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会話管理に関する先行研究

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3.1 会話管理の観点から見た呼びかけ語

3.1.1 会話管理に関する先行研究

小林(2002a)は対称代名詞と対称詞の「呼びかけ用法」について,自然談話をデータ に,その出現の位置に着目して,機能及びそれぞれの現れ方の違いを考察した.2.2節で概 観したが再掲する.まず,出現位置として,A.単独で出現する,B.発話順番の冒頭に出現 し,後続する文・句がある,C.発話順番の頭部に発話標識(Discourse Markers)に引き続き 出現する,D.発話順番中の句,文などに引き続き出現し,さらに後続する文がある,E.発話 順番の末尾に出現する の五つに分類,観察した.その結果は表 3-1にまとめられる.

表 3-1 小林(2002a)の会話管理的機能の分析結果(表 2-2再掲)

A.単独で出現及びB.発話

冒頭

発話順番の取得,相手の注意喚起,聞き手認定

C.発話冒頭の発話標識に 後続

談話標識によって注意喚起や発話順番確保が済んでいるた め,聞き手認定及び相手にも認識させる役割,発話順番の保 持

D.発話順番中 発話順番保持のための注目要求及び聞き手の再認定

E.発話順番の末尾 聞き手認定,聞き手の応答の期待という形で発話順番を譲渡

する役割

また,文頭の談話標識の直後に現れるものは提題を兼ね主題性が強い傾向があること,そ して,すでに聞き手認定が行われ,必ずしも必要がない発話順番中間や末尾での呼びかけ は,強い排他的指示性を生み,話し手の判断や聞き手への批判・非難などの発話効果を上げ ることが見られることも指摘している.

小林(2002a)の分析に対して筆者が考える不備は三点ある.一点目として,小林が指摘 する「聞き手の再認定」という機能に関するものである.もし談話が二人で進行している場 合,呼びかけ語は位置を問わずに「聞き手の認定/再認定」を行っている.小林自身,対称 詞は「いかなる形で発話順番のいかなる位置に現れ,文内対称詞を伴うか否かにかかわら ず,聞き手認定の機能を持つと考えられる」(15)と述べる.しかし,発話では例えば終助 詞等様々な形式によって聞き手の再認定を行っているにもかかわらず「あえて相手を直接に 指示する対称詞はもっともダイレクトに聞き手を認定する働きを持つもの」(15)であると 考え,発話冒頭では聞き手認定,発話中や末尾では聞き手再認定という機能を持つとした.

しかし,「聞き手の認定/再認定」は2.2節(15)で見たように「呼びかけ語」の基本的機能 であるため,この機能を主張する根拠は薄い.二点目には,小林が引用節内の「呼びかけ 語」を扱っていないことである.話し手は,引用によって「声」の多重性を操作する(メイ

ナード1997).一発話順番内における引用節は話し手が今ここで話す次元とは異なることを

示しており,その異なる次元の内部の呼びかけ語も考慮に入れる必要があると考える.三点 目として,主題と呼びかけ語の議論の不十分さが残ることが挙げられる.「文頭またはその ごく近くで,提題助詞などは伴わずに用いられながら,同時に後続文の主題となっているも の」(13),つまり呼びかけ語であるがハ(主題)の機能を有しているものがあると述べる が,それ以上の言及はない.「呼びかけと同時に提題を兼ねている」(15)と考える根拠につ

いても議論がない.このような理由で,小林(2002a)の研究の不備を踏まえて分析を行い たいと考える.

李(2015b)は,独立語としての呼びかけ語の出現位置をセッション開始時,ターンの冒 頭,ターンの末尾の三つの基準に分類して分析した.その結果は表 3-2に表すことができ る.

表 3-2 李(2015b)の呼びかけ語の機能の分析結果

セッション開始時

相手を確認

話し手の存在を相手に気付かせる

複数のメンバーから特定の相手を指定する

ターンの冒頭

話題をかえる 相手を戒める

真剣な話をする前置き あらたまり

ターンの末尾

追及する 念押し 忠告する 親しみを表す

これらの機能は,談話内における話し手と聞き手の関係の調整方法と,談話を管理する上 での機能を混乱しており,機能の記述に統一がない.

森本(2008)は会話分析の手法で,発話冒頭で聞き手の注意獲得のために発せられる名前 とその後続発話に注目して分析した.その結果,名前と後続発話が一続きになっている場合 は,発話全体が完全に一つの文としてデザインされており,それまでの活動を切断すること なく聞き手の注意を獲得できる.それに対して名前→受け手の応答→後続発話という形式 は,活動はいったん切断され,呼びかけ語は後続発話のための前段階として聞かれるとい う.「名前による呼びかけと後続発話の部分とを一つの文として聞きうるようにデザインす るかどうかは,受け手が呼びかけ手の話しかけにどれほど気づきうるか,呼びかけ手がそれ までの活動を切断し,新たな活動を開始しようとするかどうかといった,そのつどの会話の 状況によって決定される」(252)と結論した.発話冒頭における名前に限定して,同じ「注 意獲得」でも聞き手の状況を常にモニターした上で呼びかけ方を調整しているという会話分

析は非常に有意義である.単独発話となる呼びかけ語は後続発話の前置きとなるという森本 の分析結果は,本研究の分析でも確認された.

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