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原告(被害者) :Caesar Park Hotels and Resorts Inc.

国籍 :米国

被告 :Westinn Hospitality Services Ltd.

国籍 :インド

訴訟裁定機関 :マドラス高等裁判所 判決日 :1998年6月19日

争点 :国境を超えた知名度 事実関係:

米国ワシントン州シアトルの原告、パーク ・ホテルズ・アンド・リゾート(Park Hotels and Resorts Inc.、以下CPHR)が、マドラスの被告ウェスティン・ホスピタリティ・サー ビス・リミテッド(Westinn Hospitality Services Limited、以下WHSL)に対し、社名の 一部に「ウェスティン」の名称を使用して CPHR 事業を詐称通用することへの終局的差 止命令と、損害賠償及び費用を要求する訴訟を起こした。

本訴訟で原告は、被告が事業を行うにあたって、「ウェスティン」という表現やその他発 音上またはそれ以外に紛らわしく類似した表現を使用して原告の事業を詐称通用すること への仮差止命令の付与を求める申請を提出した。また被告が、係争中の株式公募を公式発 表を行ってさらに進めることや、申込者から出資金を受けることを制限する仮差止命令を 求める申請も提出した。

判事は当事者双方を審問した後、どちらの申請も却下した。原告は、中間判決の申請を却 下する反駁命令に対して上訴した。

原告は、「ウェスティン」のサービスマークで世界中のホテル及びリゾート分野において 第一級のホスピタリティサービスを行っていた。1988 年に、原告はウェスティンホテルを 買収し、16ヶ国に及ぶ70の高級ホテルとリゾートを所有した。原告自身と子会社を通し、

ホスピタリティ、サービス分野でホテル経営サービスを、世界中のビジネス・レジャー客 にはウェスティンホテルの即時予約を提供していた。他国からインドを訪れるビジネス・

レジャー客、またインドから他国を訪れる客の多くが、「ウェスティン」のサービスマー クに非常に馴染みが深かった。このような特色によって、特に 1989年初めから何年にも及 び、原告は「ウェスティン」の名称でインドにおけるホテル予約サービスを含むホスピタ リティサービスに関し、大きな信用と知名度を獲得していた。「ウェスティン」の商標は 世界中で良く知られており、ホテル及びホスピタリティサービスにおいて信用を得ていた。

従って、原告はインドでのホスピタリティサービスに関し、同商標の独占使用権を確保し ていた。

「 ウ ェ ス テ ィ ン ・ コ ン サ ル タ ン ツ ・ プ ラ イ ベ ー ト ・ リ ミ テ ッ ド 」 (“Westinn consultants Private Limited”)の社名で 1989年8月に会社を発足し、「ウェステ ィ ン ・ ホ ス ピ タ リ テ ィ ・ サ ー ビ ス ・ プ ラ イ ベ ー ト ・ リ ミ テ ッ ド 」 (“Westinn Hospotality Services Private Limited”) と 社 名 変 更 し た 被 告 は 、1995 年 に

「ウェスティン」の語を使用してホテルマーケティングと予約システムに着手した。1995 年に、被告はインドでホテルマネージメントサービスの促進・販売を行うためにデイズ・

イン・オブ・アメリカ(Days Inn of America)とライセンス契約を結んだ。これを知り、

原告はデイズ・イン・アメリカに対し、WHSL が「ウェスティン」の語を使用しないよう 要求する通告を送付した。デイズ・イン・アメリカは不可能であるとの返答を送付したが、

WHSL の権利をインド以外では行使しないことのみ合意した。原告は被告に停止命令を送 付したが、被告はそれに合意しない旨の返答を送付した。よって、訴訟となった。

被告の主張:

被告は 1989年 8月に、「ウェスティン・コンサルタンツ・プライベート・リミテッド」の 商号で、ホテルやリゾートのコンサルタントサービスと自動ホテル予約システムを提供す ることを目的として、有限会社として法人化された。1992 年 12 月に被告の社名は「ウェ スティン・ホスピタリティ・サービス・プライベート・リミテッド」に変更された。1995 年3月に同社は株式公開会社となった。

1991 年に被告は「ホットリンク」部門を開始し、即時ホテルマーケティング・予約システ ムを提供し始めた。被告はホテル・リゾート分野におけるコンサルタントサービスを暗 示・象徴する文字 W のロゴを付した。その芸術的な W ロゴで独占的な著作権を有し ていた。被告は最近、大衆的米国ホテルチェーン、デイズ・イン・オブ・アメリカと共同 契約を締結し、それによって被告はインドで同米国企業のサービスを独占的に促進・販売 する予定であった。

