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第 9 章 ピア ・ レスポンスのプロセスへの学習者の意識

11.4 使用言語を意識したピア・レスポンスの指導への示唆

11.4.3 使用言語を意識した自己評価

学習者が「必要に応じて自らの思考の過程をコントロールするために自らの思考の過程 について気付くようになる」(Burke 2006:96)メタ認知能力の育成が大切である(本論文

p.141を参照)。言い換えれば、学習者が使用言語の選択権を持ち、自律的な学習を育てる

ために、教師の支援を得ながら、学習者がL1とL2使用のそれぞれの特徴を認識したうえ で、自分で学習目的を決め→そのための計画を立て(そのうち、使用言語の選択を含め)

→ピア・レスポンス活動で友達と協働しながら自己追究し、その過程で絶えず自己の活動 の過程および成果を、学習目標に照らして評価し解決に至るという自己評価の能力を身に 付けることが大切であるといえる。

朱ほか(2014:261)は、協働学習の実践の中、グループディスカッションでの余談が多 く、L1でのディスカッションに熱心であるが、L2でのディスカッションに熱心ではなく、

教科書の内容には情報が欠け、時間や発言の管理が難しく、そして標準を定式化すること が困難であるなどの問題点を教育現場の教師たち30が反映したと報告している。これから、

L1とL2の使用のピア・レスポンスの共通の問題点は「グループディスカッションでの余 談の多いこと」や「発言の管理の困難さ」などがあるということがわかった。よって、活 動中の余談や教師の管理の困難さの減少のために、学習者がピア・レスポンスの学習過程 を自ら管理するメタ認知力の育成の必要性が浮き彫りになってくる。

それについて、本研究は、ピア・レスポンス活動で学習者が自己評価を通じて自ら管理 するためのルーブリック31を提案する(表11.3、11.4)。

30 朱ほか(2014:232):2013128日に「協働学習」をテーマとするシンポジウムに出席した日 本語教師たちである。これらの教師たちは北京日本学研究センターと日本国際交流基金主催の「日本語教 育学実践研究」に参加したことがあった。

31 ルーブリックとは、「ある課題について、できるようになってもらいたい特定の事柄を配置するため の道具」(ダネル & アントニア著, 佐藤ほか訳, 2014:2)である。ルーブリックの利点と使用範囲につ いて、ダネル & アントニア(佐藤ほか訳, 2014:2)は、「ルーブリックは、ある課題をいくつかの構成 要素に分け、その要素ごとに評価基準を満たすレベルについて詳細に説明したもので、様々な課題の評価 に使うことができる。例えば、レポート、書評、討論への参加、実験レポート、ポートフォリオ、グルー プワーク、プレーゼンテーションなどである」と述べている。このように、ルーブリックは学習者の相互 作用を中心とした協働学習に適用できることを示唆している。

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ピア・レスポンスには「読み手」と「書き手」という2つの役割があるといわれた(池

田1999a)。これに対して、本研究では、自己評価ルーブリックを書き手用(表11.3)と読

み手用(表11.4)に分けた。この2つのルーブリックは、ダネル & アントニア(佐藤ほ か訳, 2014)のルーブリックの作成手順に従い、文章の論理性を可視化する簡易型トゥール ミン・モデルの「議論分析チャート」(ティモシー & キャロリン著, 杉野ほか訳, 2004:

42)を参考にして作った。

11.3 自己評価のルーブリック(読み手用)

課題:ピア・レスポンス活動を行う。あなたは読み手である。ペアとなった相手が書いた作文について、。

評価観点32 評価基準

コ メ ント

評価

表現力(メタ 言語力)

