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原告(被害者) :Baker and Hughes Ltd.

国籍 :英国

被告 :Hiroo Khushalani

国籍 :インド

訴訟裁定機関 :デリー高等裁判所 判決日 :1998年7月24日

争点 :商標−許可期限後の使用

事実関係:

原告の主張:

原告は商号 Baker の所有権をもっていた。原告は世界的に幅広く事業を展開しており、世 界で数社の企業を上記商号の下に統合してきた。原告は油田設備、製品およびサービスの 分野で世界のリーダーであった。原告は、その製品をインド国内の他に世界の様々な国で 販売し、Baker のトレードネームで国際的な評判を得てきた。第 1 原告が所有していた被 告の株式を売却した後では、第 2被告は、その商号の一部として Baker という語の使用は できなかった。第 2 被告に認められていたのは許可およびライセンス付与による使用に限 定されており、第 2 被告はトレードネーム Baker の所有権はもっていなかった。トレード

ネーム Baker の使用許可は原告側によって取り消され、その旨が被告側に対して通知され

ており、第 2被告がトレードネーム Baker を使用する権利は終了していた。第 2 被告は、

その商号の一部として Baker という語を残すことによって、その商品を原告の商品として 流通させることは許されていなかった。

被告の主張:

被告側は、第 2 被告はその商号の一部として Baker という語を使用する権利があると激し く主張した。第 2被告はその名称を 10年以上にわたって使用してきた。 技術ノウハウ契 約 は、その他のすべての契約に優先するものであり、 技術ノウハウ契約 は当事者間 の唯一の有効かつ拘束力のある契約を構成するものであると宣言していた。したがって、

基本契約 は原告側にはまったく役に立たない空文であった。第 2 被告はその商号に

Baker という語を使用する権利を失った。 基本契約 は第 1 被告に対して与えられたも

のではなく、したがってそれは法律によって求められている認可のためにインド政府に送 られていなかった。インド政府によって認可された唯一の契約は 技術ノウハウ契約 で あった。インド政府は、その 海外協力認可状 の中で、いくつかの条件を定めており、

合弁事業の認可はそれに従うものであった。条件のひとつは、合弁事業による国内販売の 目的で外国の商標名の使用を禁止するというものであった。1973年外国為替規制法の第 28 条はインド準備銀行の認可なく外国の会社がインドの会社にその商標名の使用を許可する ことを明確に禁じていることが強く主張されていた。インドにおける Baker の商標名はイ ンドの商標名としてのみ扱うことができると論じられていた。第 1 原告はインドの会社が 自らの権利で、またインドの商標名として Baker の名称を使用することに同意していた。

第 1原告はその事業を(第 2 被告の)商号に Baker の名称を使用する権利と合わせて第 2 被告に譲渡した。

被告側は、 技術ノウハウ契約 は告訴状にも申立て書にもまったく言及されていなかっ たとして、同契約の停止について原告側を非難した。被告側弁護士は、原告には同契約の 停止に責任があるため公正な救済を受けることはできないとする意見を提出した。原告は、

いくつかの条件に基づいて海外協力に関する第 1被告のプロポーザルを認可する 1984年 4 月 6 日付のインド政府の書簡にも一切言及していなかった。また、原告は、1984 年 12 月 21 日付の 基本契約 がインド政府の認可を求めて提出されなかったという事実を公表し なかった。原告は、原告が第 2 被告によって製造されていた品目をもはや製造していない ことも明らかにしなかった。原告は潔白の身で法廷に臨まなかったため、暫定的差止命令 による救済を原告に与えることはできない。第 2 被告は 基本契約 の実施からかなり経 ってから組み込まれたため、 基本契約 は第 2 被告に対する拘束力がない。第 2 被告の 会社定款は、第 1 原告の指示により、合弁事業に関するインド政府の認可の条件に適合さ せるため、その事務弁護士によって英語で作成されたものであり、第8.3条の内容はそれに は組み込まれていない。原告に Baker という語について所有権はなく、原告が製造した品 目のインドにおける購入者はなかなかみつからなかった。Baker という語はインドの会社 である第 2 被告の製品に付随するものであり、原告の製品に付随するものではない。原告 は一応有利な事件を立証しなかったし、原告に有利な便宜考量もなかったため、暫定的差 止命令を原告に与えることはできなかった。そのうえ、原告は差止命令付与の却下に関し ていかなる損害も被ることはなく、回復不能な損害はきわめてわずかであろう。

裁判所の所見:

