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していた(証拠物件Eの告訴状は、上記の商標での調合薬剤販売の詳細な報告書である)。

1992年1月から1993年7月までの上記2つの商標での調合薬剤の総売上高は、255万

8,000ルピーであった。原告側は、同時期に24万ルピーの広告費を支出していた。

原告の主張:

被告が“TOROLAC”の商標で鎮痛性の錠剤(鎮痛剤)を販売しており、“TOROLAC”(これ 以降、簡潔にするため「侵害商標」という)の商標で鎮痛効果のある注射薬も販売しよう としていることを知った原告側は、被告に対し、1993年7月8日付で停止通告を通達し、

原告が5類を含む調合薬剤、医薬品で1986年12月30日付第465264号の商標“ROLAC”の 登録所有権者であり、同商標は1989年2月16日付「商標ジャーナル」第953号で公告さ れ、同商標登録は有効で存続しており、第2の原告は登録商標“ROLAC”のインドでの登録 使用者であるとの事実に注意を喚起した。同通告ではまた、被告に対し、商標“ROLAC”の 調合薬剤、医薬品はインドで大々的に販売されており、“ROLAC”の商標で販売される同製 剤の販売促進費用に膨大な金額が支出され、原告がLupin Laboratories Limited(被告)

が“TOROLAC”の商標でケトロラク、トロメタミン錠剤の製造を開始し、“TOROLAC”の侵 害商標で販売されていることに気付いたと指摘した。同通告で原告は、被告が原告の登録 商標“ROLAC”を侵害しており、商標“TOROLAC”の使用を中止すべきであると断言した。こ の通告には、被告弁護人が1993年7月28日付の参照書状によって返答し、登録商標の詳 細情報を求めた。被告は原告の登録商標を知っていたことを否定した。原告が商標

“ROLAC”の登録所有権者であると知っていたことも否定した。被告は“TOROLAC”が原告の 登録商標“ROLAC”の侵害ではなく、詐称通用の可能性はないと主張した。被告はまた、競 合商標の製剤がどちらも「薬物法」による指定製剤であるため、登録開業医の処方によっ てしか調剤できないことも主張した。

最終的に、論争は1993年10月に訴訟となった。上述したように、申し立て通知書の中で 早急に考慮すべき点は、原告の登録商標“ROLAC”への侵害の有無であった。「紛らわしく 類似した」や、「見せかけの模倣」、「ほぼ類似した」の表現の意味は同じであった。こ れらの表現は時と共に変化してきたが、根底にある意味は変化していない。現段階は中間 判決の段階であった。この段階では、裁判所は原告の主張が法廷で審理すべき深刻なもの かどうかを考慮する必要があった。中間判決の段階では、裁判所は便宜の均衡が原告と被 告のどちらにあるかも考慮する必要があった。上述の中間判決の点を考慮して競合者の主 張に注目するのが適切であろう。

被告の主張:

被告は一方、接頭語“TO”が2つの商標の視覚、音声、構造的な非類似性の判断に非常に重 要な役割を果たしていると主張した。被告の商標は3音節の単語であるのに対し、登録商 標は2音節である。接頭語は“TO”ではなく、被告の商標“TOROLAC”では接頭語は“TORO”

である。接頭語“TORO”は強調的で憶えやすく、被告の商標“TOROLAC”と登録商標

“ROLAC”は容易に区別される。さらに、被告の錠剤と注射薬の体裁、デザイン、配色は原 告の製剤の体裁、デザイン、配色とは全く異なっている。両製剤とも指定薬品であり、医 者の処方でしか入手できず、開業医の処方がなければ小売店では販売できないとの注意書 きがあると主張した。原告の錠剤は制酸性で気体のないものであるのに対し、被告の錠剤 は鎮痛性のものである。原告の錠剤は噛み砕くことができるのに対し、被告の錠剤は飲み 込むものである。被告はすでに注射薬を発売しており、これは明らかな相違点である。被 告の製剤には社名“LUPIK”が付されてあり、これによって競合商標との混乱や誤解の可能

