第 4 章 実験装置と手法 77
4.6 原子の撮像
4.6.5 原子のトラップ周波数の測定
シングルビームトラップのトラップ周波数の測定手法と結果について述べる.中 性原子のトラップ周波数は原子のトラップ深さや中性原子気体の密度分布の推定に 用いた.
トラップ周波数の測定するためにリチウム原子気体の集団の運動モードを励起し,
光トラップ中での原子気体の振動を吸収イメージから測定した.光トラップ中の原 子の振動モードにはブリージングモードとスロッシングモードが存在する.ブリー ジングモードは原子集団の大きさが変化するモードであり,スロッシングモードは 原子気体の重心が振動するモードである.
動径方向のトラップ周波数の測定は以下のように行った.トラップ光を一時的に 遮断し,原子気体を一時的に拡散させた後再びトラップレーザーを入射し,原子気体
を再度捕獲した.すると光トラップ中の原子気体はブリージングモードで振動する ため,この様子を軸方向から観察した.ブリージングモードで原子が振動する場合,
原子の振動はトラップ周波数の二倍である.図 30(a), (b)にイオントラップ中心ま で原子を輸送したときのトラップ周波数の測定結果を示す.この測定から動径方向 の独立した二軸についてトラップ周波数(ωatom,x′, ωatom,y′) = 2π×(671,868) Hz が得られた.
軸方向のトラップ周波数はエアベアリングステージ上のレンズを動かして原子気 体の運動を励起し,スロッシングモードを観測することで測定した.図 30(c)に原 子チャンバーでの軸方向トラップ周波数の測定結果を示した.
一方,イオントラップまで原子を輸送したときの軸方向のトラップ周波数は光学 系の都合上測定できなかったため,動径方向のトラップ周波数から計算した.
図30 シングルビームトラップのトラップ周波数測定.(a), (b)イオントラップ まで輸送した原子のシングルビームトラップの動径方向周波数の測定結果,動径 方向の独立した二軸のブリージングモードを観測した.(c)原子チャンバーでの シングルビームトラップの軸方向トラップ周波数測定結果.軸方向のスロッシン グモードを観測した.
4.6.6 原子の寿命
光トラップ中の原子気体はバックグラウンドガスとの散乱で光トラップから失わ れる,すなわちロスする.そのため,光トラップ中で保持しているだけでも時間と ともに数が減少していく.この原子気体の寿命はチャンバー内の真空度に依存する.
原子数変化に伴う原子気体密度の変化はイオンとの散乱レートに影響するため原子 とイオンの散乱を行う際に把握する必要がある.
図 31にイオントラップの中心まで輸送したときの原子気体の寿命測定の結果を 示す.実線は指数関数によるフィット結果であり,これよりイオンチャンバー内で の原子の寿命は8.1秒と測定された.
図31 イオンチャンバーでの原子の寿命測定.横軸はシングルビームトラップの 保持時間であり,縦軸は原子数である.