被告はホテル・リゾートのコンサルタントサービスにのみ従事しており、「 ウ ェ ス テ ィ ン」の名称でインドにホテル・リゾートを設立する意向はなかった。原告は世界のどこで もホテルやリゾート、ホスピタリティのコンサルタントサービスを行っていなかった。被 告と原告の活動領域は全く異なっていた。原告は、インドでは「ウェスティン」の名称で ホテルを一つも有していなかった。被告は「ウェスティン」の名称でのサービス提供に向 けて販売促進・広告費用に数千ルピーを費やしていた。商標「ウェスティン」は、インド では完全に被告と同一化していた。

裁判所の所見:

裁判所は慎重にそれらの主張を考慮した。判事は、原告がインドでウェスティンホテルを 有しておらず、インドで如何なるホテルへのサービスも行っていなかったことで、原告は インドでは信用を得ていなかったことを主な根拠として、原告の要求を退ける反駁命令を 下しており、詐称通用の法律に関する確固たる法の原理を考慮しなかったと裁判所は指摘 した。

通常では、告訴において差止命令の付与あるいは却下に関して下された自由裁量命令は干 渉されなかった。しかし本事件では、我々の見解では、原告の差止命令付与を求める申請 を却下した際に行使した判事の自由裁量は、その種の自由裁量行使の基準となる確固たる 法の原理と詐称通用の訴訟に関する法律を適用しなかった結果であった。

原告が「ウェスティン」の名称でインドにホテルを所有していなかったことは事実である。

しかし判事は、国境を超えた知名度もまた差止命令の判決を下す十分な根拠となり得るこ とを考慮していなかった。原告がある場所で知名度を獲得した場合、その場所で事業を行 っていなくても、差止命令によって保護されなければならない。

原告が、被告が原告のサービスマークを使用することを制限する仮差止命令の救済を得る ためには、実際にこの国で事業を行っていると立証する必要はないことは明白だった。顧 客を有していれば十分であった。インドに顧客を有していたことは、一般的な意味で、原 告が同国で知名度を得ていたことを意味する。広告によってそうした知名度を普及させる ことができた。従って、インドで何らかの事業を行った結果、またインドで流通する外国 の定期刊行物やインドの定期刊行物で大規模な広告を行った結果、原告がインドでサービ スマークの所有権を獲得していれば、確実にインドで詐称通用の訴訟を起こす権利がある。

裁判所の事実認定:

上記の状況に基づき、裁判所では以下の結論に到達した。

(i) 種々雑多な上訴では通常、仮差止命令の付与あるいは拒絶に関して下された自由裁 量命令は干渉されなかった。しかし本事件では、裁判所では、判事が詐称通用の訴 訟に関して、その種の自由裁量の行使に適用される確固たる法の原理を厳守せずに、

自由裁量を行使したとの見解である。

(ii) インドではホテル事業を行っていなかったが、原告はインドにおいて詐称通用の訴 訟を継続するために、国境を超えた知名度に依存することができた。本事件で原告 から提出された書類では、インドで国境を超えた知名度があり、サービスマーク

「ウェスティン」はインドを含み国際的に流通する雑誌で広告されていたことが一 応立証された。言い換えると、原告の知名度も、インドで入手可能な雑誌での広告 を通して国境を超えてインドに到達していた。

(iii) 本 事 件 で 得 ら れ た 資 料 は 、 原 告 が サ ー ビ ス マ ー ク「 ウ ェ ス テ ィ ン 」 を 獲 得 し 、 1981年、特に原告がウェスティンホテルを買収した1988年から使用して世界的な 知名度を得ていたことを示している。

(iv) その他の書類では、インドから定期的な数の旅行者が、シンガポールだけでなく 様々な国のウェスティンホテルを訪れていることも示している。従って、ウェステ ィンの知名度は、主要国へのビジネス訪問後にインドに帰国する何千もの旅行者を 通し、国境を超えてインドへ到達していた。

(v) 多数のインド人を会員とするウェスティン・プレミア・リゾートによって、多くの インド人が様々な国のウェスティンホテルに訪れ、宿泊していることがわかる。原 告から提出された書類では、インドにはニューデリーやボンベイ、カルカッタ等に 原告が指定した旅行代理店が 17 社あったことを示している。代理店の広告はイン ドの著名な新聞で掲載されていた。原告と総合販売代理店は書面で通信していた。

これらの書面では、総合販売代理店がインド人の顧客に代わって様々な国のウェス ティンホテルの宿泊予約を行っていたことがわかる。

(vi) このように国境を越えた知名度が確立された際、被告がインドのホスピタリティサ ービス分野の活動で「ウェスティン」の名称を継続して使用することが許可される デイズイン・オブ・アメリカとのフランチャイズ契約によって、ビジネス・レジャ ー客の間に、原告ウェスティンとデイズ・インの間に密接な商業的関連があるとの 混乱と誤った認識を与えるとの原告からの懸念は除外できなかった。