性はないとさらに主張した。“TOROLAC”の錠剤は10錠剤で19ルピー、TOROLAC注射薬 は1アンプル80ルピーでで販売されているのに対し、原告のROLAC Plusの錠剤は10錠 剤で6ルピーで販売されており、従って、2つの調合薬剤には大きな価格差があるため、一 般消費者は2つの製剤を容易に区別できる。1992年7月から、2つの製剤の間の混乱や誤 解について苦情はない。1992年6月以前に被告は商標“TOROLAC”を創案・使用していたの に対し、登録商標は1992年1月から使用されたと被告を代表して主張した。さらに、

“TOROLAC”の語は“ROLAC”と同様創作された語であった。商標を薬品名、この場合、ケト ロラク、トロメタミンから案出したのは医薬品業界の顧客であった。1992年8月から1993 年8月の期間で、被告は736,900ルピー相当の製剤を販売した。従って原告は、被告によ る商標“TOROLAC”の使用を黙認しており、後になって原告が被告による“TOROLAC”の使 用に反論することはできない。被告は過去25年間同事業に従事しており、様々なの調合薬 剤、医薬品を製造してきた。被告は結核やライ病治療薬の市場先導者であった。被告の知 名度は30億ルピーを超える年間総売上高に反映されており、この状況で、最終的に原告が 本事件に勝訴したとしても、被告の会社は原告の損失を補償することができる立場である。

Kane氏はさらに、被告はその社名「LUPIN」を十分目立つ緑と白の配色であらゆる調合 薬剤、医薬品に使用しており、すでに二次的な販売促進費用に多額の支出をしていると主 張し、この状況で、原告に有利な仮救済が付与されるべきではないとした。Kane氏はさら に被告を代表し、1993年の訴訟第1416号で、原告が同意条件を控訴で提起したと主張し た。同訴訟は、原告がCadilla Chemicals Limited、Cadilla Laboratories Limitedに対し て起こしたものである。これも侵害訴訟であった。Cadilla Chemicalsはケトロラク、トロ メタミンを“DOLAC”の商標で製造・販売しており、これに対し原告が異議を申し立てた。

臨時の段階で、裁判官は本原告に有利な差止命令の付与を拒絶した。よって、控訴となっ た。控訴では、同意条件が提起され、原告は被告による商標“TODOLAC”の使用を容認した。

従ってKane氏は、Cadilla Chemicalsが商標DOLACをTODOLACに変更するのを認め たことから、原告が本事件でTOROLACの使用に反論することはできないと主張した。こ の段階では、被告の弁護人Kane氏の最後の主張について、Daruwalla氏が、上記の訴訟 でCadilla Chemicalsは名称をDOLACからTODOLACに変更することに合意したが、同 被告Cadilla Chemicalsはケトロラク、トロメタミン製剤をROLACとは異なる

“CADOLAC”の商標で製造を開始しており、従って、被告が本事件でTOROLACが

TODOLACと同様であるべきだと主張することはできないと述べたことに言及する。しか

し、双方の弁護人はROLACが創作された語であることを認めていた。

裁判所の所見:

最高裁が規定する基準を本事件の申し立て事実に適用し、裁判所は、2つの商標の間の紛ら わしい類似性を確かめるために同基準を適用する問題について、原告の代表が述べた主張 にかなりの真価を認めた。本事件では、裁判所は中間判決の段階であった。この段階では、

問題は商標“TOROLAC”の使用が登録商標“ROLAC”を侵害しているかどうかであった。第1 に、商標“ROLAC”は1986年に登録されたことに注目することができる。同登録は適正に 公告された。1989年2月16日付「商標ジャーナル」第953号で公告された。第2に、

ROLACの語は創作されたものであり、そのことは侵害であるかどうかの判断で非常に重要

であった。業界で有名な“COCA-COLA”や“PEPSI-COLA”のように使用される“COLA”のよ うな平凡で一般的な語ではなかった。第3に、調合製剤や医薬品についての審理であった。

原告の製剤は治療的有用性がある一方、被告の製剤は鎮痛作用のものであった。原告は、2 つの製剤が混同して使用された場合に起こりうる悲惨な結果を示唆する詳細な宣誓供述書 を提出していた。告訴状の17節では、鎮痛作用のある TOROLACは、胃酸過多の患者の 治療にはならず、症状を緩和しないことが指摘された。反対に、TOROLACには毒性や副

