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原告(被害者) :Wiley Eastern Ltd. And Others 国籍 :インド

被告 :Indian Institute of Management 国籍 :インド

訴訟裁定機関 :デリー高等裁判所 判決日 :1995年11月6日

争点 :著作権侵害 事実関係:

原告の主張:

第1の原告は出版者であり、ニューデリーに事務所を有していた。第2の原告、U.K.

Srivastava教授は、著作“Quantitative Techniques for Managerial

Decisions”(「経営的決定への量的技術」)のG.V. Shenoy氏、S.C. Sharma氏との共 著者であった。第1の原告は、第2の原告と上述の2人が著者である一方、同著作の著作 権が第1の原告に帰属すると主張していた。被告はアーメダバードにある有名な教育機関 であった。第2の原告は、約20年間被告の従業員だった。

被告のSAC調整役であるDevender Singh氏に対し、第1の原告が出版した上述の著作が 外国の著者Baumol、 Levin、Wangerによる3作から著者に黙って題材を盗んだだけだと する、1992年6月29日付けの匿名の手紙があったと見られる。原告は第2の原告らの共 著を1983年に出版していたが、匿名の手紙は1992年に出された。被告はその後、第2の 原告について専門的調査を実施するため委員会を指名し、同委員会は1992年8月17日付 で報告書を提出した。その後、第1の原告である出版社は1992年8月27日、被告に対し、

第1の原告に権利のある同著作の盗作問題や著作権について被告がコメントを加える試み から生じる可能性のある結果について懸念する手紙を出した。被告が設置した委員会の報 告書と同じ内容の記事が、1992年9月2日付の“Gujarat Samachar”紙に掲載された。

第2の原告は1992年6月6日と1992年9月11日付の手紙で、同著作の盗作や模倣につい て否定した。その後、被告が指名した委員会は1992年9月28日、次の報告書を提出した。

控訴人によると、委員会は報告書で、第1の原告が一定の権利を有する知的所有権につい てコメントした。原告側は1992年8月17日と1992年9月28日付の委員会報告書によっ て被害を受け、訴訟で様々な問題点を提起した。告訴状ではさらに、1993年1月5日付委 員会会議議事録から明白なように、被告が第1の原告に対し刑罰的な訴訟を起こす恐れが あり、第1の原告は1993年2月4日に法的通知書を送付し、盗作であるとの主張について 委員会がさらに調査を行わないよう被告に要求したとしている。第1の原告は委員会に無 条件の謝罪を要求した。原告側は被害額を5,01,000ルピーと試算し、被告が匿名の手紙に 加えて委員会の1992年8月17日、1992年9月28日付報告書を撤回すべきだと主張した。

これらの主張を基に、1993年11月にデリー高等裁判所で訴訟が起こされた。訴訟原因の 節(19節)では、次のように記されている。

「19. 裁判所は、第1の原告に帰属する著作権の問題として、本訴訟をデリーで受 理・審理する管轄権を有し、同著作に関する申し立て事実認定と訴訟原因の一部は、

本裁判所の管轄区域内であるデリー(事業)で発生した。」

被告の主張:

被告が提出したIA 6521/94では、告訴では被告に対する訴訟原因が明らにされておらず、

被告は従業員である第2の原告を調査し盗作の罪を追求する資格を有し、これを著作権侵 害とみなすことも可能であると述べた。従って、告訴の申し立てでも被告が著作権を侵害 したとの主張はないため、訴訟原因が明らかでないと主張した。原告側は5,01,000ルピー の損害賠償には値せず、差し止め命令を請求する資格もない。委員会の報告書は、被告の 従業員に対する措置にのみ関するものである。第2の原告の盗作の罪について内部調査を 実施するだけでは、第1の原告の著作権侵害にはならない。1957年の「著作権法」第51 条の内容は、侵害に対する抗弁を行うことについて十分規定されていない。この主張にか かわらず、委員会の報告書のコメントは「著作権法」第52条が規定する例外に該当すると も主張された。原告側は訴訟を起こした際、潔白ではなかった。第2の原告はグジャラト 高等裁判所に対し1993年1月6日、懲戒措置を無効にする訴えの書面を提出しており、同 請願書は1993年9月29日、裁判官によって認められた。しかし、上訴請願書が1993年 10月27日に提出され、1993年11月8日に記載された。差し止め願いを提出していたこと で、第2の原告に1993年10月29日、上訴請願書の写しが提供された。上訴請願は1993 年11月8日に認められ、裁判官の判決は見送られた。どちらの原告もこれらの事実を隠し ていた。CPC第7条11項によって告訴も却下されるべきであると主張された。

他の共著者Subhash、Sharma両氏は、アーメダバードの市立民事裁判所で被告に対し民

事訴訟第178/94号を起こし、10万ルピーの損害賠償を請求しており、原告はこの事実も隠

していた。管轄権の問題については、IAの12節で次のように記されている。

「12. 上述の主張にかかわらず、被告/申請者は、本件の訴訟原因が本裁判所の管 轄内で発生したものでないことをここに慎んで提起する。問題の全行為はアーメダバ ードで行われた。被告の組織はアーメダバードに位置している。第2の原告の勤務地 はアーメダバードであった。裁判所は従って、訴訟原因が本裁判所の管轄区域内で発 生したものでないため、本事件を審理する管轄権を所有しない。本事件は著作権侵害 ではなく、本来機密でもある委員会報告書に対し原告に不服があるならば、本訴訟を 審理する管轄権を有する適切な裁判所に不服を申し立てなければならないことを慎ん で申し上げる。訴訟原因があるとすればアーメダバードのみであり、従って、本訴訟 を審理する所管裁判所はアーメダバードの市立民事裁判所である。」