相手の作文の概要を捉えられ、主要な事実や観点、文化背景を得られるか。

相手の作文の観点や主要な内容をまとめることができるか。

相手の作文の主な事実と観点を、読んだ内容に基づき、比較・分析・概括・推 定することができるか。

コミュニケ ーション力

繰り返し・説明・質問などの方法を通じてコミュニケーション中の理解障害な どの障害を克服することができ、コミュニケーションを順調に進められるか。

思考力

相手の作文の主張は明確に示されるか。その根拠はあるか。

相手の作文の反論はあるか。その根拠はあるか。

相手の作文の反駁はあるか。その根拠はあるか。

相手の作文の結論はあるか。それは適切であるか。

学習力

相手は自分の周辺の素材を活用できるか。

自分のピア・レスポンスによる作文学習過程へメタ認知(つまり、自身の作文 を書いてから、ピア・レスポンスを経て、推敲作文を完成するまでの過程を管 理すること)ができるか。

協働力 他者と協力的に問題を解決する意識があるか。

読み手向けの自己評価のルーブリックは、読み手が、①仲間の作文のどの部分がよく書 かれていないかを指摘し、どのような側面から仲間の作文を見るか、②仲間とのコミュニ

32 ダネル & アントニア(佐藤ほか訳, 2014:4)は、ルーブリックの基本要素は課題・評価尺度(達成 レベル・成績評価点)・評価観点(課題が求める具体的なスキルや知識)・評価基準(具体的なフィード バック内容)の4つであると規定している。ダネル & アントニア(佐藤ほか訳, 2014:5)は、「学生 が採点道具になるとわかっているものの一番上に課題を明記することで、ほかの方法ではあり得ないほど、

学生の関心をぐっと引きつけることできる」と指摘しているので、表11.3のルーブリックの一番上にピ ア・レスポンスという課題を記述した。

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ケーションを達成するための多様なテクニックを使用できるか、③仲間の作文の論理的な 問題を判断できるか、④作文学習プロセスをメタ的に認識することができるか、⑤協働的 な意識をもって仲間と相互作用をしたか、の5点をチェックすることで、表現力・コミュ ニケーション力・思考力・学習力・協働力の向上を検討するものである。ピア・レスポン ス活動では、学習者がこのルーブリックを参照しながら自分で評価ができ、自分で管理す るとともに、教師が学習者の参加の程度をチェックすることができる。

11.4 自己評価のルーブリック(書き手用)

課題:ピア・レスポンス活動を行う。あなたは書き手である。

評価観点 評価基準

コ メ ント

評 価 尺 度(○△×

表現力(メタ 言語力)

自分の作文の概要を捉えられ、主要な事実や観点、文化背景を得られるか。

自分の作文の観点や主要な内容をまとめることができるか。

作文の主な事実と観点を、自分で比較・分析・概括・推定することができ るか。

コミュニケ ーション力

繰り返し・説明・質問などの方法を通じてコミュニケーション中の理解障 害などの障害を克服することができ、コミュニケーションを順調に進めら れるか。

思考力

自分の作文の主張は明確に示されるか。その根拠はあるか。

自分の作文の反論はあるか。その根拠はあるか。

自分の作文の反駁はあるか。その根拠はあるか。

自分の作文のの結論はあるか。それは適切であるか。

学習力

自分の周辺の素材を活用できるか。

自分のピア・レスポンスによる作文学習過程へメタ認知(つまり、自身の 作文を書いてから、ピア・レスポンスを経て、推敲作文を完成するまでの 過程を管理すること)ができるか。

協働力 他者と協力的に問題を解決する意識があるか。

そして、書き手向けの自己評価のルーブリックは、書き手が、①自分の作文の概要や内 容をまとめるか、観点と事実の有機なつながりがあるか、②仲間とのコミュニケーション を達成するための多様なテクニックを使用できるか、③自分の作文の論理的構造要素があ るか、④作文学習プロセスをメタ的に認識することができるか、⑤協働的な意識をもって 仲間と相互作用をしたかの5点をチェックすることである。

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これらのルーブリックが学習者の作文学習プロセスへのメタ的認知を深め、自律的な学 習者に成長することに役立てばと思う。