作用があるため、患者の容態を悪化させる恐れがあった。TORLACをROLACであると信 じて服用を続けた場合、患者は平均すると、6時間ごとに10mg服用の忠告に反し1日8錠 服用することになり、大変な苦痛を招き、患者の健康を損ない消化性潰瘍を引き起こすこ とが指摘された。それほど重症でない胃酸過多の患者の場合でも病状が悪化する恐れが十 分あるため、悲惨な結果になり得ることも指摘された。第4に、登録商標“TOROLAC”全体 は、単に2文字の接頭語“TO”を付して借用・使用したものであり、一見して2つの商標の 主な特徴が紛らわしく類似し、見せかけの模倣でありほぼ類似していることは明らかであ ると指摘された。この状況で、混乱の可能性は除去できなかった。登録商標の侵害につい て考慮する際、侵害の基準と詐称通用の基準の相違に留意することが重要であると十分確 認されていた。詐称通用訴訟では、裁判所は詐称の有無について判断するのに対し、侵害 事件では、「商標法」が所有権者に対し、同一または同様の商標により侵害を受けた商標 について独占使用権を与えており、詐称がない場合でも侵害となることに注目することが 重要であった。商標侵害に関する制定法は、詐称通用に関する法律と同じ一定の基本的概 念に基づいているが、2つの明らかな面で異なっており、商標侵害は詐称通用の一つの方法 であり、第2に、登録商標の制定法上の保護は、一旦商標が違反しているとみなされた場 合、その使用者は実際の商標そのものを外部に表示したことによって罪を免れないという 意味で、絶対的なものである。従って、実質的な模倣だけではなく、単に紛らわしく類似 した商標の使用も侵害になる。上述の基準も最高裁の様々な判決で規定されたものであっ た。本事件では、ROLACとTOROLAは類似していた。類似は構造的なものであると同時 に視覚、音声的なものであった。最初の印象で、どちらの音声も類似していた。第5に、

一方しか知らない患者がその語を不完全に記憶していた場合、薬品を購入する際に誤解ま たは混乱する可能性に留意することも重要であった。ROLACとTOROLAC両方を求めて 薬屋に行く患者はいない。どちらか一方を求め、もう一方を記憶していない場合、惑わさ れ混乱し、悲惨な結果につながる可能性があった。この状況では、「驚異の法則」も適用 可能であった。本事件で裁判所は、TOROの語によって相違しているとの被告の主張にな んら真価を認めなかった。TOROの語が強調的であるとの被告の主張も、音韻法の教師の ように2つの語を細かく比較し、一文字ごとに明確に音節を発音することは不可能なため、

真価はなかった。本事件のような場合、裁判所は、患者側と薬剤師側の不完全な記憶や、

不注意な発音、話し方の効果を酌量する非常に重要な基準を規定した。従って、決め手と なるのは裁判官の耳であり、結果は周囲の状況に基づいたものでなければならなかった。

本事件で上述の基準を適用し、裁判所は、原告が深刻な主張を提起し、考慮を要すること を確信した。特に2つの商標が紛らわしく類似していたため、法廷で審理すべき深刻な申 し立て事実の要件ではないと被告が主張することは不可能であった。音声と視覚の点で類 似があった。ROLACしか知らず記憶が不完全な者は、薬剤師がTOROLACであるか尋ね た場合、まはたその逆の場合、誤解し混乱する可能性があった。この状況で裁判所は、原 告の代表が2つの調合薬剤の間の紛らわしい類似について、上述のように悲惨な結果を招 くとした主張の真価を認めた。

最後に裁判所は、このような場合、便宜の均衡が重要な役割を果たすことに言及した。引 き合いに出された多くの当局が、中間判決の段階では裁判所は原告が深刻な問題を提起し ているかどうかを考慮するとした。審理すべき深刻な問題はないことを被告が証拠に基づ いて立証できず、審理すべき証拠が十分にあり、審理すべき深刻な欺瞞の問題があると裁 判所が判断した場合、裁判所は原告に有利な差止め命令を下す。本事件の申し立て事実で は、裁判所は、損害賠償が原告への適切な救済方法であるとは考えなかった。申し立て事 実によると、ケトロラク、トロメタミンの市場は非常に微妙な段階であり、被告が競争に 参入し他の者も後に続く可能性があったため、原告が同商標を独占的に使用することは、

販売を達成する上で重要な要素であった。侵害によって原告が損なうものは、最終審理で