第 2 章 水産講習所が水産業に及ぼした影響
第 5 節 人材供給と企業家輩出
2. 卒業生の就職状況
卒業生の就職状況について、水産伝習所時代(1889~97年)、水産講習所・明治期(1898
(注74)東京水産大学百年史編集委員会(1989、P.94)
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表 5 卒業生の就職状況推移
図 3 実業・会社・官庁就職者割合の推移
~1911 年)、水産講習所・大正期(1912~25 年)に分けて示したのが表5 および図3 である。
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水産伝習所時代の卒業生の就職状況は、実業従事者養成という設立目的を反映し、約 四分の一が実業(自営業、もしくは家業に従事)に就いている。次に多いのが官庁であ るが、官庁職員の中でも技師・技手や巡回教師に就いている者が多く見受けられる。
水産講習所時代に入ると、明治年間においては実業就業者の割合が減少し、会社就職 者の割合が増える。水産講習所設立以降の水産業界においては船舶数の増大、水産会社 数の増大とともに資本の集約が始まった。農商務省と密接な関係にある水産講習所は遠 洋漁業推進に伴う技術的・人的要求に応え、卒業生は必然的に会社に就職することにな ったと考えられる(注75)。官庁へ入庁する者の割合にはほとんど変化が見られないが、水 産講習所や水産試験場への就職者が増加傾向にあるという特徴も見いだせる。水産講習 所設立の翌年、1899 年に府県水産講習所規定および府県水産試験場規定が制定され、
地方の財政負担の下に府県水産講習所および試験場が設立され始めたことから、この時 期に水産講習所や水産試験場への就職者が増加したと考えられる。
大正期には再び実業就業者の割合が増加するが、会社就職者の割合はさらに増加して いる。その背景として、主な水産会社の設立がほぼ大正期に集中していることが挙げら れる。明治末期と大正末期を比べると、水産関係会社数、払込金総額共に大幅に増加し ている。表 6 は『水産年鑑』(注76)に示された大正末期における主な水産会社であるが、
30社のうち26社が大正期の設立となっている。主な水産会社の選定基準が記されてい ないことからあくまで参考の領域を出ないものの、大正期における水産業進展と人材需 要急増につながったことを裏付ける一つの指標になるものと考える。
また、1909年5月現在の水産関係会社数は282社、払込金総額は1,289万887円で あったが(注77)、1923(大正12)年末現在では515社、資本額は1億605万6,532円と なっている(注78)。両年の出所が違うため単純比較はできないものの、これもおおよその 目安として大正期に相次いで水産会社が設立されたことを示す資料として提示する。
(注75)佐々木(2010、P.99)は、本科漁撈科卒業生のうち遠洋漁業科に進学した者につ いて、明治期の33.6%から大正期の18.6%へと低下したことを踏まえ、その低下分が大手 水産を含む水産関係会社への就職分となったことを指摘している
(注76)帝國水産會(1925)
(注77)農商務省水産局(1910、P.P.249-251)
(注78)帝國水産會(1925、P.P.303-311)
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表 6 大正末期における主な水産関連会社
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表 7 卒業生の就職先一覧(一部)