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被害者(原告) Lloyd Insulation(インド)Ltd.

国籍 インド

被申立て人(被告) Punj Lloyd Insulation Pvt.Ltd.

国籍 インド

商業活動の段階 流通

侵害された権利の種類 営業上の詐称通用 本件に判決を下した機関 デリー高等裁判所 1999年5月

原告の主張:

原告は、1956 年会社法に基づいて設立された会社であった。同社は、設立当初から他の業 務に加えて断熱材を販売していた。同社は断熱材業界の草分け的存在であった。また、断 熱 性 検 査 業 務 も 行 っ て お り 、TISCO、Indian Oil Corporation、NTPC、Hindustan Petroleum Corporation LTD.、Cochin Refinery 等の大手企業を顧客としてきた。断熱材 事業は、高度の技術力と多大な経験を必要とする。原告には、数千万ルピーに上る注文を きわめて効率よく処理してきたという立派な実績があった。 「Lloyd Insulation」(イン ド)の名称は、設立当初からの原告の商標および商号であり、そのまま現在に至っている。

原告は最近、Punj Lloyd Insulations Pvt.Ltd.という名称の別会社があることを知った。被 告は、原告の承認または許諾なしに前記商号をつけた。原告の株主も被告の発起人も、

1987年8月6日付け裁定および 1989年 11月 15日付け裁定の2つの裁定の当事者であっ た。これらの裁定は裁判所の決定でなされた。この 2 つの裁定の規定により、当事者は、2 年間または1989年11月15日付け裁定が履行されるときまで、競合する事業に従事できな いものとされた。被告の会社の株主は上記裁定に署名しており、その責任を果たす義務が あった。原告の事業は、きわめて高度の専門的知識と技術力を必要としていた。

被告のような新しい会社が同一または類似の名称を使用した場合、それは必ずや顧客の混 同を招き、したがって、原告の評判に取り返しのつかないダメージを与えるようになる。

顧客はだまされて、被告と原告が同一であると信じこまされるおそれがあった。被告は Punj グループの一員であるため、混同の可能性を一層高めた。被告が原告の商号を使用し たことは、被告の事業を原告のそれと見せかけるに等しかった。被告の行為は不正競争に 当たり、不正競争はコモン・ローに基づいて提訴することができた。したがって原告は、

原告の商標および商号(trading style)と同一または一見類似した商標および商号で事業 を行うことを被告に禁ずるよう請求した。

被告の主張:

被告は、次のような根拠を特に挙げて上記申立てに異議を唱えた。「本申し立ては裁判所 の訴訟手続きの濫用である。本訴訟の根拠である原告の事業は技術的・専門的業務に関す るものであり、したがって 1958年商標法に基づく詐称通用を根拠に差止命令を得ることは できない。原告が 1956 年に事業を始め、1992 年 7 月にみなし公開会社になったというの は誤りである。実際には、原告は 1997 年に設立された。断熱材事業は他の事業とともに Punj Sons Pvt. Ltd.が行っていた。Punj Sons Pvt. Ltd.はミネラル・ウールの断熱材をま ず開発し、Punj Lloyd Ltd.が同社の建設事業部を引き継いだ」というものである。

区別する上で主要部分または基本的な特徴と思われる商号を Punj Lloyd が使用することへ

原告が何ら異議を唱えないことに対して、原告は被告が属する Punj Lloyd グループに契約 法上の義務を負っていた。競合する事業への参入禁止は 2年間であったが、これは 1991年 10月31日に終わっている。原告は、1989年 11月 15日付け裁定が履行されたことを認め た。Punj Sons Pvt. Ltd.の建設事業部が原告(訳注:文脈から被告と思われる)の傘下に 入った(1989 年 11月 15 日付け裁定を参照)ことから、1989 年以降「Punj Lloyd」の語 は被告グループと関連付けられている。被告は会社登記官に 3 つの名称を提示し、Punj Lloyd Insulation Pvt.Ltd.が同官より承認された。

判決およびその理由:

原告の申立てによれば、被告は悪意を持って原告の名称ときわめて類似する名称の Punj Lloyd Insulation Pvt.Ltd.の商号で会社を設立した。被告は、原告の名声や信用に基づいて 断熱材事業で儲ける(encash)ことができるように、また原告であるかのように見せるこ とができるように、原告の名称を自社の名称として付け、それによって一般大衆の混同を 招 き 、 原 告 の 合 法 的 な 事 業 を 原 告 か ら 奪 お う と し た 。 被 告 は 、 原 告 す な わ ち Lloyd Insulation(インド)Pvt. Ltd.の事業を自分の事業と見せかけた。ゆえに原告は、被告が前 記商号に基づいて事業を行なうのを差止命令という手段によって禁止することを望んだ。

一方、被告の主張によれば、Punj Lloyd Pvt.Ltd.なる名称の会社は、1989年11月15日付 け第2裁定に基づいて被告の傘下に入ったが、Lloyd Insulationの名称および商号の会社は 本件原告に与えられた。被告は、Punj Lloyd Pvt.Ltd.の商号で別種の事業を行っていた。