裁判所命令:

裁判官は1995年2月21日付命令の7節に記録された通り、第7条10項による告訴に対し、

原告の弁護人が1957年の「著作権法」第57条(1)(b)の趣旨での「著者の特別権利」

の執行を求める非常に明確な立場を取っていたと答申した。以下が7節からの抜粋である。

「7. 審問の際、原告は、1957年の「著作権法」第57条(1)(b)の趣旨での「著 者の特別権利」の執行を求める非常に明確な立場を取った。」

裁判官は、そのような場合、第2の原告に関する限り、単に名誉や知名度の侵害という訴 訟原因はアーメダバードでしか発生し得ず、デリーでの訴訟継続は不可能であるとした。

第1の原告の出版者に関する限り、上述の裁判官の主張が認められるなら、第1の原告が 著作権侵害を訴えているのではないことを基に審理を進める必要があった。そうでない場

合でも、同法第62条(2)により、第1の原告が共著者でない限り、第57条によって同原 告が所有しない特別権利の執行を要求することはできなかった。第1の原告がデリーで事 業を行っているとの事実は、第62条により管轄権の決定とは全く無関係であった。第2の 原告は、共同原告(第1の原告)と結束しデリーで訴訟を起こす権利はなかった。デリー で事業を行っていても、第1の原告には第57条が規定する特別権利がないためである。裁 判官はこれらの論拠を基に、本訴訟がデリー高等裁判所の管轄内ではないとの結論に達し た。被告がアーメダバードに拠点を置いていることにも注目した。被告は教育機関であっ た。安定した大企業である第1の原告によって、アーメダバードよりデリーで対戦する方 が便利であることから、デリーに引っ張り出されたことは明らかであった。裁判官は従っ て、告訴が訴訟原因を明らかにしていないことを問題にする必要はないと判断した。(こ れは上述の原告/控訴人弁護人が認めたためである。)それでなくとも、著作を盗作の罪 に問うことは同著作の著作権侵害とはならない。原告側が名誉毀損を受けたとすれば、ア ーメダバードにおいてであった。教育機関が従業員の調査を行うことは、その従業員の名 誉や知名度を傷つける行為とは言えなかった。裁判官はこれを根拠に、告訴をCPC第7条 10項によって適切な裁判所に提出するよう指示した。

高等裁判所合議法廷(2名の裁判官)に提起された控訴の争点:

本控訴では、控訴人の弁護人から様々な主張がなされた。最初に、判決の7節に記録され た弁護人の主張(上記に抜粋)は正しいものではなく、第1の原告は単独の権利、つまり 著作権侵害に関する権利を主張しており、この点は被告が提出したIAに対し控訴人/原告 側が行った反論で提起されていた、と主張した。裁判所は双方の弁護人に対し、第1の原 告が著作権侵害の根拠で訴訟を起こす資格を単独で有するかどうか論議することを認め、

その目的で、告訴が第1の原告の真の訴訟原因を明らかにしていたかどうかを問題にする 必要があった。

被告への抗弁及び裁判所の所見:

被控訴人/被告の弁護人は、「著作権法」第51条、52条は規定分野が異なっていると主張 した。第51条では著作権侵害とみなされる状況について規定する一方、52条は著作権侵害 ではない訴訟に限り規定している。訴訟が第52条に当てはまらない場合、自動的に51条 に該当し著作権侵害とはならないと主張した。弁護人は、第1の原告が51条に該当する訴 訟を起こしたため侵害の訴訟原因に取組まなければならなかったとし、従って52条に訴え ることはできないと主張した。

裁判所は、被控訴人弁護人の主張は認められるべきだとの見解であった。著作権「侵害」

が何であるかを規定するのは51条だけであった。訴訟が51条のどの条項にも該当しない 場合、その訴訟は侵害ではない。51条が著作権侵害について余すところなく規定している ため、52条への訴えは許されなかった。52条は、例えば、「文学・戯曲・音楽・芸術作品 を、研究調査や個人的学習、批評や評論の目的で公正に扱うこと、また新聞、雑誌、定期 刊行物や放送、映画撮影術によって時事を報告する目的で公正に扱うことは、著作権侵害 ではない」としている。しかし、特定の研究調査や個人的学習、批評や評論が実際に52条 の趣旨での公正な扱いに該当しないと主張することで、51条によって訴訟を起こすことは できない。例えば、52条の趣旨の「公正な扱い」がされず名誉毀損などに該当する場合は、

被害者への救済は損害に対するものになる。52条の基本的趣旨は、インド国憲法第19条

(1)による表現の自由を保護することであり、研究調査、個人的学習、批評や評論、時事 の報告は保護される。52条は、何が侵害であるかについて議会が消極的に規定したもので