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原告 :Khoday Distilleries Ltd.

国籍 :インド

被上訴人 :スコッチウイスキー協会(Scotch Whisky Association)

国籍 :スコットランド

インドの会社である M/s Khoday Distilleries Ltd.は本件上訴人であった。上訴は、スコッ トランド・スコッチウイスキー協会他による登録の補正申立てを認めた商標登記官補の命 令に対するものであった。

上訴人 Khoday Distilleries は、スコットランド・スコッチウイスキー協会とロンドンにあ るジョニーウォーカー・アンド・サンズ社(Johnnie Walker and Sons, London)による補 正申立ては、「Peter Scotch」の商標は弁別的でもなければ登録権者の商品を識別すること もできないため、KhodayすなわちPeter Scotchは1958年商標法第9条に違反するという 根拠に基づいてなされたものだと主張していた。また「Peter Scotch」の商標登録は誤認混 同を招くおそれのある「scot」という語に抵触するためであるとも主張した。

上記 2名の被上訴人は、Khodayが「Peter Scot」の名称で販売しているウイスキーは、結 果的に上訴人の商品をスコットランドのスコッチウイスキー製造業者の商品として詐称通 用させたと申し立て、上訴人 Khoday を相手取ってボンベイ高等裁判所に民事訴訟を起こ していた。

この訴訟の係属中に前記の理由で登録の補正申立てがなされた。

前記補正申立てを裏付けるため、スコットランド・スコッチウイスキー協会とジョニーウ ォーカー社は二十余りの宣誓供述書を提出した。しかし、上訴人 Khoday は登記官補に自 らの主張を裏付ける資料を何も提出しなかった。

Khodayはまた、上記宣誓供述書を提出した供述者への反対尋問も行おうとしなかった。

したがって、登記官補はスコットランド・スコッチウイスキー協会とジョニーウォーカー が提出した、利用できる資料に基づきこの事件について決定を下した。

Khoday が行った唯一の説明は、上訴人 Khoday の蒸留酒製造所を建て、開業したのは

Peter Geffery Warrenなる人物とその父親の Peter Warren であるというものであった。

「Peter Scot」という名称は、この父親を念頭に置いて、その名称である「Peter」と出身 地の「Scot」を使って造り出されたものであった。

被上訴人スコットランド・スコッチウイスキー協会とジョニーウォーカー社は、スコット ランドのウイスキーには独特の味わいがあり、スコッチウイスキーとして一般に知られて いるウイスキーは常にスコットランドで製造されたものとみなされていること、さらにス コッチウイスキーは何十年もの間インドに輸入されていることを証明するために、スコッ トランド・ウイスキー協会内の英国人弁護士、Barclayの宣誓供述書の付属書類としておび ただしい文書を提出した。

被上訴人らにより提出された他の宣誓供述書、すなわちある企業とスコッチウイスキーの 消費者である女性の供述書から、原告の登録商標が Scotch Whisky に似ているため誤認混 同のおそれのあることが明らかになった。

上訴人 Khoday の弁護士は、Peter Scot の商標はある人物の名称とその国籍の組み合わせ であり、Khoday は 1970 年以降長い間この商標を使用しており、したがって被上訴人らは この商標の使用を黙認してきており、またこの商標は弁別的なものであると主張した。さ らに、登記官補に提出された証拠は専門家である証人の証拠であり、Khoday 側の詐欺に関 する申立てや証明は何もないと主張した。

被上訴人らの弁護士は、登記官補の命令はよく考えられたもので、宣誓供述書、文書証拠 及び準拠法に基づいているとして支持し、この命令は裁量的なものなので、抵触審査を要 しないと主張した。同弁護士はさらに、7 年を長期とみなすことはできないと主張して、黙 認と咎められるのを拒絶した。また、本来インドのウイスキーに対して「Scot」という語 を登録することはできないため、この語は登録すべきでなく、削除すべきだと主張した。

さらに、当該商標の登録を続けることは公益に反すると主張した。

裁判所は、通常の場合でも詐称通用の訴訟がしかるべき裁判所で係属中であれば、補正申 立てに対して裁量権を行使するだけの十分な理由があるはずであるが、本件の事実に基づ き、インドのウイスキーに対して「Scot」という語を使用することの本質的妥当性を考え れば、本件では裁判所の裁量権の行使は被上訴人らに有利になされる、との見解であった。

当裁判所で下された判決に対し上訴したいとの上訴人の要望に基づき、本判決によって不利 益を受けた上訴人がマドラス高等裁判所に本判決に対する上訴を提起できるよう、1999 年 2月20日までほかならぬ当裁判所は本判決の執行を延期した。

意見/助言:

1. 有名外国企業は、長年の努力と莫大な広告費等を通して築いた外国企業の名声を利用 して儲けようと、消費者の混同を招いてその取引や事業に不利な影響を及ぼすような 商標、商号又はデザイン等を何者かが登録しようとしているかどうか絶えず警戒し、

インド市場の動静に目を光らせていなければならない。何者かがインドでこのような 出願をしたことを知ったら直ちに、その登録に対抗する措置を取らなければならない。

2. たとえ登録されていても、そのような登録が目に留まったら、素早く当該登録商標の 補正を確実なものとする措置を取るべきである。

3. 補正措置を講じるのが遅れれば、権利侵害者に黙認の答弁を行わせる口実を与えるこ とになる。

4. インドの法律に補正手続の申立期間に関する定めがない場合でも、このような手続は 迅速に取るべきである。補正手続を取るのが数年遅れた場合、救済を認めてもらうべ く、こちらの有利に裁判所の裁量権を行使するよう裁判所を納得させるには、通常又 は基準以上の証明が必要となる。

5. 登録の出願が商標法の規定に完全に合致している場合は、裁判所には登録を拒絶する 裁量権はない。ただし、補正申立てを認めるか拒絶するかの権限はある。したがって、

裁判所の有利な決定を確実なものとするために、できるだけ早く補正申立てを行うと

共に確かな証拠を添付してそれを裏付ける必要がある。

6. 本件の場合、訴訟記録によれば上訴人 Khoday Industries は補正申立てを拒絶させ るための資料を登録機関に提出しなかった。上訴人は、補正申立てを裏付ける宣誓供 述書を提出した証人に対する反対尋問すらしなかった。

このように上訴人側が本件に相当の注意を払わなかったことと、インドの法律に申立 期間の定めがないことが相まって、補正申立ての提起がかなり遅れた場合でも、スコ ットランド・スコッチウイスキー協会を救うこととなった。教訓は、法律上可能であ っても遅らせるなということである。迅速な行動が最も重要である。

本件の場合、数年遅れた間に、Peter Scot Whiskyは権利侵害している名称を利用し て羽振り良く事業を続けた。

スコッチウイスキー協会は、早く手を打っていれば早く救済されていただろう。