したがって、原告は前記名称の使用に異議を唱えることはできなかったはずである。「断 熱材(insulation)」は一般的な言葉である。したがって、被告が断熱材事業を行う際に前 記商号を使用することに、原告は異議を唱えなかった。1989 年 7 月 11 日付け基本定款に よれば、Punj Lloyd Ltd.の会社設立の目的の 1 つは、断熱材、耐火物内張りおよび耐食性 ライニング、タービン、動力システムならびに熱回収システムを行うことであることは明 らかである。原告も被告もともにそれぞれの顧客に技術的な援助やサービスを提供してお り、これらの顧客は一般庶民や無学の者ではなかった。両社ともに、Reliance Petroleums Ltd.、Essar Projects Ltd.、Bharat Petroleum Corporation、Bakrie Harper Corporation、

Indian Petrochemicals Corporation Ltd.、Nuclear Power Corporation、Engineers India Limited、Gas Authority of India Limited、Oil India Limited等、世界的に著名で国際的 な評価を得ている企業と取引していた。そのような大企業とその役員が常にだまされると は信じがたいことである。したがって、混同の根拠は何ひとつなかった。ゆえに、被告が 原告とみなされることも、その逆もあり得なかった。

以上のことから、判決するに当たって生じた問題は、被告が自らの事業を原告のそれと見 せかけたのは事実であったか、また、原告は仮差止命令を得るために本件を明白に立証し たかである。「詐称通用」という用語は商標法(以下「法」と略)のどこにも規定されて いない。したがって、これはコモン・ローによる救済であり、詐称通用に関する訴訟は、国 の一般法に基づいて提起することができた。被告は、原告の商標または商号に類似した商 標または商号で被告の商品を見せる際に、被告の商品を原告のそれと見せかけ、そのため に何も知らない大衆をして、被告の商品を原告の商品と誤認混同させているとされた。

詐称通用に関する訴訟では、2 つの商標または商号が類似していることを原告は明白に立証 する必要があることは、法律上十分に認められた原則である。さらに、類似しているため に混乱が生じ、被告の商品が原告のそれと容易に混同して扱われることも立証する必要が あった。原告の主張は、被告は悪意を持って同一の商標を付し、この商標が原告の商標と きわめて類似しているために原告の潜在的顧客がだまされて、被告との取引の際に原告と

取引していると信じ込まされるおそれがあるというものであり、原告によれば、原告と被 告の商号の違いは「Punj」という語のみであって、これがなければ 2 つの商号は全く同じ である、というものである。したがって、被告が同商号を使用することが禁止されない場 合、原告は取り返しのつかない損害を被り、それについては賠償金の算定ができないほど 大きいものである、というものであった。「Lloyd Insulations」として知られている会社 は、本件原告に付けられた名称であるが、「Punj Lloyd Pvt. Ltd.」は 1989年11月15日 付 け 第 2 裁 定 に よ り 被 告 に 割 り 当 て ら れ た 名 称 で あ っ た 。 し た が っ て 、 被 告 は 「Punj Lloyd Pvt. Ltd.」の名称を使用する権利を有し、原告はこの点に関して不平を言うことは できない。

被告が上記商号にもう 1つ加えたのは「断熱材(insulation)」という語であった。「断熱 材」という語は英語の単語で、何者かがこれを使用または占有し、他人に使わせないため に自分だけのものと主張できるものではないが、当該言語における本来の意味を失い、原 告が提供する商品または役務と関連付けられるようになった場合は、この限りではない。

前記一般語を原告が長い間変えずに使用していることを理由に、被告にそれの使用が許さ れた場合には、原告は賠償金の算定ができない位の、取り返しのつかない損害を被るとし て、原告が他の者に同一商号を使用してはならないと請求できるのは、こうした状況およ びこうした時にである。

「Park Court Hotel Limited 対 Transworld Hotel Limited」訴訟(1972年)では、「記 述的な単語の場合、わずかな違いがあれば十分であり、混同とは基準ではなく不実表示の こと、すなわちその語の使用が人をだますことを意図したものであること、という判断が 示された。混同は単なる証拠にすぎない。」J.R.Kapoor 対 Micrinix India、1994 Supp

(3)SCC215 の記録にある最高裁判所の判決を少し引用すると、「したがって、マイクロ チップ技術は多くの製品の基本であるから、『マイクロ』という語は製品の表示と大いに 関連があり、何人も、この語の独占使用を主張することはできない。マイクロチップ技術 を使用した製品の製造者は、自らの商号の前にこの語をつけることは正当と認められる。

電子製品の使用に通じている者はよく知っており、単に商号の前に『マイクロ』という語 がついていることで、誤認混同するおそれはない」というものである。

Asiatic Government Security Life Assurance Co. Ltd. 対 New Asiatic Assurance Co.

Ltd.、AIR 1939Madras 555 訴訟と呼ばれる訴訟では、「ある会社が、別の会社に対して類 似の名称で事業を行うことを禁止する差止命令を求めた訴訟において、名称の類似性を立 証しただけでは不十分で、当該名称の使用によって、原告の事業の実質的な利益を被告が 自分のものとすることになる確率が相当のものであることも立証しなければならない」と の判断が示された。

上述の報告より、容易に以下を導くことができよう。それは、

a) 記述的な語で構成される商号の場合、原告と被告の商号にわずかな違いがあれ ば十分であろう。かたや商標の場合、商標に類似性があるだけで当然に訴訟を 提起できると思われる。

b) 詐称通用に関する訴訟の場合、2 つの商号の単なる類似だけでは、それが混同 を招いて顧客を欺くか、または一方を他方と思い込ませることになるとの結論 を下すには不十分であろう。さらに、両者の名称が類似していたために顧客が だまされて、一方を他方と思い込んでしまったことも立証しなければならない だろう。