不多了。
Cn-I:你也可以直接放在历史这里也可以。
Cn-F:对对对。我直接可以在历史之前加上这个。
日本語訳
Cn-I:この温度の列挙はあまり必要じゃないと思うんだけど。 意見を言う
Cn-F:そう、ここは削除、ここも削除、それで、ここからここの歴史、現在ではオリンピッ クが開催された場所で、遊ぶところがたくさんあることを書く。
Cn-I: 食べる場所、遊ぶ場所 補足する
Cn-F: 遊ぶ場所は、台東の夜市とか。でね、この魅力のある場所どうやって…どうにかし
て書きたいんだけど。 アドバイスを求める
Cn-I:最後の部分に書いてもいいと思う。歴史を紹介するところに。アドバイスする
Cn-F:そうだね。それから…。 補足する
Cn-I:現在を紹介する文の後に加える。補足する
Cn-F:それだとおかしい。あと、大学の部分はいらないかな。そうするとだいたい大丈夫だ と思う。 反論する
Cn-I:(大学の部分は)そのまま歴史の前に置いてもいいと思う。 アドバイスする
Cn-F:そうそうそう。これはそのまま歴史の前に置く。同意する
Cn-I(読み手)が相手の作文について疑問箇所(「ここでの温度の羅列は必要ではない」) を示したとき、Cn-F(書き手)はそれを受け入れた。Cn-Fが改善方法を述べたとき、Cn-I は補足という形で意見を述べて作文の改善に協力した。Cn-Fはチンタオの魅力ある場所を 書こうと思ったが、それを文章のどこに置けばよいのか悩んでいた。そこで、Cn-Iは歴史 を紹介する文の後ろに置けばよいとアドバイスした。このようなタスクでは、Cn-Iが一方
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的に意見やアドバイスを提供していたのではなく、Cn-F も反論や補足をしたりしている。
二人は対等な立場に立っていることがわかった。
原田(2006a:70)が指摘したように、対等な対話を実現するためには、対等に支援し合 い、相手と対等に向き合って論じることが不可欠だ。
次に示す例は、L2グループに所属した学習者Jp-FとJp-Iの1回目の作文についての会 話である。
【例7.8】L2群読み手(Jp-I)、書き手(Jp-F):1回目
Jp-I:まずは、よかったところをいいます。あなたの文章構成なめらかと思います。これは とてもいいです。そして、生活に接する。 やり取り流れの管理 話し合いの緩和
Jp-F:ありがとうございます。 関係づくり
Jp-I:まあ、よくなかったところは1つあります。これは長すぎる。 やり取り流れの管理
意見を言う
Jp-F:はいはい。 相槌
Jp-I:意味をわかりません。 意見を言う
Jp-F:わかりました。次、今度注意します。 同意する
Jp-I:ずいぶん上手になります。 他者評価
Jp-F:ありがとうございます。 関係づくり
Jp-I:このタンゴク(単語)は使いがいいですよ。
Jp-F:あ、ありがとうございます。 関係づくり
Jp-I:この文はちょっとね、長すぎる。 意見を言う
Jp-F:はい。 同意する
Jp-I:意味をよくわかりません。注意してください。だいたいいいですよ。流れます。 意
見を言う 他者評価
Jp-F:ありがとうございます。 関係づくり
Jp-I:がんばります。 関係づくり
Jp-F:ありがとうございます。 関係づくり
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Jp-I:がんばってください。ハハハ 関係づくり
Jp-F:ありがとうございます。 関係づくり
Jp-F:じゃ、次。 やり取り流れの管理
この短い会話の中で、「ありがとうございます」と感謝を表す言葉が6回も出てきた。「あ りがとうございます」が明らかに濫用されているので、全部の会話を聞くと騒々しく感じ る。調査後のインタビューで、書き手のJp-Fにその理由を聞いたが、感謝の言葉を使わな いと相手に失礼で、また相手が怒ったら困ると思ったからだと答えた。相手に感謝の気持 ちを表そうとする書き手のJp-F は相手に対して遠慮がちで、「ありがとうございます」を 頻繁に口に出してしまったわけである。しかし、それは意義あるものではなかった。学習 者Jp-Fは感謝の言葉の重要性はわかっていたが、いつ、どのような頻度で使えばよいかは わからなかったのである。その理由としては、L2 での会話の実践的な練習がまだ少なく、