裁判所は、第 2 被告の行為から、第 2 被告は 基本契約 を採用し、それに従って行動し たことを明白にした。 基本契約 の恩恵を得てきた第 2 被告の同契約は採用しなかった との主張は認められなかった。同契約が第 2 被告によって採用されなかったとすれば、生 起した問題は、トレードネーム Baker をその商号の一部としてどのように使用しているか に関するものであった。一見したところ、トレードネーム Baker は原告に属するように思 われた。第 2 被告に対するトレードネーム Baker をその商号の一部として使用する許可が 基本契約 からきていることは明白である。第 2 被告の株式の第 1 原告への割当も 基 本契約 に基づくものであった。

また、インドの会社の払込み済み株主資本の第 1 原告による株式保有比率が 40%以下に下 がらない限り、インドの会社に Baker という語をその商号の一部として使用するための会 社の設立を許可するという合意に達するため、第 1 被告が第 1 原告の財産形態を検討した ことを示すものは一切なかった。外国為替規制法の趣旨は、外国為替の不正な国内流入と 国外流出を防止することにある。したがって、Baker という語を第 2 被告の商号に使用す ることを許可する契約にはインド政府またはインド準備銀行の許可は必要ではなかったで あろう。

インド政府もインド準備銀行も第 2 被告がその商号の一部として Baker という語を使用す ることに反対しなかった。会社登記官は、1985年 2 月 13日付で会社設立証書を第 2 被告 に与える際に、第 2 被告がその商号の一部として Baker という語を使用することに関して 除外措置を取らなかった。インド政府は、1986年2月 7日に第 2被告の要求に応じて第 1

被告と Baker の間の上記合意のひとつを登記する際に、Baker という語が外国の会社の

名前の一部を形成するものであるがそれを商号の一部に使用することには反対しなかった。

Bakerが油田機器製造のリーダーであることは 1983年 9月 20日付の第 1被告の書簡に反 映されているように、数年前に溯って第 1 被告には周知のことであり、したがって、第 1 被告はインド政府に Bakerline との合弁事業の設立の許可を申請したのである。製品およ び製造業者ならびにそれらのトレードネーム/商標/商号についての情報の伝播に関する 限り、国境はないに等しい。上記の情報と、信用および事業は、製品が市場に出回る前で あっても、地理的地域に届くことがある。信用または事業の知名度は、全体としても単独 でも、製品の入手可能性やそれを購入する顧客の数に依存するものではない。

裁判所は、問題のこの側面に関して被告側の弁護士に仲裁付託の検討を強く求めた。ある 程度の知識があり、通常の購入者よりも本質的な区別能力のある情報に通じている購入者 は存在するが、単に顧客に教養があるという事実はあっても、ふたつの会社のトレードネ ーム/商標/商号が同じである場合、またはそれらの間の類似性が大きい場合には、知識 と区別により混乱の要素を取り除くものではない。いくつかの判例は、同じ商号、トレー ドネームまたはスタイルを使用しているふたつの会社は相互関係があるとの間違った信念 の下に、教養があって知識豊富な購入者の間でも最初の混乱は起こり得ることを判示して いる。

本件の議論に関しては、裁判所の見解は第2被告の商号に使われているBakerという語は、

Baker との関係または結びつきを示唆するものであり、Baker が被告との関係を終了し

た1995年 2月からは権利侵害に当たるというものであった。第 2被告が商号の一部として

Baker という語の使用を続けることは、顧客に紛らわしさと混乱を引き起こす可能性があ

った。第1原告と第2被告の提携の終了後は、第 2被告がその商号に Baker という語を使 用することは第2被告にとって正当化されるものではないであろう。

各種裁判所の一応の判決の分析から、詐称通用の訴訟においては原告は下記の要素を立証 しなければならない:

1. 原告がその商品、名前またはマークの知名度または営業権を獲得してきたこと;

2. 故意であるか故意でないかに関係なく、原告の名前またはマークの使用によって、あ るいはその他の方法または手段によって被告から生じ、購入者に、被告が提供する商 品またはサービスが原告の商品またはサービスであり、被告が提供する商品またはサ ービスは被告の原告との提携の結果であると信じ込ませるか信じ込ませる可能性のあ る不実表示。

3. 原告は被告の表示から生じた確信によって損害を被ったこと、あるいは損害を被りそ うであったこと。

一応のところ、原告は上記の要素を立証することができた。

上記の議論に関して、裁判所の見解は、原告は暫定的救済付与のための一応有利な事件を 立証したというものであった。便宜の比較も原告に有利なものであった。原告に対する暫 定的差止命令が拒否された場合には、原告はその営業権に関して損害を被る可能性があり、

事件の情況による補償の認定が原告の救済には適切であろう。

事実と法律に関する上記の調査を考慮して、裁判所は、第 2 被告に対して臨時の暫定的差 止命令を下すことが適当であると判断した。したがって、裁判所は以下の通り命令した: