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原告(被害者) :Allergan Inc.

国籍 :米国

被告側 :Milment Ortho Industries 国籍 :インド

訴訟裁定機関 :カルカッタ高等裁判所 判決日 :1997年11月6日

争点 :外国の商標先行使用者の遅滞、公益

事実関係:

原告の主張:

控訴人、Allergan Inc.は、数ヶ国で医薬品を製造する企業であった。インドでは事業を行

っていなかった。第 1 の被控訴人は、インドの医薬品製造業者であった。控訴人は、被控 訴人が製造・販売を行う医療製剤について OCUFLOX”の商標を使用することを制限するよ う求めた。控訴での争点は、外国籍の製造業者が、外国での商標の先行使用を根拠にイン ドでの商標使用を制限する権利に関してであった。

裁判所に提出された資料では、控訴人が、OCUFLOX の名称でオフキサシンやその他の化 合物を含む医薬品目薬を製造していたことは疑いがなかった。控訴人によると、控訴人は 1992年 9月 9日に初めて同商標を使用し、その後欧州やオーストラリア、南アフリカ、南 米の国々で同商品を販売し、オーストラリア、ボリビア、エクアドル、メキシコ、ペルー、

南アフリカ、カナダ、米国で商標権を取得している。商標 OCUFLOX はインドを含む国々 でも登録申請されており、出願中となっていた。控訴人は、OCUFLOX の世界全体での販 売実績を、1993年には596万34個、1,51,000米ドル相当、1994年には7,064,472米ドル、

1995年には14,344,010米ドル、1996年1月から 8月では10,974,869米ドルであったとし た。広告や販売促進の調査報告書に、米国だけで 1992年に 30万米ドル、1993年には 260 万米ドル、1994年には 270万米ドル、1995年には210万米ドル、1996年1月から 8月ま でには 190 万米ドルを支出したともしている。控訴人は、大規模な販売と、インドでも流 通する医療誌での広範囲な広告によって、同製品がこれらすべての国で多大な知名度を得 ていたと主張した。

判事は、詐称通用の訴訟では、原告が同国で早くからの商標先行使用によって、同製品の 知名度を確立していなければならないとした。OCUFLOX は同国では製品を特徴づけるも のではないとした。さらに、原告は被告と異なり、同製品をインドで販売または販売のた めのライセンスも取得していなかったとした。被告はインドで医薬品監督局から正式にラ イセンスを得て OCUFLOX の商標で製品の販売を行っていた。よって仮差止命令は無効と なったが、被控訴人は同社製品 OCUFLOX の販売について別個の計算書を維持し、計算書 の写しを3ヶ月毎に控訴人に提供するよう指令を受けた。

被告の主張:

被控訴人は、被控訴人が商品との関連で OCUFLOX の名称を最初に使用した 1993 年に、

控訴人が OCUFLOX の商標で事業を開始していたことを示す信頼性のある証拠はないと主

張した。被控訴人が OCUFLOX の商標で製品の販売を開始した 1993 年に、控訴人が同商 標についてインドで信用を得ていたことや、被控訴人が控訴人による商標 OCUFLOX の使 用を知っていたことを示すものは何もないとの主張がなされた。便宜の均衡の問題につい ては、訴訟は控訴人が被控訴人による商標 OCUFLOX の使用を知った 2 年後に起こされて おり、その期間に第 1の被控訴人はOCUFLOX の商標で同製品の販売を確立していたと主 張した。被控訴人は OCUFLOX の販売を示す請求書を根拠に、1993年から 1996年 12月 の間に広告費として 19,89,671ルピーを支出したとしていた。この期間、被控訴人は、医師 用サンプル約10万個を含む約40万個のOCUFLOXを製造した。製造したものの価値は約 50 万ルピーとされたが(販売促進用サンプルの価格は 30 万ルピー)、OCUFLOX 販売実 績の数字は被控訴人から提出されなかった。被控訴人からは、控訴人が OCUFLOX の名称 でインドにおいて製品を販売したことは一度もなく、実際には OCUFLOX の商標で他の地 域で販売していたと提起された。

裁判所の所見:

詐称通用の訴訟は、詐称通用という語が示すように、被告が一般市民に対し、その商品を 原告のものとして取引することを制限するものである。原告の知名度を守るためだけでな く、一般市民を保護することでもある。被告は、一般市民が被告の商品を原告のものであ ると誤解するような方法で商品を販売していたはずである。

知名度とは、一般市民が特定の製品やサービスと、有名か否かにかかわらず特定の供給源 とを結び付けたものである。知名度は同国内での取引を基に築かれたものであり、詐称通 用から保護される権利があるとする裁判所もある。通信手段の急激な発展にある程度譲歩 し、原告が他の国で知名度を得ている場合、商標に関連して同国内で何らかの事業活動が 行われているかまたは行われる予定であるならば、商標権は保護されるとする裁判所もあ る。

さらにその他の裁判所では、国際商取引やマスメディアの通信手段、外国旅行の頻度の増 加に伴い、政治的・地理的境界によって意見や即時情報の交換を食い止められないとの見 解を示している。地元事業は詐称通用訴訟の主要要因ではない。しかし、知名度は広く確 立されたものであるか良く知られたものである必要がある。

判決は第 1 と第 2 の見解を反映したものであり、歴史的、地理的理由と、知名度は信用と 同等であるとの理由でそのような判決が下された。信用とは、知名度から派生した利益で あると定義された。詐称通用訴訟を起こすために必要なのは知名度ではなかった。詐称通 用の法律は、収益法の分野で発展した信用の定義には捕われない。

裁判所の意見では、詐称通用訴訟の根拠を成す知名度は地域間で大きな格差がある必要は ない。他国の裁判所に第 1 と第 2 の見解を考慮させる強制力がなんであれ、インドに関す る限りでは、裁判所は第 3 の見解を時効によって採用し、国際的に確立された知名度のあ る原告は、この国で事業を行っていない場合でも自らの保護のために訴訟を起こすことが できる。言い換えれば、製品の知名度はその導入より先になる場合があり、その国で同商 品の取引を行っていなくても存在し得る。

本事件では、控訴人はこの国で事業を行っていなかったが、一見したところ、製品に付し

た名称 OCUFLOX に関し、控訴人がこの管轄区域で宣伝する目的でなく独占権を得ようと

した事件ではなかった。証拠資料では、控訴人は、インドでその製品を販売する合弁会社

をインドの製薬会社と共同で設立していた。問題の商標登録もボンベイの商標権登録局に 申請していた。登録申請から、控訴人が商標 OCUFLOX をインドで使用する計画だったと みられる。

第 1 に、原告は詐称通用訴訟において知名度を立証するために、長期間商標を使用してい ることを証明する必要はなかった。販売量と広告範囲で判断されるためである。

第2に、国外での知名度は広告を通してこの国に入ってくる可能性があった。

第 3 に、購入する市民の観点から問題を考える必要があった。インドで被控訴人の製品の 購入者が、控訴人の製品であると考えて購入している可能性があるとすれば、後から商標 を使用した被控訴人はその使用を制限されなければならない。

最後に、製品が医療製剤であることで、特別な考慮がなされた。

裁判所の事実認定:

これらの原則を事実関係に適用すると、裁判所に提出された資料から、控訴人は被控訴人 の詐称通用に対する告訴を継続するに十分な世界的知名度があることが明らかにわかる。

被控訴人は、控訴人がその使用を OFLOX に限定すれば侵害にはならないとしている。こ の提案は注意を他にそらすものであった。問題は、商標 OCUFLOX が控訴人と国際的に関 連があるか否かであった。一見したところ、関連があるようであった。被控訴人は、1994 年11月に原告から異議を受けた後に築いたとされる知名度に依存することも不可能だった。

それに固執すれば損害を被る可能性があった。

遅滞も論点となったが、被控訴人は、仮救済に対する告訴を無効にするに十分であったと 主張した。一般市民の利益への影響に関しては、遅滞は重要ではなかった。さらに、販売 実績を築いていた被控訴人が突然差止命令を受けることになった場合、遅滞によって控訴 人の権利は無効になった可能性がある。1994年に被控訴人が控訴人から通告を受けたため、

控訴人が要求を強制する訴訟を起こしたことで不意打ちとはならなかった。

侵害を比較する以外に、賠償の問題があった。知名度への損害を年間の売上と販売促進支 出に換算した場合、控訴人によって請求される売上高と販売促進の支出は膨大であり、平 均的規模の企業では保障できないものとなったであろう。実際には被控訴人は裁判所にそ うした提案をせず、判事にもこの件に関してなんら約束をしなかった。

控訴人は逆に、裁判で差止命令が確定した場合、それによって被るであろう損失を被控訴 人に支払うことを、裁判所に対し進んで約束すると陳述していた。

審議を顧慮した裁判所の判決では、命令に対する控訴は、法の原則と事実関係双方によっ て却下されるべきであるとされた。

製品にOCUFLOXの名称を使用しないことで受けるであろう損失を被控訴人に支払うとの、

控訴人が裁判所に行った保証は記録され、これを条件として、控訴は認められ、控訴より 先に下された命令は却下された。従って、1996年12月 18日に判事が下した仮命令が復活 し、訴訟解決まで効力を有することとなった。訴訟費用については命令はない。