実際にどう使用するべきかという言語使用知識が不足していることがある。ただし、L2群 の学習者は関係づくりに非常に注意を払っていたということは間違いないだろう。
また、学習者は話す言葉の正確性を非常に気にしていることもわかった。例えば、読み 手の Jp-I は「がんばります」といった後、すぐに自分の間違いに気づいて、「がんばって 下さい」に言い直した。このようなやりとりは数多く観察されており、L2会話能力の向上 に役立たないとは言わないが、ピア・レスポンス活動における対話のスムーズな進行の妨 げになってしまう。ピア・レスポンス活動に限ったことではないが、授業というものは定 められた時間内に行われるものなので、限られた時間の中で自分の話す言葉の正しさに意 識が集中すると、作文に対する考えや意見といった内容を話す機会が削られ、作文の推敲 に対する高い効果が得られないという懸念がある。ほかには、L2の話し合いでは複文や条 件文などの複雑な表現は使えず、単文で終わるという特徴が見られた。
L1使用とL2使用の比較:後期
図7.3は、後期(3回目)における発話機能の割合を示したものである。後期のピア・レ スポンス(3回目)は初期(1回目)と比べても大きな変化はないことがわかる。ただし、
発話機能の種類は両群とも初期に比べると増加していたことがわかった。発話機能の割合 は、Cn-I・Cn-Fが初期と同様に【作文に関する発話機能】に集中し、特に<不明点を指摘
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する><質問に答える><説明する><自己評価>における割合がJp-F・Jp-Iを大幅に上 回ったが、【活動の管理に関する発話機能】が比較的少ないことがわかった。それに対し、
Jp-F・Jp-I のやりとりは<進行><やり取り流れの管理><話し合いの緩和>など【発話
の管理に関する発話機能】の割合が高く、Cn-I・Cn-Fを超えた。以下、例7.9と例7.10を 挙げながら考察する。
図7.3 Cn-I・Cn-FとJp-F・Jp-Iの発話機能の割合:3回目
【例7.9】L1群読み手(Cn-I)、書き手(Cn-F):3回目
Cn-I:怎么从消费能力就拔高到国内的?这个、这个提高太快我一时适应不了。
114 Cn-F:这不是有个转折嘛,这不就让你适应嘛。
Cn-I:这个しかし好短啊,但是这个集中性消费和消费能力提高有什么关系,我经济学的不好。
Cn-F:因为集中性消费。大家都去集中买一个东西的时候是集中性消费。
Cn-I:那你还说消费能力提高啦!
Cn-F:嗯?对啊。
Cn-I:已经比以前有提高了,但是仍然还处于一个比较低的水平,那你没有表达出这个意思来。
你没有说和发达国家相比还处于一个低的水平。
(日本語訳)
Cn-I:どうして消費能力から国内の話に飛躍するの?ここの、この話は転換が早すぎてつい ていけない。 不明点を指摘する
Cn-F:ここに逆説があるじゃない。これがあるから話についていけるでしょ。説明する 質問に答える
Cn-I:この「しかし」だけじゃ短すぎでしょ。それに、消費の集中と消費能力の向上にはど んな関係があるの?私、経済のことはよくわからない。意見を言う 不明点を指摘する 自己評価
Cn-F:消費が集中したから。みんなが1つの物を買うことが消費の集中だよ。説明する 質
問に答える
Cn-I:だったらどうして消費能力が高くなったって書いたの?不明点を指摘する Cn-F:あっ、そうですね。同意する
Cn-I:昔よりは向上したが、それでもまだ低いレベルにあるということが表現できていない。
先進国と比べるとまだレベルの低い段階にあるとは書いていない。確認を求める アド バイスする