• 検索結果がありません。

原告(被害者) :M/s P.C. Mallappa & Co.

国籍 :インド

被告 :マクドナルド(McDonald’s Corporation)

国籍 :米国

訴訟裁定機関 :カルナタカ高等裁判所

判決日 :1998年9月15日

争点 :(a)著作権法−45条非遵守

 (b)詐称通用−国境を超えた知名度 事実関係:

原告の主張:

本件は、原告の社名ロゴ M またはそれに紛らわしく類似したその他ロゴを被告、その 従業員、使用人、代理人等が商標等として使用するのを制限することを求めて万国著作権 条約(CPC)39条 1及び 2項に基づいて原告が起こした申請について、これを認めたバン ガロール市立民事裁判官の命令に対して控訴されたものである。原告は訴訟に伴いこの申 請を提出していた。申請は供述書によって裏付けされており、供述書には、原告がインド における商標マクドナルド及び社名ロゴ M の公認所有権者であり、同商標の登録は同 国で存続中であることが、原告の委任状保持者によって供述されている。他の分類でのそ の他の申請は登録申請中であり、原告の商標マクドナルド及び社名ロゴ M は、世界中 の多くの国で登録されていた。同ロゴは高い知名度と信用を獲得しており、同業者や市民 は原告の事業や商品と結び付けて認識していた。原告の商標は、コカ・コーラやケロッグ と並ぶ世界で最も良く知られた名称であるとされていた。原告は本質的にレストラン及び ファーストフード事業に従事している。原告とその商標は、何年もの間インド中のメディ アの注目の的であり、インドに普及していた。衛星テレビの出現により、インド国民の外 国製品への関心は非常に高まっていた。原告のファーストフードレストランが営業を行う 米国やその他の国から多数の外国人が毎年インドを訪れ、インドに原告の評判と商標マク ドナルド及び社名ロゴ M を普及させた。米国通商部が新たなパートナーシップの機会 を模索する米国企業を支援するため 1997 年にバンガロールに事業事務所を開設し、多数の 外国企業もバンガロールに事務所を設置したことで、それらの従業員がマクドナルドが営 業を行っている国々から同商標と社名ロゴ M に附随する知名度を広めた。

このような状況で、原告は被告が原告の社名ロゴ M を模倣する不誠実な意向で、衛生 用品店の商号として Mallapa と共に M のロゴを使用しており、それによって人々に混 乱と誤解を引き起こし、全く関連のない被告が原告と何らかの関連性があると、原告の存 在をすでに知る人々が信じる可能性があることを知った。被告の活動は原告の事業と知名 度に回復不能な損失と損害を与えていた。従って、原告には一応有利な事件であった。便 宜の均衡も原告にあり、係争中である事業運営に被告または使用人がロゴ M を使用す ることが制限されない場合、多大な損害が生じる可能性が高かった。

被告の答弁:

I.A.1 に対して被告が提出した反対陳述では、原告企業はインドでのロゴ使用を確立してお

らず、原告の商品はそれまでのところインドの顧客には達していなかったと主張されてい る。従って、インドに関する限りでは被告が先行使用者であり、 M の文字と共に商標 Mallappa and Companyを1990年から使用していたことから、詐称通用の問題はあり得な いとしている。さらに、商標登録によって、おおまかに表記する以外には M の文字を 独占的に使用する原告の権利を拒否したことになり、また、原告の M の文字を付した マクドナルドと、両脇に何の文字もない被告のロゴ M と M の文字の上ではなくその わきだけに表示してある商号Mallappa and Companyは、全く類似していないと主張され た。さらに、同国での原告の事業は被告の事業と完全に異種であった。

裁判所の所見:

裁判所は、両当事者とも各自の主張を裏付ける書類を多数作成しており、入念な主張が予 審法廷に提出されたことを観察した。予審法廷では、提出されたこれらの書類と提起され た主張を考慮した上で、原告が差止命令付与を求めて起こした一応有利な事件であり、便 宜の均衡は原告にあって差止命令が認められない場合、原告が甚大な損失及び損害を被る ものとした。よって、差止命令が下された。被告は同反駁命令に対し、それが誤った気ま ぐれなもので、違法であって法的に不当であるとして異議を唱えていた。

両当事者は各自のロゴを法廷に提出していた。Mallappa & Co.の最初の文字であるロゴ M は、原告が使用するロゴ M と酷似していた。裁判所では、事業促進のために原告 のロゴを利用したことに対し、この段階で被告に抗弁の余地はないとの判決を下した。当 初、被告は衛生用品の製造業者であるとの誤った抗弁を行っていた。しかし、Mallappa &

Co.は単に商事会社であり、被告はロゴ M を付してMallappa & Co.の商号で他者の製品 を販売していた。これらのロゴを比較すれば、両者がそれまで抗弁を行った主張から、原 告と被告の事業に何らかの関連があると一般の顧客が考えたことは一見してわかった。

裁判所命令:

裁判所では、予審判事が双方の主張を入念に考慮した上で行った審議を吟味し、原告に一 応有利な事件であるとの判断を下した。さらに、便宜の均衡も原告にあった。特に 1958年 の貿易及び商標法によって原告のロゴが登録されているインドでは、控訴人が原告のロゴ を使用することを許可することはできなかった。予審判事は両当事者共に一見有利である 本事件を正しく認識し、原告に有利となるよう正当に裁量を行使していた。裁判所の命令 は、誤りでも気まぐれなものでもなく、法に抵触するものでもなかった。よって上訴は却 下された。

意見/勧告:

本事件では、同外国企業がインドで事業・商業活動を開始する前に国境を越えて知名度が あったことが認識されており、同企業の工業・知的所有権の保護が裁判所によって許可さ れた。また、インド企業は外国企業と同業ではなく、外国企業の事業や取引と関連がなか った。

本事件でインド企業は、外国企業のインド進出前に当ロゴを使用していた。にもかかわら ず、裁判所は外国企業の主張に同意し、差止め命令判決によって保護し、高等裁判所もこ れを指示した。

(a) インド企業が使用していたロゴは、外国企業のものと全く同一であり、同ロゴは 1968年に外国企業が考案したものであること。

(b) インド企業は抗弁において、単に商事会社であるのに衛生用品の製造業者であると 誤った陳述を行ったこと。

(c) 外国企業のロゴはインドでは有名であり、インドでの外国テレビチャンネルの出現 によってより顕著であったこと。

教訓:外国企業は、著作権及び商標権保護のために複数の訴訟を起こすことで果敢に行動 し、そうすることによって裁判所から保護を得ただけでなく、その過程において、帰属権 を守る獰猛な戦士であるというイメージを確立した。

これが各日本企業がすべきことである。まだインドで事業・商業活動を行っていなくても、

その意向があり、地元企業に権利を侵害されたと判断したら、時を移さず抵抗し、闘わな ければならない。それにかかる出費と労力はそれに値する。