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という商標は1998年2月に市場に導入されたものだが、登録の遅延という理由で原告に差し 止め命令が与えられる資格はないと主張した。被告はさらに、被告の「PICNIC」という商 標は1977年に登録済みであるとし、被告の「PIKNIC」という商標はそれより先に商標法 第4分類表30類に登録されている(登録番号No.329970)と反論した。被告はさらに1996年 8月 に 、 次 の 「CADBURY PICNIC」 と い う 商 標 登 録 申 請 を 行 っ た ( 登 録 番 号 No.712676)と主張した。被告の「CADBURY’S PICNIC」という商標は登記係官の検討を 受けたが、その際「PICNIC」という言葉は普通の辞書に掲載されている言葉であるので、

商標登録によって独占使用権を与えられるものではないという指示を受けた。PIK-NIKと いう言葉またはその模倣や間違った綴りは、特有のものではないと考えられているため、

原告は絶対に商標として登録できないことを十分に承知した上でPIK-NIKという言葉を含 むラベルマークの登録を獲得したのだとしている。さらに、CADBURY PICNICおよび

(または)「PICNIC」および(または)PICNICという言葉からなるラベルマークは、被 告の親会社によって世界中の110カ国で登録済であり、それと同様または類似したマークも 他の多くの国々で申請中である。PICNICというマークが世界中で登録・使用されているこ とから、被告の親会社は多国において評判と信頼を得ており、原告は普通の辞書の言葉あ るいはその間違った綴りの独占を主張することはできないとしている。さらに、原告はチ ョコレートや菓子の事業を主とする企業ではなく、その主な事業は染料と化学薬品であり、

食品関連事業は単に補助的なもので「ナムキーン」や「パパズ」などのカテゴリーに入る ような初歩的な製品に限られている。よって、原告は不正かつ軽薄な訴訟を提起し、意図 的に被告を悩ませ中傷しようとし、被告の商標が原告のラベルマークに類似していること を拒否したのである。さらに、PICNICあるいはPIKNIKは普通の辞書の言葉であり、普通 の辞書の言葉は商標として登録できない。したがって被告は、原告にはいかなる差止め命 令も与えられる資格はないと主張し、その申し立てを棄却するよう請願するものである。

第一審裁判所の判決:

第一審裁判官は両者の意見を検討し、提出された文書を評価し、記録から発生する事実に 基づき、また両者の弁護士が根拠とする法律を検討した結果、原告の商標が登録されてお り、原告にとってprima facie caseであること、balance of conveyanceも原告に有利である こと、また差止め命令が出されなければ原告は取り返しのつかない損失を被るであろうと 思われることから、この申し立てに対して原告の請求どおり差し止め命令を出した。この 結果、第一審裁判官は被告がチョコレートやチョコレート食品その他に関して原告の商標 を用いることを差し止める命令を出し、被告に原告の商標「PIKNIK」を侵害しないように、

また被告の商品を原告の商品と偽らないよう制約を与えた。

上告裁判所の観察:

原告の商標とは、上方に少年の絵がついていて特殊な字体と書き方で書かれた「PIKNIK」

という文字が入っているラベルを持つもので、辞書にある言葉(ピクニックという言葉)

に音声的類似性があるものとして登録されている。

ラベル上のPIKNIKという言葉は発明された言葉でも特有の言葉でもなく、原告の商標(す なわちラベル)の本質的特徴を表したものでもない。よって、被告に対する侵害行為はあ りえない。

原告に許可された登録はラベルマークであり、このような登録ではその商品についてピク ニックという辞書の言葉を用いることを妨げるものではない。よって、侵害行為は発生し ない。

原告および被告の両者によって製造・販売された製品は異なるものである。よって侵害行 為は発生しない。

偽造については、両製品は異なるものであり、ラベルも異なる。よって普通の購買者の頭 では混乱したり惑わされたりする余地はない。したがって被告の製品を原告の製品として 偽り取引する余地はない。

侵害行為がないのであるから、どちらにも有利な事件ということにはならない。

裁判で付与される第一審裁判が原告を十分に補償し、被告がその支払いをできるようであ れば、中間判決の第一審裁判は通常与えられるべきではない。この原則を現在のケースに 当てはめると、差止め命令を出すことは事業競合相手の商業的成功につながる道を永久に 閉ざしてしまうことになる。原告が成功を収めるには、損害賠償が十分な補償になるであ ろう。被告が損害賠償を支払うだけの財政的地位を持っていることは明らかであり、被告 には責任を取る用意もある。したがってbalance of conveyanceについては、請求されてい る暫定的取り扱い差し止め命令発令を拒否する。

上告裁判所の決定:

原告の商標に対する侵害行為はなく、被告の商品を原告の商品と偽って取引することもあ りえない。これらの事実により、また同件を取り巻く状況を鑑みると、第一審裁判官が出 した結論は誤りである。よってこれを無効とし、原告によって請求されている差止め命令 を拒否するものとする。

これにより、第1審の判事の決定は無効となり、申請した差止め命令は拒否された。費用に ついての命令は出されなかった。

意見/アドバイス

このケースでは、両裁判所が同じ資料を検討したにもかかわらず、上告裁判所が第一審裁 判所とは異なる結論を出した。上告裁判所の決定はおおむね、PIKNIKという言葉を発明語 として扱うことはできないという事実によってなされたものである。だが音声的には、

PIKNIKはPICNICと同じ発音である。また2社の扱う製品も異なる。製品が異なるという

理由で裁判官を納得させることはできない。裁判所によっては侵害訴訟で、製品が異なっ ても差止め命令を与えた例もある。この場合、両社とも食品を扱っている。よって製品は 異なるが食品というカテゴリーは同じである。他のケースでは、違うカテゴリーに属して いる製品であっても、差し止め命令を出したことがある。

裁判官に影響を与えるのは、事実の全体像と個々のケースを取り巻く状況である。

ケースに関係する特徴が4つあり、そのうち3つまでが非常に条件の悪いものであれば、4つ 目の特徴がそれほど悪くなくても、やはり他の3つと同じように見られる。特徴の全体像が

問題なのである。